1/3
プロローグ
血と悲鳴と、それから――、なんだ?
鈍痛によって回らない頭は、目の前の情報を受け入れることを拒否している。ただ、目の前を支配しているのは、艶やかな金髪が靡く様。彼女の口角が愉快そうに上がっていた。
「Малыш,守ってあげるから、じっとしててよ」
懐から、鈍い光を放つ黒い金属。彼女は華奢な身体に似合わないそれを高く掲げる。次の瞬間、耳を劈くような高い音があたりに響いた。
「言うなよ」
横から、可愛らしい声が聞こえる。そちらに顔を向けることも億劫で、耳だけを貸した。
「違法だとか、余計なことは考えないで」
その言葉と同時に、ぐっと腕を押された。おそらく、手当てをしてくれているのだろうが、鋭い痛みが走る。思わず呻き声をあげれば、別の声が上から降ってきた。
「怖がらせちゃ駄目だよ、怪我人なんだから。……ひとまず、おやすみしてような」
チクリ、と首元に痛みを感じて、意識が遠のいていくのが分かった。これこそが夢であってほしいと願ったが、今から見るのが夢なのだろう、と少し絶望した。