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インナーヒットマン  作者: 太田
第5章 真実と雛

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最終話 新しい日常

[続いてのニュースです。


数日前に発生した星研究所での大規模な爆発事故について、新たな情報です。


警察と消防によりますと、現場では現在も爆発の原因究明が続けられていますが、

現時点では爆発に至った明確な理由は分かっていないということです。


また、星研究所の所長を務めていた星 文雄(ほしふみお)所長の行方が分かっていません。


警察では、爆発に巻き込まれている可能性と、事故発生前後に現場から立ち去った可能性、この両面から慎重に捜索と調査を行って───]


 僕は店のカウンターに肘をつき、ぼーっとラジオを聞いていた。


 あの夜から、数日が経った。


 星研究所の爆発は、結局「事故」として処理された。


 星がどこにいるのかは、今もよく分からないらしい。


 六田という一人のヤクザから始まったこの一連の出来事は、こうして幕を閉じた。


 僕たちは、ボロボロの身体のまま『りうか』で働いていた。


 胸を貫かれたはずなのに、相変わらずバリバリ動く店長。


 片腕を折り、包帯を巻いているというのに、包丁さばきが相変わらずえげつないセッカさん。


 立っているのがやっとだったはずのスズメさんも、いつの間にか店内を歩き回り、普通に接客をしている。


 本当に人間なのか、疑いたくなる。


 セッカさんは下ごしらえを終え、客席の椅子でぐっすり眠っていた。


 僕はというと、身体のあちこちに包帯を巻き、右腕も固定されている。


 てか、こんなボロボロな状態の店員を見て客は、何を思うのだろう。


 ふと、そんなことが頭をよぎった。


 この事件で、僕──いや、僕たちは、多くのものを失った。


 セラさんの顔が、ふと脳裏に浮かぶ。


 店の窓から、ほんのりと朝焼けの光が差し込んでいた。


「なに辛気臭い顔してんのよ」


 不意に声をかけられ、僕は顔を上げた。スズメさんだった。


「開店の時間が近いわ、準備しなさい!」


「はい」


「セッカ!アンタも起きなさい!」


「むにゃむにゃ…」


 セッカさんは眠そうに目をこすりながら、のそのそと立ち上がる。


 店は、間もなく開店の時間だ。僕はカウンターの椅子から降りた。


 ガチャリ、と音がして、調理場の奥から店長が姿を現す。


「みんな~、見てみて〜!」


 店長の後ろにいたのは、『りうか』の制服を着たノアちゃんだった。


「お~可愛いッスね!」


「可愛いわね」


 胸元の小さなリボンが、やけに大きく見える。黒い制服に、ノアちゃんの淡い髪色がよく映えていた。


「可愛いね」


 僕がそう言うと、ノアちゃんは少し照れたように、


「……ありがとう」


 ぎこちない笑顔を見せた。


「スズメちゃんとノアちゃんで、看板娘が二人になっちゃうね〜」


「いつ私が看板娘になったのよ!」


 いつものように、店長に蹴りが飛ぶ。


 失ったものは、確かにある。けれど、得たものも、確かにあった。


 僕たちは前に進む。ときどき、後ろを振り返りながら。


 また、いつもの日々が始まる。いつ壊れるか分からない、新しい日常が。


 だからこそ、今日を、今を、噛みしめて生きていく。


カランッカランッ


 扉の鈴が鳴った。


 僕は精一杯の笑顔を作り、声を張る。


「いらっしゃいませ!『りうか』へ、ようこそ!」

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