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聖杖物語黒の剣編エピソード3白銀の狼第4章絆<ネクスト>Part2皆との絆

虎牙の前に現れた父、その姿は白銀の狼。

四天王ギガントを打ち破り、共に消え去ってしまう。

虎牙は、美琴をダークサイドから救えるのか?

美琴が短剣を振りかざし虎牙を突こうとしている。

「だめよ、美琴!」美久の魂が叫ぶ。狼牙の剣が、それを止めた。<ギイィン>美琴の短剣を払いのけ、狼牙が言い放つ。

「虎牙、美琴を救えるのはお前しかいない。救ってやってくれ、頼んだぞ。」力強い口調で言った狼牙に、虎牙は頷いた。そして狼牙は美琴を見つめる、美久の魂と共に。

ーああ、美琴。私のかわいい娘。可哀想にこんな姿にされて・・・今、助けてあげるから。-美久の魂が、狼牙に言う。

ーあなた、行きましょう。美琴を助ける為に、虎牙を助ける為に。-

「ああ、美久。行こう。約束の時だ。」

美琴が戸惑った様に訊く。

「あなたは誰?邪魔をするなら容赦はしない。」狼牙に向って身構える。

「私は白銀の狼、狼牙。お前の父だ、美琴!」狼牙は、美琴に近づくと困惑している瞳を見つめた。美琴の赤黒く澱んだ瞳に、

ー私のかわいい娘。私はあなたの母さん、美久よ。逢いたかった。-美久の魂が美琴の魂に呼びかける。

ーお母さん?お母さんなの?-美琴の魂が呼びかけに答える。

ー美琴。母さんの言う事を信じて。あなたは裏切られてはいないわ。虎牙の事をもう一度信じてあげて。愛する人を信じてあげて。それが母さんの願い、お父さんの願いだから・・・。強くなって、愛する気持ちを強く、強く持って闇を打ち破って。私達がついているからね。-

ーお母さん?あたし、あたしは・・・-美琴は決断しかねた様に、困惑している。

「美琴。私達夫婦は、お前を許す。」狼牙の言葉で美琴の魂が震えだす。

ーお父さん、お母さん。あたし、あたしは信じたい。虎牙の事。愛したい虎牙の事を!!-魂が叫び声を上げる。

ーそうよ、美琴。強く願って、信じる心を愛する心を。虎牙を愛してあげて。-

「美琴。白銀の狼狼牙の名にかけて、お前を闇から解き放つ。」光が狼牙から、美琴の魂を包み込んだ。

狼牙はゆっくりとギガントに向って、剣を振り上げる。

ー約束の時だ、美久さあ行こう。これからは、いつも一緒だ。-

ーええ、狼牙。私の愛した騎士様、私の白銀の狼狼牙。まいりましょう。-

「神狼破<ゴッデスレイブ>!」二人の魂が叫ぶ。巨大な剣波がギガントを切り裂いた。

ー虎牙、獅道。美琴を守ってあげて。この世界を闇から救えるのは、あなた達。-

ー強くなれ。強くなって私を越えろ。-

狼牙と美久の魂は、手を携えて聖獣界転生の間へ旅立っていった。


ーおやじ・・・本当に逝っちまったのかよ・・・-光の粉が舞う中には、ギガントも狼牙の姿も残ってなかった。

「ううっうううっ。」

ーはっ!-オレは、苦しみだした美琴に気付き駆け寄る。

「美琴!しっかりしろ。オレだ、虎牙だ。」しかし、美琴はまだ・・・

「ぐっ!来るな!」右手を突き出し攻撃してくる。

「黒の矢!」美琴の右手から黒い矢が現れ、虎牙に突き刺さる。

「ぐぅっ!」オレは堪らず膝をつく。美琴はそんなオレを見て、あきらさまに苦しみだした。

「うわっ、うわあああっ!」頭を抱え絶叫する。

「美琴、もういいんだ。もう何も苦しまなくていいんだ。」そう言って美琴に近付くと、

「来ないで!来ないでよ。お兄ちゃん、あたしに近付かないで。」明らかに今までと違う口調で、美琴が話す。そして、瞳から涙が零れ落ちていく。

「美琴、オレの愛する美琴。いいんだ、もう苦しまなくていいんだ。だから!オレの元へ帰って来い!!」オレは美琴を、思いっきり強く抱いた。

「うわっ!うわああああああぁっ!!」美琴は泣き声とも、叫び声とも言えない声を出して、オレを振り払おうとしている。オレは剣を振り下ろして、鎧を解除して尚も激しく渦巻く黒い闇のベールと闘った。闇の力で服は裂け、肌が切られても、強く美琴を抱きしめ続けた。美琴の抵抗が弱まっていく。瞳の色が、少しづつ黒さが消え赤色に変わっていく。

「美琴、もう少しだ。頑張れ!」

「はあはあはあっ。」息遣いが少しだけ荒さが薄れていく。オレは美琴が愛おしく、腰に回した腕の力を更に強めて、瞳を見つめた。自然と美琴の唇を奪った。最初は荒い息をしていた美琴がだんだん力が抜けていくのが解る。やがて見開いた瞳の色が、何時もの綺麗な栗色に変わる。そして大きく見開いた少しビックリした様な瞳が、やがて閉じられその目から涙が零れ落ちた。すっと美琴の手が、オレの首にかかる。もっとキスを迫るように。どれだけ時間が経ったのだろう。赤く紅潮した美琴の顔が凄く可愛く見える。ようやくオレは美琴の口から離れた。

「虎・・牙・・・」搾り出す様に言った美琴はオレの首から手を離し、倒れこんで泣き出した。

「うわああーっ。」そんな美琴に、

「美琴。」オレは声を掛けられず・・・

「だめっ!だめなのっ!虎牙お兄ちゃん。あたしっ、あたしなんて事をしたんだろう。信じてたのに、信じているのに。・・・愛しているのにっ!あたしが虎牙お兄ちゃんを裏切ってしまった。もう、もう自分が信じられないっ。」泣き叫ぶ美琴がオレはとても愛しく感じられた。<ギュッ>オレは背中から美琴を抱きしめた。<ビクッ>美琴は体を震わせ、またひとしきり泣く。

「辛かっただろ、美琴。助けてやれなくて、ごめんな。信じさせてやれなくて、ごめんな。」

<ガバッ!>美琴が振り返り抱きついてくる。オレの胸に顔を埋めて泣く。その肩をしっかりと抱きながら、

「愛しているんだ。美琴を。」 <ビクッ>また美琴が震える。

「うん、あたしも愛しているの。虎牙お兄ちゃんを。ずっとずっと・・・」顔を上げてオレを見つめる瞳。その瞳には、今までと違う涙が溢れていた。

「虎牙お兄ちゃん。お願いしてもいい?」震える声で美琴が言う。

「なんだい?」訊き返すと、か細い声で美琴は言った。

「・・記憶を消して欲しいの。お願い、虎牙にあんなこと言ったり、酷い事したあたしの記憶。心も体も汚され尽したあたしの記憶を・・・そして、今からの事も・・・」オレの目の前で美琴は立ち上がり、着ていた魔導服を脱ぎ始めた。

「何をするんだ美琴!」涙を浮べた目でオレを見つめながら、

「お願い。汚されたままなのは嫌なの虎牙。我侭なのは解っている。だけど、記憶は消せても体の痛みは消せないと思うから。虎牙お兄ちゃんに全てをあげたい。心も体もすべて・・・」

「美琴・・・」オレが戸惑っている間に美琴は服を脱ぎ終えて、

「虎牙お兄ちゃん。して・・・お願い・・・」瞳に涙を湛えて、声は振るえ、少し微笑みを浮べた紅潮した顔を見た時、オレの中で何かが弾けた。

「美琴、好きだ。堪らなく愛しい。」

「うん、あたしも。」

自然とオレと美琴は、口付けを交わした。


「・・・これで、宜しかったのでしょうか虎牙様。」取猫が訊いてくる。

「ああ。これでいい。これは美琴の願ったことなのだから・・・」

「左様でございますか・・・。」取猫の問いに答えて、

「獅道は?」逆に問いかける。

「はい、お父様の事が大変ショックであらせられまして。暫くは研究にのめり込むと仰られておりました。」

「そうか・・・獅道も苦しんでいるんだな。それで、野真さんと西野さんはどうしたんだ?」

「・・・はい・・・ご希望どうり、ランドに行った前後だけの記憶を・・・」

「・・・記憶を消した・・・か。」

「お二人の希望でございましたので・・・。」取猫は、目を伏せながら答えた。

「そうか。2人とも、本当に美琴の事が大切なんだな。」頷きながら取猫に言う。

「ええ、羨ましい位に・・・」取猫がそう言って部屋から出て行った。オレは寝入った美琴の頭を撫でてやりながら、

ー本当にこれで何も無かった事になるのか?オレがした事は間違ってないのだろうか。明日になれば美琴は今迄通りに接してくれるだろうか。オレは、自分の欲に負けて美琴を抱いてしまっただけなのだろうか。実琴から全てを奪ってしまっただけではないのか。・・・あの時の美琴の微笑が忘れられない。<お兄ちゃんありがとう>と、言って泣いた顔が忘れられない。本当にこれで良かったのだろうか。父さん、母さんはどう思う?-

「むにゅ・・お兄ちゃん・・えへへっ、むにゃぁ・」寝言で美琴が嬉しそうに言った。


「で、あるからして・・・・」教室で白井先生が、教鞭をとっている。

「美琴!ちょっと美琴!」マコがつんつん突いたが、

ーんんっ何?・・・って!-

「ひゃひゃいっ!」あたしは咄嗟に立ち上がった。あたしの後ろでマコが頭を抱える。

「おい・・冴騎!またか、お前。」

ーあわあわ。またやっちゃったよぉ。-白井先生が近付いて来て、<こつん>おでこを一突きして戻って行った。

「・・・って、あれ?それだけですか?」白井先生は振り返り様、あたしに<ニカッ>と笑い、

「恋の相談相手だからな、大目に見てやる。」と言って、授業に戻った。

<キンコンカンコーン>終了のチャイムが鳴り、

「よーし、今日はここまでだ。宿題ドッサリあるから、忘れるなよ。」

「えー!」クラスメートが一斉にぶーたれた。ニカッと笑って白井先生が出て行く。

「おーい美琴。あれ白井女史だよな。」マコが驚いた様に問い掛けて来る。

「そーだね。昨日までと別人みたいですう。」ヒナがあたしに問い掛ける。

「うーん・・・もしかして、告ったのかな?」あたしが言うと、

「なになに?白井女史がか?」

「へー、です。」

「うん。前に言ってたんだ。告白出来てない人がいるって。」あたしがマコに言うと、

「ふーん。白井女史の方が上か。」

「誰と?」

「美琴に決まってんじゃん。」

「ガーン。」あたしが引くとヒナ迄、

「自爆、しましたです。」と言ってからかって来る。あたしはそんな2人に言う。

「そー。そーいう事言うんだ。そんな子には、これ、あーげないっと。」と、ヒラヒラとチケットを見せる。

「何だよ、それ。美琴?」

「何なのです?」2人が食いついた。

「にひひっ!アドベンチャーランドのフリーパス!」

「えー。あそこって出来たばかりの?しかも、フリーパス?」

「そー。一緒に行こうかなって思ってたんだけどぉ。」あたしは尚もヒラヒラさせる。

「うわっ!美琴様っ、お許しを!」

「連れて行ってくださいですぅ。」

「にひひっ!どーしよっかなぁ。」あたしは勝ち誇って、ヒナとマコを見る。

「うわわっ!美琴様っ!肩揉みますっ!」

「宿題一緒にやりますですぅ!」

教室の窓から、秋の夕日が髪飾りをキラキラ光らせていた。


聖杖物語 黒の剣編 エピソード3白銀の狼   End



エピソード3白銀の狼。いかがでしたか?

ちょっとアダルトな感じなのは、ご愛嬌って事で・・・。だめですか?。

さて、今回で美琴の出生が語られましたが、虎牙との愛は今後どの様に暖められていくのでしょうか。

義理の妹?恋人?2人の恋の物語は、まだまだ続きます。

では、次回エピソード4あたしの彼はお兄ちゃんで、騎士<ナイト>様!をお楽しみに。

次回も読んでくれなきゃだめよーん。

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