聖杖物語黒の剣編エピソード3白銀の狼第1章発覚Part1
あたし、冴騎 美琴。
あたしと、聖杖の物語の第3話。
あたしは、お父さんの本当の子供じゃないって・・・。
じゃあ、教えてよ。本当のことを。
あたしは、自分の居場所を探す。あたしの心の隙を付いて、闇が忍び寄る。
「虎牙!助けて!!」あたしの叫びは届くのだろうか?
「冴騎!」
ーふぇ?-
「ひっひゃい!」あたしは、思わず変な声を出して立ち上がる。
「またあなた、寝てたの!?立ってなさい。」白井先生の一喝で、クラスメートから笑われる。
ーうわん、またやっちゃったよ。-
白井先生が傍に来て小声で言う。
「悩み事があるのなら、相談に乗るわ、美琴さん。夕方教室に残って置きなさい。」
「え?」あたしは困ってしまう。
ー相談って言われても、とても本当の事なんて言えない。どうしよう。-
返答に困っていると、
「いい?今日の夕方教室で・・・待ってなさい。」それだけ言うと教壇に戻って授業を再開した。
ーどうしよう。白井先生になんて相談すればいいのかな。-
<キンコンカンコーン>終了のチャイムが鳴る。
「それでは、本日はこれで終了します。」そう言って教室を出て行く白井先生はあたしに視線を向けて一瞥した。
「美琴ー。」
「ミコッタン。」
マコとヒナが、心配そうに寄って来た。
「白井女史何だって?」マコが訊く。
「うん。
「相談に乗るから、夕方教室で待ってろって。」
「うーん、白井先生ってどこか神秘的と言うか・・・わけ解んない所有るし・・・。」
「さすが歴史と美術受け持ってるって変な学歴女子だけ有るって事です。」マコとヒナが白井先生の事を話す。
「で、どうすんだ美琴。」
「どうって?」
「相談だよ、相談!」「です。」
ーうーん、相談ねえ。マコとヒナにも言えないのに、白井先生に言っちゃうわけいかないでしょ。-
「うん。適当に言う・・・かな。」
「おおっ!美琴が少し大人になった!」マコが大げさにびっくりしている。
「少しって・・・そんなに子ども扱いしないでよ。もう!」あたしがちょっとふて腐れると、ヒナが、
「十分お子ちゃまです。」と、止めを刺した。
「ひっどーい!」あたしが笑いながら言うと、少々真面目な顔でマコが、
「気を付けろよ、美琴。ほんとにお前危なっかしいんだからな。」と、釘を差す。ヒナまで、
「本当、見ていて助けてオーラが発散されすぎです。」
ー何?それ?助けてオーラ?あたし、そんな風に見えるのかな?-
「兎に角、美琴はもっと強くならなきゃぁ。ヒナみたいにな!」
「どー言う意味ですか。です。」
「ははは。これ!」マコがヒナの胸に指を置く。
ーむう。確かに強力ねって、何の話よ。-
「うん、そうだねマコ、ヒナありがとう。」
「それじゃあ、あたし達は帰るけど、美琴。一人で大丈夫か?なんなら、付き合ってもいいんだぞ。」「いいのです?」マコとヒナが心配してくれる。だけど、
「あっ、ほんと、大丈夫だって。当たり障りの無い事を相談するから。」
「ふーん、ま、かわいい子には旅させろって言うしな。」「言わないです。」ヒナが突っ込みをいれる。
「解った?美琴。もし何かあったらすぐケータイ鳴らせよ。いいな?」
「うん、何もないったら。心配しすぎだよ。マコ。」あたしは、マコの心遣い心底嬉しかった。
「よし、じゃあまた明日。」
「うん、マコヒナまたね。」
「バイバイです。」二人は手を振りながら帰って行った。あたしは夕日に染まり始めた窓をぼんやりと眺めて白井先生を待った。
ーあたしは、お父さんお母さんの実の子供じゃない。虎牙兄や獅道兄さんの本当の兄妹でもない。あたしの本当のお父さんお母さんは誰なの?逢ったことも無い聖獣界の巫女、聖姫さんって人がお母さんだって言われても全く実感が湧かない。どうしてあたしは、お母さんに捨てられたのだろう。どんな訳が有って別れ別れになったのだろう。その理由を知りたい。そして、本当のお母さんに逢って見たい。-夕日を眺めながら物思いに耽っていると、
「またぼんやりして・・・冴騎さん。」いつの間にか、白井先生があたしの隣に立っていた。スラリとしたスーツ姿。知的な感じのメガネ。長い髪を束ねた完璧すぎる美人。初めて会った時はこの人が、階斗先生の代理の先生だとは思わなかった。まさにキャリアウーマンって感じ。でも、何故だかどこかで遭った様な気がする、不思議な感覚。あたしが先生を見上げていると、先生はあたしの横に腰掛けて、
「で?美琴。お前の悩みは何だ?金の悩み意外なら訊くぞ。」
「え?いや、お金じゃないですよ。」
「よし。それなら訊くぞ。言ってみろ。」
「う、うーんと・・・」あたしは両親の事意外で悩んでる事柄を考える。
ー何を話したらいいのかな?恋愛がそれっぽくていいのかな?-
「あ、あのー。」
「うむ。さあ言ってみろ。」白井先生が腕組しながら促す。
「そ、それじゃあ。・・・好きな人がいるんですけど、その人はあたしを妹としてしか見てくれなくて・・どうしたらその人の本当の気持ちを知ることが出来るのかな?って考えてて・・・。こんな悩み駄目ですよね。」
ーって、あれ?白井先生が赤くなってる?-
「あ、あの、先生?」あたしは、白井先生に訊く。
「ん?ああ。恋の話ね。そ、そうだな。それは、悩むよな。あたしも・・・そうだし・・・って、いや、はははっ。」
ー最後は笑って誤魔化したな。でも、先生も恋で悩んでいるのか。-
「先生も悩んでいるんですか?」
「ぎくうぅ。なっなんで知っているぅ。」
「え?今仰いましたけど?」
「くくっ!美琴。さすがだ!そうだよ、悩んでいるんだ。この私も!」
「はぁ?」
ーなんか、どこかで会った魔導士もこんな感じだったような・・・ま、似た人は一杯居るだろうし。でもすごいイメージと違って親近感湧く人だね。-
「あの、白井先生はどんな恋の悩みが有るのですか?」
「むう。私か?私の場合は、その人を好きになったのはまだ幼い時の頃だった。その人の役に立ちたくて一生懸命働いてナ。だけど、彼には妻子が有って。一度は諦めてたんだけど、又、再会出来てな、今その人の下で働いているんだ・・・。だけど美琴と同じでその人の気持ちが解らないんだ。告白する勇気もなくてな。なさけないよ、全く・・・」
ーそーなんだ。利発だし、気の強い先生でもいざ恋になるとそんな奥手になるんだな。-
「白井先生も、恋事になると奥手になるんですね。」
「う、そ、そりゃあ私だって女だし・・・難しいよな恋は。」
「はぁ?そうですね。」
「すまんな、美琴。悩みを受ける方が、逆に聞いてもらって。」
「えっ、そんな事ないです。先生のような方でも同じ様に悩んでおられるのを知って、少し楽になれました。ありがとうございます。」
「い、いや。こちらこそ。聞いてくれてありがとう。はははっ。」
「くすくす。」あたしと白井先生はお互いの悩みを打ち明けて笑いあった。ふと窓の外を見ると、もう夕日は沈みかけ夜の帳がやってきていた。
「もうこんな時刻か。美琴、今日の所はこの辺で終わりだな。気を付けて帰るんだぞ。」
「はい先生、じゃあ又明日。失礼します。」
「おう、又明日な。」そう言って別れようとしたあたしに、先生が手を出す。
ー先生?-あたしは先生の手を握り返した。<ビリッ>
「!?」先生の手を握った瞬間すごい違和感を感じた。
ー何だろうこの感覚。-あたしは戸惑ったが、
「先生、さようなら。」と、言って立ち去る。その背中に向けて白井先生が言った。
「美琴、闇に気をつけろ。いいな。」その一言が少し気になった。
Part1をお送りします。
いよいよエピソード3です。
物語は、美琴の成長と共に進んでいきます。
今後ともお読みください。
次回もよんでくれなきゃあだめよーん。