表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナザーハンター・アウトサイド  作者: 加鳥このえ
第一章 ハンターの定義
13/15

第12話 戦いの理由とは?②

 薄ら笑いを浮かべていたオレにパンチを当てる現実という存在は、真面目な顔でそれを見せてくる。


「……!?」


 その喪失感は強いものであった。


 この一週間で、オレはこの町の人と少しばかり仲良くなった。モーモースのミルクを売っていた女性はミル・クビューという名であり、優しい夫と二人で暮らしているのだそう。好きなものは甘いもので、王都で食べたマキマキスイート、ソフトクリームのようなものが忘れられないのだそうだ。新婚旅行で行った他国の思い出を少し語ってくれたっけ。常夏の国、幸せの象徴のような都市があるらしい。そんな話をしていた彼女の笑顔を思い出す。


 そして目の前にあるのはミルさんの上半身。


 綺麗な切断面ではない。無理やり引きちぎられたような雑な切り口。下半身は探しても見つからない。


 ミルさんの顔は、苦虫を噛み潰したようなものであった。


 これはダメなことだ。


 確かに、この炎を見てワクワクはした。だけど、人が死ぬのはダメだ。


 この表情よりも、記憶の方が魅力的である。


「もっと……お話聞きたかったな」


 オレは彼女の目をそっと閉じさせる。


 一体、なぜこんな事をするのだろうか。


 確かにオレも人を殺したいと思ったことはある。どんな感触なのか、どんな顔で人は死ぬのか。気になったこともある。


 だけど、それよりも生きている人のほうが価値があるから。


「……!」


 理由を知りたかった。人を殺す理由を。


 オレの瞳は黄色く光る。夜、寝る前に軽く練習していたためすぐにでも発動できた。


 そう、これは異能(スキル)。オレに渡された、情報を知るための力である。


 オレの視界に映る足跡の数々。どれが同じ人の足跡なのか、自動で教えてくれる。この村の人の足跡はすでにスキャン済みだ。だが、知らない足跡が一つあった。


 オレはその足跡を追う。


 ■□■□■


 バルルルルルル・ルルルルル、通称ルルちゃん。彼は焦っていた。


 親は死に、今は妹と二人で暮らしている。そんな命よりも大切な妹は今、業火の中にいるのだ。


「……熱い」


 炎の熱が皮膚を溶かすように伝わってくる。汗はダラダラ流れ、目は痛くなる。息は吸いづらくなり、焦りからか思考も溶けていく。


 彼に物を探す能力はなかった。まずは家に向かい妹を探す。だがいない、ここで彼は壊れた。いるはずがない酒場に行き探す、いるはずがない男湯に行き探す。もしかしたらいるかもしれないという淡い願望を持って、よりいる可能性が高い場所には行けずにいた。


 それはひとえに現実を受け入れたくなかったため。ここに至るまで数人の死体を見た。


 彼は、妹が生きていると信じたかったのだ。


「……」


 彼は見た。炎で焼かれそうになる妹を。


 今まで熱かった周囲は、絶望により冬かと思うほど寒くなる。不安に駆られ、焦るルル。


 妹の死体はそこにあった。


「……見つけた」


 それは彼の妄想である。いや、予測と言ってもいいかもしれない。


 コンマ一秒であった。妹は謎の炎使いに焼かれそうになる、その一瞬のうちに、()()()()()()が現れた。


 それは空中に浮かぶ守りの力。半透明に黄色く光る丸い盾。青い線が散らばるように動き、まるで鍵でも開けているかのように、白い四角がガチャガチャと動く。そんな模様がついているシールド。


 ルルは驚きや好奇心よりもまず感謝を現した。その力の主に、仕事を共にする仲間に。


「ありがとう、マナブ!」


「ルルちゃん、妹を連れて避難を!」


 ルルは妹を抱きしめる。妹に向けてこう言った。


「もう大丈夫ッスル!」


「お、お兄ちゃん……。怖かったよー!」


 わんわん泣きながら兄に抱きつく妹の存在は、星乃学歩(ほしのまなぶ)の好奇心を刺激する。


 彼の目の前に現れたのは、炎を操る男。そう、つまり、地球人である。


 同様に、同じく不思議な力を使う星乃学歩を見て、炎使いの地球人は目を丸めた。


 一触即発の空気。先に動いた方が、戦いの火蓋を切る大役となるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ