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○動けない男1 〜 面宵蒼 〜
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また仕事を休んでしまった。
――正式に言えば、【休まざるを得なかった】のだ。
多少の罪悪感と、溢れる解放感で混濁した感情をどうにか紛らわそうと 面宵 蒼は閉め切った部屋で一人、亦煙草を吹かし始めた。
「今月はあと…1、2、3…」
スマホでカレンダーを開き、【その日】の数を確認すると蒼は煙混じりの溜息をふうっと一息ついた。
――― 最悪。あと3回もあるのね……
有給の残数を気にしながら休むというのは気苦労が絶えない。
この調子だと今年もまとまった休みを取るのは難しいだろう。
嗚呼、また思い出してしまう。
どうしてあの時、ああしなかったんだろう。
どうしてあの時、早々に逃げなかったんだろう。
――どうして……
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