轟ちゃんと甘栗くんの朝
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昨日は色々なことがあったーー…。
学園の美少女、轟 野乃亜。
奴がたまたま失恋しかけている場面を見かけ、
そのショックで泣き叫びながら吐いた。
俺の目の前で。
そしてまさかその後、轟の家に行ってカレーを食うとか……。
『色々ありすぎだろ…。』
目まぐるしい昨日の出来事のせいか、
逆に朝早く起きてしまった俺は、自宅の居間に向かった。
「あら、珍しく早いわね慎吾。」
お袋が台風でも来るのかと言わんばかりの顔で俺を見つめる。
「昨日は家でご飯も食べなかったみたいだし…。
いつも遅刻なんてどうでもいいって感じの時間に起きるのに…あんた何か学校であったんじゃないの?」
ギクッ!
……さすがこういうのは母親としか言いようがない。
『……なんもねぇよ。別にたまたま早く起きただけだっつーの。』
俺はポリポリ頭をかいて洗面所に向かった。
「……怪しいわね。」
ボソッと呟くお袋の声が聞こえた。
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『なんとなく学校に向かっちまったけど…。』
俺は退学しようと思ってんのに…
なんで真面目にこんな時間から登校しようとしてんだ??今更朝から学校行ってどうすんだよ。
『なんか昨日の出来事のせいで頭でもおかしくなっちまったかぁー?俺…。』
そう思ってうなだれていたら、
反対車線の信号の方にウチの制服を着た男女が見えた。
ゲッッッ!!
もやしみてぇなヒョロっちい体型のイケメン。
城崎 美月と、昨日学校でぶっ倒れた女。双葉がいた。
双葉に歩幅を城崎が合わせ、お互い和やかに微笑みながら歩いていた。
うわっ!ほんとに一緒に登校してんのか!
わかっちゃいたが…。
『こんなん轟が見たら…。』
「Hey!!リーゼントボーーーーイ!!」
バンッ!!
痛え!!
後ろから思い切り背中を叩かれた。
叩いた相手と声の主は……
ーーーーー轟 野乃亜だった。
昨日とは打って変わって元気そうにニッコニッコるんるんした顔をしている。
…ふっきれたのか?
『…なにすんだよ轟。』
俺は若干轟を睨みつける。
「HeyHey!HeyHey!
浮かない顔をしているねボーーーーイ!!
こんなGood天気の朝にはもっとサンシャイーーーーーーン♫を見上げて微笑んで歩かなきゃ!!!」
ズンチャカズンチャカと踊り出す轟。
踊りながら微笑んでいる轟の目には涙が滲んでいた。
あ、だめだコイツ全然ふっきれてなんかいねぇわ。
『お前他の生徒もこの時間歩いてんのによ。
俺に普通に話かけていいんかよ。』
さすがにこの時間帯はウチの学校の生徒が通学している。
学園の美少女と学園の不良が一緒にいるのどうかと思った。
「チッチッチッチッ。
私の人徳を甘く見てはいけないよボーーーーイ♫」
そう言って轟は俺を指差す。さっきから何キャラだよお前。
「私が君に声をかけていても一見、友達がいなくて学校になじめない不良に優しく声をかける美少女にしか周りは思わないのだよ!だから安心したまえ甘栗くん!」
友達がいないに学校になじめない不良と言われて、ちょっとイラッときたが確かに客観的にはそう見えるか。
『…そうかよ。』
何か少し照れくさくなった俺は轟から目線を外して足元を見たーーーーーーー。
『…うわ!!!なんだお前その足!!!』
轟の右脚に包帯がぐるぐる巻いてあったー…。
「……ああ、これね……。」
フッと苦笑をして轟は自分の包帯に目を向ける。
「昨日美月が、双葉さんドジで放っておけないって言ってたじゃない?だから…。」
あからさまに沈んだ顔で笑う轟。
「だから思ったの私。今まで美月に釣り合う完璧な女の子でいようと思ってたけどそれって間違いだったのかなって…。」
それとその包帯は関係あんのか?
「私がドジっ子になったら美月も振り向いてくれるかなって思って…。今朝家の中の階段踏み外して転んでみました…。」
いや、その行動力キモイぞお前。
『いや、その行動力キモイぞお前。』
あ、やべ口に出しちまった。
「……まぁこんなことをしても美月は双葉さんと仲良く登校してるみたいだけどね…。」
そう言って自分で自分の首を絞めるセリフを吐いて落ち込む轟。
『にしてもお前の登校のタイミング悪ぃよな。』
ちょうど城崎と双葉の反対車線後ろ側になるくらいのタイミングで家出るなんて。
「……今日はできるだけタイミングズレるようにいつもより早く登校したはずだったんだよ!!!
なのに!!畜生!!朝からあんなお互い楽しそうに登校してる2人を後ろで見ながら学校に行くつもりなんてなかったんだよぉ!!」
「学校休もうかとも思ったけど美月に対してあからさまかな?とか。
昨日あんなに生徒いる目の前で美月が双葉さんのことおんぶして帰ったから絶対噂になってるだろうし?
私が休んだから余計学校の人達に何か思われそうで怖かったんだよぉぉぉぉ!!!」
そう言ってうなだれて叫ぶ轟。
『ーーまぁ…だろうな…。』
学校のやつらなんて噂が大好きだ。
他人のことなんてどうでもいいような面してる癖に、
何かあるとすぐ面白がりやがる。
田舎に住んでいた時は、周りのヤツらが男ばかりっつーのもあったが裏でコソコソ言うような人間はいなかった。
近所の老人共には確かに白い目で見られたこともあったが、接していくうちに段々普通に話すようになっていた。
……それはあくまで田舎で人も少なかったからっていうのはある。
ここは東京の都会の学校で、俺の地元よりもわんさか人がいる。そんな環境の中で噂が立つのはもっと気分が悪ぃ。
ましてやどっちも目立つ、城崎と轟の噂なんて大きく広がるだろう。
「はーーー、憂鬱すぎるよぉぉ甘栗くーーん。
私これから毎日こんな気持ちで学校いがないどいげないのぉ?」
ふえーーーんとベソをかく轟。
不憫なやつだな……と思いながら何も言わず俺は轟を見ていた。
「まーーでも、今日朝甘栗くんに会えて良かったよ〜。誰にもこんな嘆けないし…。私1人であの2人の登校見ながら学校行くの耐えられなかったかも。
学校来てくれて助かったよありがとう!甘栗くん」
『……うるせぇ。』
なんか急に照れくさくなった俺は、轟から視線をそらしてそっから話さなかった。
ーーーーなんやかんや轟と話していたら気づいたら校舎の中に入っちまった。
校舎の中に入ると人が変わったかのように背筋を伸ばしてキリッとした表情になる轟。
もうその姿は学園の美少女そのものだ。
「ーーじゃあ、甘栗くん。きちんとお勉強するのよ。」
うふふと言わんばかりにお上品に轟はクラスに入っていった。
轟はC組。俺はD組。
城崎は轟と同じC組。あの双葉とかいう女はB組らしい。
『この時間に教室入るなんていつぶりだよ…。』
轟のせいで教室入っちまったじゃねぇかよ…。
いつもなら登校したらグラウンド倉庫の裏でタバコを吸って時間を潰していたんだが…。
まあ、どうせ退学すっしたまには授業ってもんを体験してやるか。
俺は、窓際の1番後ろの自分の座席につく。
【え、あれ甘栗?】
【なんでこの時間から学校きてんの…?】
【ずっと教室なんて入ってきてなかったのに…】
案の定クラスのヤツらがザワつく。
うるせぇ、散れ。
そう思って俺は頬に手をついて窓を眺めた。
1時間目の授業は、先公も生徒も珍しく教室にいる俺をみて台風でも来るのかみてぇな目で見やがった。
ーーー退学するのに真逆の行動をしちまってる。
どうも昨日から俺の中の調子が狂っちまってる。
それもこれも轟 野乃亜に出会ったせいだ。
昨日で終わりの関係だと正直思っていたが、何故か普通に話しかけられ、轟 野乃亜と登校していた。
なんなんだよ轟 野乃亜…
轟 野乃亜に振り回されている自分にムカついて、
1時間目の授業は聞くつもりもなかったが爆睡した。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
なるべく1日1話ペースであげられたらと思っています。