作品No.31〜40
作品No.31【天才俳優】
俺は天才俳優。
足を引っ張る若手に、「凡人がいていい世界じゃない」と言ってやった。
翌日、そいつはおろか他のスタッフも撮影現場に来なかった。どうなってんだとスマホを取り出した瞬間着信が。
『我は神。凡人は全て消した』
その言葉に愕然とした瞬間、ドッキリ札を持ったマネージャーが現れた。
作品No.32【ナビ】
元カノが死んだ。
元々メンヘラだったが、別れてから鬱になり車に飛び込んだらしい。
墓参りくらいは、と住所を聞いてナビで向かう。
30分ほど走った頃、ナビが『目的地周辺です』と告げた。まだ先なのに。
一旦停車して再設定していると、ナビから覚えのある声が聞こえた。
『私、ここで死んだの』
作品No.33【動物園】
猿の親子と目が合った。
しばしの沈黙の後、子どもが言う。
「餌あげてもいい?」
「いいよ」
ここは餌やり自由の動物園。咎める者はいない。
子どもは、リュックの中から何かを取り出し檻の隙間から差し入れた。
「やったー!チョコレート大好き!」
『餌』をつかみながら、私の子どもがそう言った。
作品No.34-1【かわいいお宝】
仕事から帰ると、玄関に『←お宝』と書かれた紙が置かれていた。出迎えた妻は首を傾げるが、ニヤニヤしている。
仕方ない、付き合ってやるか。
家中に置かれた矢印をたどると、最後は押入れにたどり着いた。
ふすまを開けると何とそこには…!
…すやすやと寝息を立てる娘がいた。
何これかわいい。
作品No.34-2【最高のお宝】
昨日は娘と宝探しで遊んだ。
今日は何を仕掛けてくるのかとワクワクしながら帰宅すると、また『←お宝』の紙が。ふっ、芸のない…仕方ない、また付き合ってやるか。
同じ手順でお宝にたどり着くが、意外な展開が待っていた。
押入に娘はいない。代わりに、なくしたはずの俺のお宝が!
何これ最高かよ。
作品No.34-3【夫のお宝】
昨日は娘が仕掛けた宝探しに、夫が付き合っていた。
これは使える…!
思いついた私は、同じように矢印を置いた。押入れにアレを入れて。
帰宅した夫は再び矢印をたどり、アレを見つけて上機嫌になった。
これで、借りたまま忘れていて返しにくくなったレトロゲーム機のことは有耶無耶にできたかな。
作品No.35【出世】
男は出世を願っていた。
警察官になった当初は正義感に溢れていたが、今では上に行くことしか頭にない。
手柄の為なら違法捜査や強引な逮捕も厭わなかったが、思うように昇進は出来なかった。
ある時彼は、出世開運で有名な神社に赴いて手っ取り早く昇進したいと願い、程なく二階級特進を果たした。
作品No.36【スクープ】
私はとある週刊誌の記者。
今、あるアイドルのスキャンダルを追っている。以前にも一度すっぱ抜いたが、まだボロが出るはず。
そう思って付け狙っていると、彼女は突然振り向いてこちらに走ってきた。
物凄い形相に思わずカメラを構えた瞬間、冷たい感触が襲い、最期にして最高のスクープが撮れた。
作品No.37【聖剣の勇者】
ハインは勇者の末裔。
血族のみ扱える聖剣で魔物を屠っていたが、先代亡き後は、従者のアデルに討伐を任せ、自身は放蕩三昧。
当然剣の腕は落ち、馬車を急襲した魔物にあっさり敗れ、乗り合わせたアデルが、取り落とされた聖剣で魔物を倒した。
後で分かったことだが、アデルは先代の隠し子であった。
作品No.38【海賊】
男達は略奪の限りを尽くした。
運悪く海賊に襲われた客船内に狂乱の声が響く。
だが、海賊の一人が、
「お前は死んだはず!?」
と驚愕の声を上げた瞬間、乗客達が一斉に不気味な笑みを浮かべた。
気付いた時にはもう遅く、海賊達は取り込まれてしまった。
この日の標的は、運悪く幽霊船だったのだ。
作品No.39【多重人格】
妻が失踪した。
捜索願は出したが一向に見つからないので、SNSで情報を募っている。冷やかしばかりだが、一つだけ気になる書き込みがあった。
『真実を知る勇気はあるか?』
その問いに『教えてほしい』とDMを送ると、驚愕の返答が返ってきた。
『俺はお前の別人格。妻は、他の人格が殺した』
作品No.40【空色】
犬を拾った。瞳の色にちなんで「ソラ」と名付けた。
ソラは勇敢で、いつも僕を助けてくれる。本当は僕の方が守ってあげたいのに…そう思っていた矢先、僕達は事故に遭った。車から僕をかばって、ソラは…
それから2年。僕に弟ができた。何故か瞳が空色の弟は「空」という。今度は僕が空を守るんだ。