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140字小説  作者: 束田慧
9/30

作品No.81〜90

作品No.81【異界喫茶】


本日のお客様は、奥様に先立たれた男性です。

もっと妻を幸せにできたのではと悔やんでいるご様子。

「幸せの形は人それぞれ。彼女は満ち足りた顔でお逝きになりました」

そうお伝えすると、彼は笑いながら消えていきました。

ここは喫茶『黄泉比良坂』。お客様との出会いは一期一会でございます。



作品No.82【バグ】


今日は俺達のゲームの発売日。今までの犠牲に報いることができたが、喜びも束の間、バグ報告が多数寄せられた。

仲間が死ぬ場面でキャラの顔が変わり、突然エンディングに突入する、と。

確認すると、バグったキャラは過労死したプログラマーの顔で、入れた覚えのない彼の名がクレジットに表示された。



作品No.83【飛蚊症】


今日も視界の端にアレが飛んている。飛蚊症かとも思ったが、何か違う。

時折人の顔のように見えるソレには、感情があるように思えた。俺が嬉しい時には笑い、辛い時には泣いている、そんな表情だ。

そういえば、コレが見え始めたのは、母さんが死んだ頃からのような気がする。



作品No.84【ブーム】


「じじとばばすき」

「じじとばば喜ぶわ」

「ママもすき」

「良かったねママ」

「パパもすき」

「パパも陽葵好き!」

「はるとくんもすき」

「誰だよその男ぉぉぉ!」

最近、夫を発狂させるのが娘のブームだ。



作品No.85【水槽越しの恋】


私はたった一人の生物部。あの人との会話は、いつも水槽越しだった。屈折した恋心は水の底に沈んでいく。濁った私の心をろ過してくれたのは、お掃除生体達の健気な姿だった。

いい女になって、逃がした魚は大きかったと思わせてやるんだ。そしたらきっと言えるから。

『結婚おめでとう先生』って。



作品No.86【造花】


目覚めると、病院のベッドの上にいた。僕は誰で、何故ここにいるのか。

後から来た女性が母であることも、本人に聞くまで分からなかった。

数日後。母は、花瓶に造花を挿していた。

「本物の方が好きだな」

「作り物もいいものよ」

そう言いながら造花を眺める母は、僕を見る時と同じ表情をしていた。



作品No.87【琥珀糖で男は釣れるのか】


「合コンにいつも持ってきてるアレ何?」

「琥珀糖。ルビー色で綺麗でしょ」 

「琥珀糖か。なら、色々あった方が綺麗じゃない?」

「アレで私の誕生石を連想してプレゼントしてくれるような、教養と財力のある人を釣る為よ」

「へぇ(そのどぎつい口紅の色みたいって皆言ってる事は内緒にしとこう)」



作品No.88【箱入り娘】


私は箱入り娘。

欲しい物は買ってもらえないが、私には魔法の箱がある。寝る前に願った物が翌朝入っている、という代物だ。

それでも満たされないのは、人恋しさ故か。

世間はクリスマス。私には今朝組み立てたツリーしかない。初恋の人を思い出し、彼が欲しいと願い…

翌朝、絶望を味わうことになる。



作品No.89【阿吽の呼吸】


その老夫婦は、いつも息ぴったりだった。

長年連れ添ってきてお互いの思考を読めるようになったのではと思えるほどに、常に阿吽の呼吸で事を成す。

以心伝心とはこのことだろう。

ある朝、起きてこないのを不審に思い家族が見に行くと、安らかな表情で手を繋いだまま事切れている2人の姿があった。



作品No.90【猫も意外と頭が良い】


我が家の猫は人間が好きだ。側を通ればまとわり付き、立ち止まればへそ天。

可愛いが、忙しくて邪険にしてしまうこともある。

今も廊下で鳴いているのを放っておいたが、しばらくして砂をかく音がし始めたので、仕方なく重い腰を上げた。

だが、トイレには何もなく、足元に毛玉が…こいつ、謀ったな!

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