聖杖物語黒の剣編エピソード3白銀の狼第1章発覚Part2息抜き
白井先生と、恋の相談をしたあたし。先生も悩んでるって、聞いたら少し気が軽くなったけど。
そんな時、虎牙兄がチケットをくれる。マコとヒナを誘って遊んで来いって。やった!はしゃいじゃおうっと。
ーうーん、やっぱり誰にも相談なんて出来ないよ。重すぎる話だし。自分で解決するしか、方法はないのかな。-あたしは、ベットの上で考える。<コンコン>部屋のドアをノックする音がした。
「あっ、はーい。いいよ。」
「美琴、はいるぞ。」ドアを開けて虎牙兄が入ってきた。
「これ、いるか?」行き成りチケットをひらひらさせながら、虎牙兄がにこやかに言う。
「?何そのチケット?」
「ああ、これな。会社の同期がくれたんだ。アドベンチャーランドのフリーパス。」
「え?あの最近出来た所の?」
「そう。そこのフリーパス。明後日、休日だろ。行って来たらどう?いい骨休めになると思うんだがな。」
ーキラキラ。やった。あそこ行きたかったんだ。・・・けど、一人じゃやだな。-そう思っていると、虎牙兄が、チケットを渡してくれる。
「あ。3枚も有る。」
「そー。マコちゃんとヒナちゃんを誘ったら?3人なら、面白いと思うけど。」
「うわあ、やった。虎牙兄ちゃん、ありがとう。」
「・・・そんな時しか、兄ちゃんって言ってくれないな。最近・・・」
ーずきっ心が痛む。本当は違うのに・・・。-
「い、いいじゃない。虎牙兄は、虎牙兄なの!」
「はいはい。じゃ、渡したからな。それからこれ。」あたしに、封筒を渡して、
「軍資金!久しぶりに羽根伸ばして来いよ。3人で。」
ーキラキラ、ううっ!なんて心遣い。-
「へへー。感謝致してますですぅ。お兄様ー。」あたしは、封筒を頭上高く押し上げてひれ伏した。
「ははは。良いって事よ。越後屋。」時代劇もどきのやり取りをして、
「あはははっ。」と、二人で笑う。虎牙兄があたしの額を指でツンっと突いて、
「笑っている美琴が、一番かわいいぞ。」と、言った。
「あ、うん。ありがとう、虎牙・・・兄。」
ーかわいいか、それってどう思われてるのかな。妹だから?それとも女の子として?訊いてみたい。でも、そんな勇気、今はないよ。虎牙・・・お兄ちゃん・・・。-
部屋を出て行った虎牙兄の背中を見つめながら、また、悶々と考えてしまった。
朝日が眩しい。
「うっわあーっ。すっごーい。」あたしは大はしゃぎで、辺りを見回す。
「おいおい、これだからお子ちゃまは・・・。」
「はしゃぎ過ぎです。」はしゃぐあたしにマコもヒナもげんなりとしてるけど、あたしはお構いなしで、
「ねぇマコ、ヒナ。今度はアレ乗ろ、乗ろうよー。」
「へいへい。」「はいですー。」と、二人を引っ張って列に並ぶ。
「おいおい。そんなに慌てなくても・・・」
「時間はあるのです。」あたしは、
「だって、だって。こーんなに一杯あるんだよ。全部乗らなきゃ勿体無いよ。」
「ぜ、全部乗る気かよ!」
「無理です。」呆れた様に二人が言う。
ー久しぶりの休日。何もかも忘れて遊ぶんだ。今日一日だけでも・・・-
「ふっ、美琴。」
「え?何かな?」
「お前、そんなスカートひらひらであれに乗る気か?」マコがビシッと指差す先にはジェットコースターが!しかも身体剥きだしのヤツが!!
「うっ!しっしまった。あれ乗ったら・・・見えちゃうよね・・・」
「ぐははははっ!どうだ美琴、まいったか!」
「ううっあたしとした事が・・・無念!」
「ミコッタン!諦めるのはまだ早いです!」
「?」あたしは小首を傾げる。
「じゃーん!こんな事もあろうかと・・。パンパカパーン!秘密兵器1号出でよです。」そう言ってヒナがバックからスパッツを取り出した。
ーキラキラキラ!-
「やった!ヒナ。神様仏様。」
「どーです!マコッチ!!」
「くっそーっ、ヒナめー。」
「ミコッタンの事です、こんな事だろうと持って来ました。です。」
「うん!ヒナありがとう。」
「って、美琴!こんな所でいきなり穿くなあー!」
「私達がハズイです。」
「よーし!矢でも鉄砲でも持って来い!」
「ううっ、美琴。本当に全部乗る気かよ。」あたしはビシッとマコを指差し、
「うそ。」一言言った。
「そっそーか。ははは、救かったぁー。」ヒナがそんなマコに、
「当たり前です。」さも当然という風に、
「ここ、全部で149箇所もあるんですよ、無理に決まってますです。」
「そーだよ。面白そうなのだけ乗ろーよ。マコ。」あたしが言った。
「よし、決まり!それじゃあ強烈なヤツだけな!美琴の装備も終わったし。」
「OK!行こう!!」3人は、16歳の秋晴れの中、はしゃぎ遭った。
「ふうっ、おもしろかったぁ。」あたしは満足顔で、長椅子に腰掛ける。
ーこんなに、はしゃいだの何時の頃以来だろう。-あたしは、すっかり夜になった星空を見上げてそう思った。
「ほい、これ。」マコがジュースを手渡してくれる。
「あっ、サンキュー。」手渡されたジュースを一口飲んで、
「ぷー。生き返るーぅ。」と、マコに笑いかけた。マコも笑顔で、
「そう。良かった。」とだけ言う。
「?」あたしが、マコの瞳が少し潤んでいる事に気付く。マコが少しだけ鼻声で言った。
「感謝しているよ、美琴。いや、虎牙兄さんだっけ、ここのチケットくれたのは・・・。解ってくれてるんだなって思って。落ち込んでるのは美琴だけじゃなくて、ヒナだって中嶋を失って落ち込んでいたのが気懸かりだった。今日一日だけでも、その事を忘れられる様にって・・・気配り屋さんなんだな美琴の兄さんは。」最後は完全に泣き声になっていた。あたしは逆にびっくりした。マコがそんな事を考えてあたしや、ヒナの心配をしてくれている事に。
「好きなんだろ、美琴。虎牙兄さんの事が。虎牙兄さんも美琴の事が好きなんだ。妹としてでは無く、一人の女の子として好きなんだよ。それじゃなかったら、単なる妹ならこれだけ気配り出来ないと思うよ。」マコがすっごくお姉さんに見えた。いつもあたしをからかってばかりなのに、すっごく優しくて頼りになって、心配してくれて。
「ありがとうマコ。・・・うん。」胸が熱くなる。
「まあ、な。あたしの弟分だからな、ヒナも美琴も。」
「弟分?」
「ああ。妹分だったっけか。ははは。」
「くすっ。」あたしとマコは少し涙ぐみながらも笑った。
「・・・にしても、ヒナのヤツ何処行ったんだ?」
「うん、遅いね。携帯で呼ぼうか?」
「そーだな。そうするか?」そう言って辺りを見渡したマコが一点を見据え、
<ダッ>いきなり走り出した。
「マコ!」あたしが呼び掛ける間も無く横手のジェットコースターの影に飛び込みざま大声で、
「何やってんだオメーら。」と、怒声を挙げた。
ー!あれはヒナ!何?3人の男の人に絡まれて・・・ナンパ?-
「嫌がってんだろ、放してやれよ。」マコが怒りを露わにして言う。
「マコッチ!」ヒナが手を握られながら助けを求める。
「ぐへへっ。」「ぐふふっ。」「げへへっ。」男達は変な声を上げながらヒナを連れ去ろうとしている。
「待ちやがれってんだ。放しやがれ!」マコがヒナの手を掴んでいる男に蹴りを入れる。しかし、一撃を喰らっても男は、ヒナの手を掴んだまま、嫌がるヒナを連れて行こうとする。
「な、なんなんだ?コイツら。」マコが戸惑っている隙に、今度はマコに別の男が後から襲い掛かった。
「ぐっ!」後から羽交い絞めにされて、身動きを封じ込められる。
「はっ離せ!離しやがれ!!」マコまでが捕まってしまった。あたしは一瞬の事でどうする事も出来なかった。けど、
「待って!待ってください。その二人はあたしの友達なんです。離してあげてください。」そう3人の男に呼びかけた。男達はあたしの声に無表情で反応しない。
ーおかしい。この人達。-あたしは、ヒナとマコを連れて行こうとする男達の先回りして、立ちはだかった。
「美琴!お前は下がっていろ。」
「ミコッタン!危ないから止めるのです。」2人が、代わる代わるあたしを逆に庇う。
ーこんな事で二人を連れ去られるわけには行かない。-
「止めてください。二人とも嫌がってるんです。離して・・・」そこまで言って気が付いた。男達の瞳が、赤黒く変色している事を・・・
目の前に現れた男達に、あたしは闘う決断をする。
マコ、ヒナこれがあたし・・・。聖導士になった、あたしの務め・・・
辛い選択をするあたしの前にあらわれたのは・・・・
次回、Part3逃避行
次回もよんでくれなきゃだめよーん。