舞い込んで来たお姫様。8
そろそろ六時間目が終わる。
静かに動く時計を見ながら、俺はそう思った。自習室なんて、滅多に人が出入りしない所だと思っていたが、実はそうでもないらしい。
あちこち詮索してみると、まぁ不思議、プリクラだの写真だの消しゴムだのラブレターだの、色んな物が出て来やがった。
なかでも驚いたのは、何と二十五年前の卒業アルバム。よくもまぁ今まで回収されずに残っていたもんだ。
呪いはずっと昔から続いている。って事は、こんな時代にも呪いはあったのか。
そうしているうちにチャイムが鳴る。それから更に時間が経ってから、悠斗は携帯を取り出した。
「おっ綴か?…………まぁ、何ともなかったよ。……なんでかって言われてもな…ああそれより、俺達の荷物、まだ教室にあるだろ?悪いけど、下まで持って来てくれないか?
……嫌だじゃなくて、あっおい!」
切られたのか、携帯をしばらく見つめる悠斗。
「悠斗……やっぱり、俺が取りにいくか?」
悠斗から少し苛立った雰囲気が溢れていたので、俺はすぐさまそう提案する。
「いや、もう普通に取りにいこう。目立つかもしれないけど、面倒だ」
教室の扉を開けて、俺達はとても驚いた。
もう六時間目もホームルームもとっくに終わり、周りのクラスのほとんどが人がいない状態だったのに、俺らのクラスはなんと、生徒全員が椅子に座って待っていたのだ。
いや、全員とは言いすぎた。だが、それでも三分の二くらいは残っている。
「あ、頼武木、佐渡、さっき先生に呼ばれてたけど、なんだった?」
扉の近くに座っていたクラスメイトが、扉を開いた状態で固まって居る俺達に話しかけた。
「お、おう。それが俺達にもよくわからないんだ。山岡が急に、もう行っていいってさ」
匠が俺の頭越しに言葉を述べる。クラスメイトが「ふぅん」と余り気にしない様子なのは、さっきの質問が、
「じぁあさ、お前らのその後ろにいる女の子は、誰?」
この質問を聞きやすくするためのものだからだろう。
クラスの人達に注目されて、雀の女の子は小さくなって匠の影に隠れた。驚いたのか怖気付いたのか、それとも雀の様に警戒心が強いのか。
廊下側に座っていた男子は、女の子に構わず言葉をつなげる。
「その子…さっき雀から人になったんだよな?」
「ああ」
質問には、悠斗が答えた。
「お前らは……どうしてか知ってるのか?」
「知ったのはさっきだ」
素早く応答していく。嘘を吐かず、でも短く素っ気無い。
「教えて……くれるか?」
「………ああ」
今度はやや間が空いた。何か迷うことでもあったのだろうか? 呪いについて話すことに、気が引けたのだろうか?
「本当か?」
「本当だ。別に隠す事じゃない」
そんな悠斗に変わって、今度は俺が応答していく。
「じゃあ……説明してくれ」
「解った」
そして俺は、先ほど知った呪いの事について、口を開いた。