NO.5 通信
NO.5 通信
敵艦隊の全ての砲が沈黙してい中、遠目に見ても損傷の激しい敵艦との通信回線が開き、スクリーン上に相手が映る。
「此方レヴェルク第四艦隊旗艦エルヒャ指揮官ホーリックだ。此方としてはこれ以上人員を損耗したくない。我が艦隊は貴艦隊に降伏を申し込みたい。」
「…貴艦隊の降伏を受け入れる。貴君等は規則通りの捕虜として扱われ、負傷者を収容した後ステーションまで護送し、収容区画に入って貰う。それでも宜しいね?」
「…承知した。貴艦の指示に従おう。」
通信が切れた後のCICに安堵の空気が流れ始める中、艦長は救助活動に移るよう命じる。航空隊からは、艦載機の収容完了、損失十一機。の報告が入り、誘い込み部隊の艦載機の収容も終了する。船に申し訳程度に備え付けられたタグボートに救命装備をくくりつけただけの救命艇と艦載型工作機が戦闘による漂流者の救助活動を続ける様子を眺めている中、艦長はフリゲート艦を連れレヴェルク第四艦隊の護送と牽引を指揮しつつ軽空母ベンスハイムに、巡洋艦とイージス艦を指揮し救助活動を続けろ。と通信した。
艦載型工作機によるレヴェルクの船の武装解除が窓の外に見える船室で、簡易的な降伏文書の調印が行われている。双方そこに殴り込みに行きたがる乗組員を上官や他の乗組員が宥める事を繰り返す中、渦中の降伏文書は双方の合意の下に調印され、最低でも紙面上では禍根を残さずこの戦いは終わりを告げた。艦隊はゆっくりと、損耗した船を気遣うようにマレス2-6多目的ステーションへと向
かう。
今回の戦闘で友軍艦に損失艦は出なかったものの二隻が小破、斥候戦艦ダルムシュタットを含む三隻が中破、一隻は最早砲塔を交換しなければ戦闘艦として運用できない程であり、こんな辺境の地にある修理ドックではそれを修理する事は叶わないだろう。小破で済んだ船は工作機で修理し、中破した船はちょうど三つある修理ドックに入れられ、しばらく任務を続けるが、大破してしまった巡洋艦クロイドンは旧式だった事もあり後方に移ると同時に退役になり、武装を外した後艦名を変更し民間輸送艦として今後使われる事となった。
一同に見送られつつ巡洋艦クロイドンは本国へと撤退し、変わりに本国から増援として主力戦艦三隻という豪華な戦力が送られてくる事となり、同時にくる主力戦艦二隻を護衛に捕虜となったレヴェルク第四艦隊を護送する予定である。
こうしてマレス2-6宙域での戦闘は戦死者24名負傷者67名をだして終了し、こことは異なる宙域で起きたレヴェルク主力艦隊と第一研究所第六艦隊の戦闘も友軍の勝利に終わり、この紛争は収束へと進んでいったのだ。
念の為の解説
主力戦艦
高い量産性と高い戦闘能力をもつ船。実際主人公役の似合いそうな斥候戦艦と比べると、艦載機数(25機)と分析能力、加速性能以外全ての点で勝っている。死亡フラグを押し付けられていそうな被害者。
短い作品ですがここまで読んでもらいありがとうございました。