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140字小説  作者: 束田慧
6/30

作品No.51〜60

作品No.51【行列】


明日は話題のゲーム機の発売日。

いち早く確実に手に入れる為、僕はこの寒空の下、列の先頭に陣取っている。

長い夜が明け、ゲーム屋が開店した。目的のゲーム機を持ってレジに向かう。

次第に高まっていくテンションは、かじかむ手をポケットに入れた瞬間、スカイダイビングのごとく急降下した。



作品No.52【蝋人形館】


とある街外れに、個人が趣味でやっている蝋人形館があった。

財産をなげうって建てた館の中に99体もの蝋人形が展示してあり、街外れにありながら多い日には100人近い客が訪れる。

だがある日、主人に恨みを持つ何者かが館に火を放った。

館は一晩のうちに消失。犠牲者100人の大惨事となった。



作品No.53【遊園地】


息子と遊園地にきた。

幼子が楽しめるアトラクションは少なく、最初はお化け屋敷を選んだ。いざ入ってみれば、怯えた様子で後ろに隠れている。

「怖いよぉ」

耐えきれなくなったのか、俺の肩を叩きながら声を震わせた。

「こうすれば怖くないだろ?」

「うん…」

手をつなぐと、少し落ち着いたようだ。



作品No.54【雨は天の涙】


彼女を探して幾日か。

ある雨の日。初めて出会った公園で俯く彼女を見つけた僕は、あの日のように傘を差し出した。

『雨は好き。涙を誤魔化してくれるから。でも…』

言葉を濁す彼女の頬を涙が伝う。

いなくなった理由を悟った僕に、彼女は『バイバイ』と告げて消え、涙に代わって雨の滴が落ちた。



作品No.55【メリーさんごっこ】


非通知電話で現在位置を教える『メリーさんごっこ』が流行中。今日も在宅中に電話が。

『俺○○。今電車。――にいく』

「え?」

『テレビを――』

雑音が酷いが、テレビをつけると脱線のニュースをやっていた。

「○○!今どこに!?」

『メリーさんって』

「え」

「振り向くとどうなるんだろうな」



作品No.56【釣りサークル】


ある日、釣りサークルのメンバーからメールが来た。

『来月3日に海釣り行きます。朝7時に○○港集合です。五郎丸で6ヶ所回り、夕方4時頃戻る予定です。皆様の参加をお待ちしています』

参加を決めた俺は楽しみでしょうがなかったが、当日熱を出してしまった。それ以来、誰とも連絡が取れていない。



作品No.57【雨男】


男は雨が嫌いだった。

イベントに参加すれば雨。『雨男』と疎まれ、次第に外に出なくなり自宅に引きこもる日々。

見かねた父親に山間の村へ連れ出され、村長の農作業を手伝っていると突然の降雨。

「またか」と嘆息するが、村長は涙を浮かべている。

その意味を理解し、彼は久々に白い歯を見せた。



作品No.58【追放物の主人公】


「この無能!追放だ!」

いつも理不尽なことを言う上司が叫んだ。

クビじゃなくて追放?

「追放?ラノベの読みすぎでは?知ってますよ、仕事中にネットで小説読んでるの」

そう返すと、上司は顔を真っ赤にして黙った。ざまあみろ。

翌日から俺はイキリオタクと呼ばれるようになった。何故なのか。



作品No.59【隠し場所】


父ちゃんは、テストで悪い点を取ると怒る。

この前も結果が悪く、いい場所を見つけたから隠したんだ。

でも、テストがあったことがバレて、どこに隠したと聞くので「そこだよ。母ちゃんが何か隠してたから見つからないと思って。母ちゃんなら黙っててくれるし」と言ったら、何故か褒められちゃったよ。



作品No.60-1【生まれ変わった勇者】


父が勇者と魔王のなりきりセットを買ってきた。弟と俺で好きな方をと言われたので、魔王を選んだ。

何故かって?

このセットは、かつて存在した勇者と魔王の装備品のレプリカ…つまり、勇者の生まれ変わりである俺が着ていたもので、今見るとあまりにも恥ずかしい。

この事実は墓まで持っていこう。



作品No.60-2【生まれ変わった魔王】


父が勇者と魔王のなりきりセットを買ってきた。兄と俺で好きな方をと言われたが、先に魔王を取られた。

待て。勇者の装備なんてごめんだ。何故なら俺は、魔王の生まれ変わりだから。

などと言えるはずもなく喧嘩になった。

こんな下らない争いをしている場合ではない。本物の勇者を探さなくては。



作品No.60-3【果たされた宿命】


かつて、この世界には勇者と魔王がいた。

命を賭した戦いは勇者の勝利で幕を閉じ、斃れた魔王は最期に呪い言を吐いた。

『我は蘇る。貴様との因縁は、魂ある限り続くだろう。我々は争い続ける運命なのだ』

それから1000年後。彼らは双子に転生し、些細な兄弟喧嘩によって今世の宿命は果たされた。

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