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140字小説  作者: 束田慧
8/30

作品No.71〜80

作品No.71【重機扱いはやめましょう】


俺は交通誘導員。先輩の横詰さんと現場に来た。監督は、『大関』と呼ばれて親しまれている小関さんだ。

仕事中、横詰さんが『重機出るから止めといて』と無線で言った。

…重機が動く様子はない。よく分からず止めていると、監督が横断した。

…なるほど。でも人のこと言えませんよ、『横綱』先輩。



作品No.72【現代っ子はスマホを使いこなす】


家族でお出かけ中。娘はさっきまで騒いでいたが、今は静かだ。

しかし、今度は妻が騒ぎ出した。

「あれ?スマホがない」

「置いてきた?」

「持って出たはず」

「隙間に落ったかな。電話してみ」

と、スマホを妻に渡す。電話してみると後ろで着信音が鳴り、「もしもし、パパですか?」と娘が言った。



作品No.73【入れ替わり】


殺人現場を目撃し、どうしたらと翔に相談すると、待ってろと返事が来た。

数分後、インターホンが鳴る。モニターには…犯人。腰を抜かす俺に、男は話しかけてきた。

自分は翔で、30分ほど前にぶつかり中身が入れ替わったという話だ。

信じてドアを開ける。その時、翔の後ろから『翔』が迫っていた。



作品No.74【犯罪者遺伝子】


長年の研究の末、犯罪者に特定の遺伝子があることが分かった。

これを受け政府は、この遺伝子を持つ子を保護観察とすることを決める。批判の声も多かったが、犯罪は減少。

しかし、烙印を押された者達か黙っていなかった。始まったデモは次第に過激化。犯罪集団が蔓延り、この国は犯罪大国となった。



作品No.75-1【俺がボケでツッコミが君で】


俺達は漫才師。俺がボケでツッコミが彼女。

結成10周年を迎える今日、大勝負に出る。舞台で一世一代のアドリブをかましてやるのだ。

過去一の緊張感の中、何とか声を絞り出す。

「結婚してくれ!」

「は?え?何言うてんのマジで…OKに決まっとるやんアホ…」

こうして俺達は夫婦漫才師になった。



作品No.75-2【君がボケでツッコミが俺で】


俺達は夫婦漫才師。俺がボケでツッコミが彼女…だった。

結成50年を迎えた頃に妻が認知症になり、刺々しくも愛のあるツッコミは鳴りを潜め、今はひたすらボケ倒している。

さすがに引退を余儀なくされたが、これでいい。役割は逆になってしまったが、生涯ボケとツッコミの関係を貫こうと思う。



作品No.75-3【夫婦と書いてコンビと読む】


漫才師を引退して隠居生活中、妻が突然倒れて目覚めなくなった。

もう一度あのツッコミを聞きたい。そんなことを思いながら、

「来世も夫婦になってくれるか?」

と声を掛けると、奇跡が起きた。妻が口を開き、

「当たり前やろ。あんた、私がいないと何もできひんから」

とツッコんで息を引き取った。



作品No.76【理想鏡】


魔法の姿見を手に入れた。

映るのは理想の自分。好きな部位を交換できるらしい。

物は試しだ。

「脚が欲しい」

と、恐る恐る呟いた瞬間光に包まれ、脚が入れ替わった。

本物だ。確信して全て欲しいと願うが、何故か体は元のまま、身動きが取れない。

そんな私を尻目に、『理想の私』が怪しく微笑んだ。



作品No.77【占い師】


「お、占い師だ」

「怪しくね?犬いるし」

『そこの貴方。近くへ』

「ご指名だぞ」

「ちっ、仕方ねぇ」

『貴方。顔に大きなホクロ。それは悪性よ。すぐ診てもらいなさい』

「おい、やばくねぇか…?ホクロがあること当てて…」

「んなもん、見れば分かるだろ」

「いやだってお前、その犬…ハーネス…」



作品No.78【誤認】


「テレビつけてー」

「はいよ」

『続いてのニュースです。アイドルグループのメンバーが誤認逮捕された事件で…』

「えっ、そんなに捕まったんだ。何したの?」

「誤認ってことは何もしてないんじゃ?てか、そんなにって?」

「だって、5人も逮捕されたんでしょ?」

「…それは君の方が誤認してるよ」



作品No.79【幽涼み】


猛暑に見舞われた8月の夕方、俺はあの場所に来ていた。

今日は妻の命日。涼みに行った先での事故だった。その現場で妻の霊が出るというのだ。

確かに、異様な雰囲気が漂っている。ヒヤリとした空気が火照った体を冷やし、現れた影に冷え切っていた心が火照る。

――妻は、確かにそこにいた。



作品No.80【缶蹴り】


「缶蹴りしよ!」

公園で読書中、幼い声が聞こえた。

ノスタルジーに浸りながら目を落としていたが、すぐに「家でゲームしよ!」との声。

今の子は家の方がいいよな。

と、センチメンタルになっていると、「全然飛ばないから楽しくない!」

その声に目をやると、公園の中央に一斗缶が鎮座していた。

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