第7話 異世界人の生活とは?②
「わー!」
この町は動物が多い。ここの世界では動物をモンスターと呼んでいる。牛のモーモース、豚のピッグリ、鳥のコッケココがあちらこちらで育てられているのだ。
モーモースは牛のような生物。特筆すべきは頭が二つあること。お尻の位置に頭がついており、それらは別々に物事を考えているらしい。
ピッグリは豚のような生物。特筆すべきは二足歩行なこと。他にも面白いところがあり、なんと尻尾が三本ある。それと、目が三つあって少し不気味に思えた。
コッケココは鳥のような生物。特筆すべきは頭に殻をつけていること。帽子のように殻を被っており、あそこにも神経が通っているらしい。羽毛も多く、翼が四枚もあるらしい。
なぜ、オレがここまで詳しいのか。
理由は一つ。
「オウドュムはいないんですか?」
「オウドュムはストレスに弱い生き物だからな、こんな場所では飼えんのだよ」
そう、この方が色々と教えてくれたのだ。
ビューニュー売りの女性と別れ、しばらく歩いていると、この男性が歩いていたので訊いてみた。
あそこの動物はなんて名前なんですか、と。
どうやらこの方はジル・ゾタテールという方らしく、ここの牧場を所有している人らしい。そしてなんと、ここの町長らしい。
ここの町は思っているより広く、大きな門を潜って町に入ったところには住宅街と商店街があり、その先に大きな牧場と畑があるのだ。
端っこから端っこまで歩いていると二時間はかかるであろう長さである。
しかしほとんどが牧場と畑であり、人が集まっている場所は三十分もあれば回れるだろうという程度だ。
聞けば、フィアードの森もジルさんが所有しているらしく、思っている以上にこの町は広いのかもしれない。ちなみに、国から責任者としてジルさんが選ばれている。
「すごい! 地産地消で生活しているんですか?」
「ああ。ここの住民が育て、ここの住民が食べ、余ったものを王都で売る。そんな生活をしているのだよ」
「いいですね! オレ、そういう体験したことないからやってみたいです!」
「ほう」
オレは頭を下げて、ジルさんにこう言った。
「オレを、ここで働かせてくれませんか?」
「……突然だな」
オレはこの世界で生きていく術を持っていない。まずはグループに所属したいものだ。ゆえにこの判断。決して興味があるなどという俗的な理由ではない。……まあほんの少しはあるかもしれないが。というかほとんどそうかもしれないが……。
とにかく、オレは生きるための居場所が欲しかった。
ジルさんは言う。
「ここは田舎だ。来訪者もほとんどいない。だから君みたいな子を求めていたんだ」
「……!」
「若い子は王都へ行く。だから若手が欲しかったのだよ」
ジルさんはオレの頭をポンっと撫でた。そしてこう言う。
「君はまだ子どもだろう。頭を下げなくとも、受け入れるさ」
「ありがとうございます……!」
その大きく包み込むような手は、オレを安堵させた。
「……しかし、その服装はなんだ?」
ジルさんはそう言う。オレは下を見る。
気づいたが、どうやらオレは学校の制服を着ていたらしい。夏服だ。
「高校の制服です。……まあ、オレのことなんかどうでもいいですよ! 教えてください、どんな作業をするんですか!?」
「おお、グイグイくるな」
前屈みにそう言うオレに怯むジルさん。
オレは目を輝かせながら返事を待った。彼は言う。
「まったく。明日からだ、今日はゆっくりするんだよ」
「はい!」
「それじゃ、私は用事があるのでこの辺で」
ジルさんは住民街の方へ歩いて消えた。
オレは空を見てこう叫ぶ。
「がんばるぞー!」
そうして、オレの異世界生活の基盤が整い、異世界生活が始まろうとしていた。