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彼が依頼を受ける訳1

福岡市のどこかにある古い長家。


看板には『万屋(よろずや) 陀典(だてん)』は今日も今日とて暇を持て余しまくっていた。


「ふぁぁぁぁっ…」


事務所兼居間の一番日当たりの良い窓際にある机に足を載せてだらけている社会不適合者天野 烙。

『天野さぁん。そんな所に寝てないで仕事捜しましょうよ〜じゃないとご飯食べられませんよ〜?』


声は聴こえど姿は見えない。普通の人ならポルターガイストなどの怪奇現象だと、騒がれるがここは、とある人物によって造られた精霊が宿った生きた家である。


頭に日除けなのか、雑誌の『FR●DAY』を載っけている当人は、気にした様子はなく、


「水と電気があるから大丈夫だ」


と、お気楽な様子。


『とっくの昔に水も電気も止められてますよ』


「…………」


『ついでに言うと、数日中に纏まったお金が入らないと、ガスも止められます』

「…………」


『更に言うと、あなたの机の上にある柿ピーが最後の食糧です』


「…………ふぅ」

FRIDAYを横に置き足を下ろし


「……………ふぅ」

溜め息を一つ。「大体、綾は何をしてるんだ?ビラまきなんかはあいつの仕事だろう?」

『綾さんは中間テストの為しばらくは来ないって言ってたじゃないですか』


『少なくとも、滞納分は…あれ?……お客様みたいですよ?』


その瞬間に烙は仕事着に着替え完了。客を迎えに行く。



「ようこそ、『万屋陀典』へ!家の模様替えから、人捜しまで当社のスタッフに不可能はありません!宜しかったら奥の部屋にて、お話を」


口上を終え、スマイル(0円)を浮かべながら相手を確認。


「は、はぁ」



居間のソファー(新品)に対面で座る

「それで、ご依頼と言うのは」


烙に押されまくっていた男は依頼と言う言葉に正気を取り戻し、


「ああ、依頼か。名は明かせないが私はとある代議士の秘書でな。実は最近、ある男に先生が付け狙われているのだ」

「男、ですか?」

「ああ、これを見て貰いたい」


そう言って、一枚の写真を出す。中身は一人の男、手に望遠レンズ付きのカメラを持っている事と今の話からするとどこかの記者と言った所か。


「男の名前は『五十嵐 輝一郎』週刊誌の記者だ。先生の事を追っていてな…」


「ふぅん、それで?」


「先生はこれから、大事な時期に入る。出来るだけ不確定要素は作らないようにしたい……そこで君に、この記者を説得してもらいたい……どんな事をしても」


男は、懐から厚い封筒を机の上に置く。


「前金で二十。成功後に三十出す。受けてもらえないだろうか?」


烙は少し考える素振りを見せた後に


「解りました。このお請けいたします」


男は嬉しそうに頷き


「宜しく頼む。先生の近くを張れば奴は出るはずだ。」

「先生は、明日市内のホテルで講演を行う。奴も出張るはずだ…そこを抑えれば簡単だろう」


「ありがとうございます。では、明日私も向かわせて頂きます」


良い返事に安心して男は帰って行った。


「気にくわねぇ…三号」


『はい?何ですか?』


「あの男を追え。あいつの言う『先生』って奴の正体を掴め」


『相変わらず、無茶言いますねぇ…良いですけど、烙さん』


「何だよ?」


『何で、この依頼受けたんですか?こう言う依頼って、速攻断って、依頼人ボコボコにした挙げ句、その人のスキャンダル全てを公表してますよね?』


「ん?ああ、少し気になった事があったからな…ついでに、綾を呼んどいてくれ」


『はいはい、解りました……それで、こっちの五十嵐って人はどうしますか?』


烙は、黒いジャケットを羽織りながら

「そっちは俺が調べる。綾が来たら待たしといてくれ。…ああ、あと飯…何か持ってくるように、言っといてくれ」『解りました』




「ばっかみたい。何でそんな怪しさ百倍クラスの依頼を受けるのよ!」


「仕方ねぇだろ!このままじゃガス、電気、水道、ライフラインの全て止められるんだぞ!」

「それはただ単にあんたの怠慢が原因でしょ。あたし、明日の勉強があるんだけど……」


「とりあえず、聞くだけ聞いとけ。三号、報告を頼む」『はい。言われていた依頼人の上の人物、名前が『神宮 京介』。元警視庁公安課の警視で、今の警視総監と前の総監の跡目争いに負けて警察を辞職。地元福岡にて県議選に出馬。他の候補を三万票以上差をつけてトップ当選。その後の県議選もダントツのトップ当選、現在は県知事選に向け手回し中。と今解っているのは、こんなものですね。後これがその写真です。烙さんの方はどうですか?』


綾が手にとり詳しくみる。目鼻は整い顔立ちも悪くはない、元警察官だけあってスーツもよく似合ってる。


「へぇ、良い男じゃない」と、好評の綾に対して、

「そうかぁ?あんま、好きな成れないぜ、俺は」 と、不評。

「こう言う奴は絶対、淫行法とかに抵触している事しながら『ゲヘッ、ゲヘッ』とか言ってるもんだ」


「そうだ!そうだ!そいつは悪いヤツだ!」


綾は突然聞こえた幼い声に驚き、周りを見るが正面に烙が居るのみで他は誰もいない。

「そいつは悪魔と一緒だったんだよ!あたし見たもん!」

聞こえた。声の出どころは、烙の後ろ。烙と綾が見ると、ソファーの後ろに小さい女の子が隠れていた。

「え〜っと…」


綾は戸惑っていた。何でここに居るの?とかどっから入って来たの?とか色々聞きたい事があったが、一番根本的な事を聞いてみた。

「お嬢ちゃん、お名前は?」


名前を聞かなければ話にならんだろう。「あたしはお嬢ちゃんじゃない!あたしは『五十嵐(いがらし) (かえで)』。五十嵐 輝一郎の娘よ!」

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