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140字小説  作者: 束田慧
7/30

作品No.61〜70

作品No.61【マスク】


大昔の人類は、感染症対策にマスクを着用していた。飲食や入浴の為に着けたり外したり、煩わしいことこの上ない。

と、この時代に生きる若者が、歴史に思いを馳せながら感染症の薬を飲んだ。

下顎が進化して形成された自前のマスクを開いて。



作品No.62【子どもは正直】


「肩いてぇ」

「どうしたの?」

「分からん」

「四十肩かな?」

「いやいや、まだ38だし」

そんな他愛のない会話を近くで聞いていた小学生の娘が、冷たく言い放った。

「でもアラフォーじゃん」

子どもは正直だ。



作品No.63【草刈り】


父の草刈りを見ていた息子が、カラスを指差して訊いてきた。

「なんであのカラスはジジの後をついてくの?」

「虫が出てくるのを待ってるのさ」

『違う』

何だ今のは。父でも息子でもない不気味な声。

それが聞こえた直後、突然カラスが父を襲い、はずみで切断された指を咥えてどこかへ飛んでいった。



作品No.64【境目】


「久しぶりだな。そこで何してんだ?」

「…」

「元気か?おっと、雨だ…あれ、そっちは降ってないのか」

「雨の境目だな。幽世との境って説もある」

「へえ。うわ、土砂降りだな。そっち行くわ。てか、いつの間に幽世なんて難しい言葉使うようになったんだよ」

「それは、幽世の住人になったからさ」



作品No.65.【嫌われ者の月曜日】


ある企業で会議が行われていた。社員は否定的な人間ばかりで、いつも話が進まない。

「こちらは仮称『雪月花』の企画書です」

「雪は嫌いだ」

雪国出身の社員が憎々しげに言った。

「花粉症のイメージが…」

鼻声の社員が言った。

「月曜を連想して胃が痛く…」

『それはそう』

全員が口を揃えた。



作品No.66【異世界猟師】


私は猟師。熊に襲われ、気付いた時には異世界にいた。

この世界にも獣害はあり、依頼をこなして生計を立てていたが、ここら一帯の熊は狩り尽くしてしまった。

生活の為、標的を求めて東へ西へ。根無し草の旅に終止符を打ったのはまたしても熊だった。

異世界の熊は飛び道具を使うらしい。反則だろ。



作品No.67【流行は繰り返す】


「この音源好きだわ」

「古臭くね?」

「この8bit感が懐かしくてたまらん」

「年齢バレるぞ」

「おっとそうだな。8bitサウンドが流行るのは100年後くらいだった。まだ俺が小学生の時だわ」

「えっ…?」



作品No.68【魔女狩り】


魔女狩りのことを調べる為にタイムマシンを作った。

荷物をまとめて過去に飛び立つ。遡行は成功したが、マシンは壊れてしまった。

何とか拠点を手に入れ『邦人犠牲者』の存在を調査したが、情報がない。

もう少し未来では、と考え、マシンの修復を試みる最中、私は悪魔の研究者として連行された。



作品No.69【三原色ジュース】


科学者の妻に実験台にされ続け、さすがに嫌気と魔が差した俺は不倫をしてしまった。

すぐバレたが、「この三原色ジュースを飲んだら許す」と、どす黒い液体を渡してきた。

ええいままよ!

これはトマトと茄子と…じゃがいも?不味いが、これで許されるなら…と苦笑する俺に、妻は不敵な笑みを向けた。



作品No.70【怪しい薬】


久々に試合に出た俺は、野手と交錯して負傷した。

今季は絶望的、戦力外もあり得る。医師に相談すると、怪しい薬を渡してきた。

飲んでみると、1週間で完治。報告も兼ねて、高級寿司をおごることにした。

「食べないのか?」

「食欲なくて。喉は妙に渇くけど」

「…実はアレ、吸血鬼になる薬なんだ」

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