2ー6.5
今回は主人公の去った後の村でのやり取りです。
時系列としては、主人公が村をたってからソルジャーゴブリン戦くらいまでとなっております。
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そんな時、リーギ村では…
「村長様、そろそろウルセル伯爵がお見えになる頃かと」
「うむ」
昔は村の代表者として、辣腕を振るい、辺境地にあるこの村をここまで発展させた。
その村長も今では70を超えたおじいさんだ。
歳をとった村長はこの頃滅多に村の政治らしいこともしなくなったし、ただ家の中でのんびりと過ごす好々爺として、生活していた。
が、そんな村長の顔がキリッと引き締まり顔に刻まれたシワが村長としての威厳と苦労を感じさせる。
「では、行くとするかの」
村長は村の入り口で来客者として、ここの領主ウルセル伯爵を出迎える。
ウルセル伯爵家は、60年前の隣国の神聖コーネリア皇国との戦争による武功によって引き立てられた貴族であり、1000年を超える歴史を持つアズグレード王国の中では新興貴族と言える。
60年前にウルセル伯爵家が、ここら一帯を領土としてもらった時はまだこの村もなく、それから領主と村民が開拓地として切り開いた村がリーギ村であった。
実質、領主といってもウルセル伯爵家の現当主は3代目だが、初代当主を除いては特に村の政治に口出しをすることもなく税さえ納めていればそれで良しとする当主様出会ったが…
今回、キーンの若僧が拾ってきた少年。
あの少年がまさか、問題になるとはのぉ…
「わしも見抜けなんだわ」
「は?」
「いやいや、独り言よ…年寄りの世迷言じゃ」
初めて、村長が黒髪黒目の少年ホウジョウ・ウジアキを見た時、あの少年の髪の色と目の色だけは目についたがそれ以外は特に覇気のないおどおどした様子の見られるただの少年だったが…
まさか、闇狼と暗黒狼に襲われた村を救っただけではなく、【指揮】スキルの持ち主だったとは思いもしなかった。
村長は村の入り口で伯爵を待ちながらも考え事を続けていた。
あの少年は、いったい何処の生まれで何者なのか…
何の目的でこの村の周辺に立ち寄ったのか…
考えても答えには辿り着きそうにもなかった。
「ウルセル伯爵がお見えになりました」
「うむ」
視線の先には50騎ほどの騎馬従えてこちらに向かってくる軍団が見える。
あれは、伯爵直属の軍隊で伯爵の領内で最も栄えている町、エンシャスに拠点を置く軍隊だ。
その先頭で一際立派な白馬にまたがる、筋肉質の男。
金髪で青目でありきつい顔ではあるが整った顔立ちの青年。
これが、ウルセル伯爵だ。
「お待ちしておりました、ウルセル伯爵様」
「村長、わざわざすまんなぁ〜。
では、この前で置いておいた忘れ物を取りに行くか」
「はて、忘れ物とな?」
「はっ!とぼけていられるのも今のうちだ。
キーンとかいった男の家にかくまっていることは調べが上がっている」
「キーンは一人暮らしのはずですがのぉ」
「ふ、まぁ良い。行くぞ」
ウルセル伯爵を含め50騎の騎馬隊もぞろぞろと後ろに続き列になってキーンの家を目指した。
「お待ちしておりました、ウルセル伯爵」
リーギ村を守る自警団の隻腕の団長であるキーンは改まった態度でウルセル伯爵を家に招き入れる。
「挨拶など良い、早くあの物をここに出せ」
「はて?あの物とは?」
「先日の少年だ!あの時は負傷しておったようだったからなここに置いておいてやったのだが、もう動けるはずだ、ここにいるのは分かっている、早く出せ」
キーンは薄ら笑いを浮かべる。
「ですから、先日もおっしゃったではありませんか、もう旅に出た。と」
「そのような、冗談で隠し通せると思っているのか?
おい!お前らこの家を探せ、ついでに村じゅう探し尽くせあの怪我だ隠すにしてもこの村からは出ていないはずだっ!」
伯爵は一つ勘違いをしていたのだ。
あの時、確かにウジアキは身体中に包帯を巻いていたがそれはこの村に正しい処置をできる人がいないため適当に巻きつけたからなのだ。
確かに、ミイラ男と形容されてもいいほど包帯を巻かれていては重症に見えるだろうがな…
結局、村のどこを探しても黒髪黒目の少年は出てこなかった。
「貴様ら、この私を謀ったかっ⁉︎」
「滅相もございません…先日も申したでありませんか、彼はすでに旅立った…と」
村長が幾分かの殺気を込めてウルセル伯爵に迫る。
村人も散々自分たちの家を騎士に荒らされて不満が爆発しており全員がウルセル伯爵軍団を囲んでいた。
「グヌヌヌッ!!」
「覚えておけよ、貴様らなどいつでも潰せるのだがらなっ!」
出来もしない戯言を言って、去っていくあたりウルセル伯爵はまだ青いな。
村長の顔はいつもの好々爺に戻っていた。
こうして、リーギ村に平穏が戻った。
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