保護
目が覚めるとそこには、真っ白な天井が広がっていた。次にやってくるのは、鼻にツンとくる薬品の匂い。保健室か、なんてぼんやりとした頭で考えていれば、何だか腕に違和感を覚えた。そう、と頭上に掲げてみる、……と。
「いっ――、た!」
包帯がぐるぐると巻いてあった。それを見たことで、思い起こされた痛覚。鈍いけれど、確かに痛みを与えてくる。
腕を下して、その痛みに耐えようか、というところで、扉の開く音がした。
「……起きたか」
固い靴が床を叩く音がこちらに向かってくる。上半身を起こしたら、深紅の瞳とかち合った。
「自分の名前と、今日の日付を言え」
「え、なんで」
「いいから、早く」
有無を言わせぬ態度に怯んだ。反射的に言われた通りに口を開く。
「名前は、七瀬和で。今日は、……五月の、二十三日、ですか?」
「うん、意識ははっきりしてるな」
安堵したような声音に、少しどきりとした。もしかして、心配してくれているのではないか、と。素っ気無い態度だけれど、悪い人ではないようだ。――誰かは分からないけれど。
「あの、あなたは……?」
「そうか、自己紹介がまだだったな。私は白雪かれん、あんたの保護を任されたんだ」
思わず、え、と声が出た。
「それ、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。その手当てしたのも私だしな」
「え、あ、ありがとう、ございます」
こんな適切な処置を? と疑問は残るが、一応飲み込んでおく。何者なんだろう、この人は。
「詳しいことはリーダーから聞くといい」
「りー、だー……」
「見ただろ、あの、美しい、ああ、私の女神を……」
女神、というワードで、蘇って来る言葉があった。美しい金髪の女性と、それに合った凛とした声。守ってあげる、と言った、あの、女性。片手に銃を手にしていた。
「あの、ええと」
「思い出したか?」
きろり、といきなり鋭い視線になったかれんさんに、背筋が凍った。そうだ、この人の声もしていたんだ。言うなよ、と。
――とんでもない人と、同じ空間にいるんじゃないか、そのことに気付いてしまって、眩暈がした。




