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アナザーハンター・アウトサイド  作者: 加鳥このえ
第一章 ハンターの定義
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第8話 異世界人の生活とは?③

 みなさんお忘れかもしれないが、オレの寿命は明日の朝までである。


「シェリーダさん!」


「だから父さんは!……ん? ああ、マナブか。どうした?」


 ジルさんと別れてしばらくして戻って来たのだが、未だに姉妹喧嘩をしていたシェリーダさん。


 オレはシェリーダさんのお姉さんに挨拶した。


「こんにちは、星乃学歩(ほしのまなぶ)と申します」


「ホシノ……マナブ……?」


 お姉さんはそう言った。シェリーダさんはガハガハ笑いながらこう言う。


「変な名前だろ!? ホシノマナブ、めっちゃ淡々としてる」


「こら、失礼でしょ! ごめんなさい、妹が。私の名前はカミィ・マートン。よろしくお願いします」


「わたしはシェリーダ・マートン」


 オレは「知ってますよ」と言ってシェリーダさんからカミィさんの方を向く。


 そしてこう言った。


「はい、よろしくお願いします! それで、グラトルプスは結局どっちのものになったんですか?」


「蒸し返すねぇ」


 シェリーダさんはしょぼんとした表情でそう言った。そして気を取り直したのか、意気揚々とこう続ける。


「バクだけは取り戻せたぜ!」


 バク、あのグラトルプスはオレが昨日一緒に寝た子だ。


 オレが答える前にカミィさんがこう言う。


「あんたねえ、自信満々に言いなさんな」


「はあ!? お姉ちゃんが私から奪ったくせに!」


「んん!? もともと私のものなんだけど!?」


 ガミガミと姉妹喧嘩が始まってしまった。とても気になるが家庭状況を聞けるような状況ではない。


 どうにかして喧嘩を止めようとオドオドしていると、シェリーダさんが喧嘩を止めてこう言ってくれた。


「てか、なんか用があったんじゃねえの?」


 オレは思い出したようにこう言った。


「あ、すみません! 実はまたスライムを倒したくて……」


「ああ!?」


 そう、オレは明日の朝までしか生きられない。生きるためにはポイントを集めなければならないのだ。


 シェリーダさんは呆れたようにこう言った。


「一度に必要なだけ狩っとけよ……」


 カミィさんはこう言う。


「スライムから出た素材は私が買い取りますよ」


 オレは申し訳なさそうに微笑んで言った。


「ありがとうございます」


 それから準備をして、出発する。


 あの草原に着くまで雑談があった。


「へー、村長のとこで働くのか」


「はい!」


「くそう、チャンスがありゃあ、私の弟子にしようと思ってたのにな」


「ほんとですか!? やってみたいです!」


「……」


 シェリーダさんは少し考えた後、甘酸っぱい苦笑いを浮かべてこう言う。


「やっぱやめた!」


「ええー!?」


 そんな雑談をしながら草原へ。オレはスライムを覚悟と責任を持って殺した。


 町へ帰るともう夕方。この世界でも太陽は一つで、真っ赤に燃えている。


 オレの寿命は三日後の朝まで伸び、しばらくは安泰だと胸を撫で下ろした。


 街に帰ってきてから、カミィさんが営業している質屋のような場所へ行く。そしてオレはカミィさんにスライムから入手した素材を渡した。


「おお! 結構倒しましたね。ひーふーみー……三十匹くらいかな。わかってると思うけど、殺しすぎちゃダメですよ」


「はい」


「それじゃあ重さを計ります」


 そう言ってカミィさんが出したのは、(はかり)であった。


 弁護士バッチとかに書かれてあるやつだ。


 右側に謎の石を置き、左側にスライムから入手した素材を置く。それを繰り返して、結果三百ギニルを受け取った。


「……これがギニル」


 コインを三枚受け取る。


「ギニルって他にもあるんですか?」


「……? あるよ、ほら」


 カミィさんに見せてもらった。


 コインの大きさと模様が違った。


「マナブくんって他の国から来たの?」


「そんな感じです」


「わかった、じゃあ教えるね! このお花の模様が入ってるのは一ギニル、宝石の模様は十ギニル、お城の模様は百ギニルで、王様の模様は千ギニル、天使の模様は一万ギニル……こんな感じかな」


「なるほど!」


「勉強になった?」


「はい! もっといっぱい知りたいです!」


 オレがそう言うと、カミィさんは優しい笑顔を浮かべこう言った。


「しししっ、いいね! 君みたいに好奇心が強い子、大好き! よし、お姉さんがいろいろ教えてあげよう」


「ダメに決まってんだろ」


 カランカランと音を鳴らしながら扉を開け、店に入ってきたシェリーダさんはそう言った。


 そしてこう続ける。


「マナブ、飯の予定はあるか?」


 オレはかぶりを振る。シェリーダさんはニヤリと笑ってこう言った。


「じゃあうちで食えよ。いいよな、お姉ちゃん」


 いつの間にか椅子に座っていたカミィさんは頬杖を付きながら微笑みこう言う。


「いいよ。最近一人で寂しかったし」


「やったぜ!」


 シェリーダさんとカミィさんは会話する。


「私が取ってきた肉使ってくれよ」


「血抜きめんどいからやだ」


「終わってるに決まってんだろ」


「じゃあいいかも」


 オレはこれから、彼女達の家にお邪魔する。成り行きで決まったお食事だが……少し気が乗らない。


 なぜなら……。オレはクンクンと自分の服の匂いを嗅いだ。


 少し厳しい臭いがする。


 そして同時にお風呂に入りたいと思った。この匂いで人様の家に入るのは気が引けるのだ。


 思い返せばこの世界に来てからお風呂に入っていない。ばっちいと思いながら、オレは提案するために口を開いた。


 はたして、このお食事でどんなことが知れるのか。とても楽しみだが、まずは……お風呂である。


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