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140字小説  作者: 束田慧
30/30

作品No.291〜300

作品No.291【中古物件】


今日も妻と喧嘩。ローンも払えない甲斐性なしと責められた。確かにこの家は妻の名義だが、そこまで言うか。

こんな時は、間取りを見るに限る。今の俺の、数少ない楽しみだ。今日は中古物件を…あれ、なんか見覚えのある間取りだな。

と思い至り顔を上げると、後ろに『離婚届』を持った妻が立っていた。



作品No.292【ノー味噌】


「あの車、スタッドレスはいてるな」

「この程度の雪で、ダッセェ。俺は当然ノーマルタイヤっすよ」

「甘いな。俺クラスになると、ノータイヤだぜ」

「ホイールっすか!さすが先輩、マジパネェっす!」



作品No.293【とある男女の通話】


『昨日、彼女に振られちゃってさ』

『あんたは、もう少し女の子の真意を汲み取った方がいいよ』

『難しい』

『ちょっと練習してみる?例えばそうね…月が綺麗ですね』

『月が綺麗…えっと……あっ、そうか。どうも部屋が寒いと思ったら、放射冷却か。暖房強めるわ、ありがとう』

『…ダメだこりゃ』



作品No.294【裏メニュー】


私の趣味は海外旅行だ。色々行ったが、毎年必ず行く国がある。特に、とある店の料理が絶品で、今や常連だ。

最近、裏メニューがあると聞いた。一部の常連しか知らず、合言葉を言うと個室に案内されるらしい。

運良く、それを知る常連と仲良くなり、教えてもらった。合言葉は、『carnival』であると。



作品No.295【とんでも鑑定団】


最近、ネット界隈で話題になっている番組がある。有名な鑑定番組のパロディだが、生放送で、鑑定品も何が出てくるか分からない。

その為、しばしばとんでもない物が出てくるのだが、本家で偽物と評された品に高値がついた事が物議を醸している。

偽物が本物を超えたと揶揄され、伝説の回となった。



作品No.296【いっぱい食べる君が好き】


今日は友達に頼まれてビュッフェで合コン。

どうせろくな男いないだろうし、好きなだけ食べようと思ってたけど…いるじゃん、いい男。

これはちょっとセーブしないと…そう思い、普段の5割減で少食アピールしたのに、友達は普段通りの大盛。

それを見て彼は言った。

「いいね。いっぱい食べる子好き」



作品No.297【押しボタン信号】


田舎暮らしを始めた。

信号は無いに等しい村だが、通勤路の途中に1つだけ押しボタン信号がある。人など通らないが、先日、誰もいないのに赤になった。律儀に止まる俺をよそに対向車が猛スピードで突っ込み、何かにぶつかって大破。

後で知った事だが、あの場所で子どもが轢かれる事故があったらしい。



作品No.298【ご利益】


歯磨き覚えたての娘が、『パパも磨いてあげる!』と言い出した。夫は黙って口を開け、されるがまま。

終わる頃にはダラダラで、慌てて濯ぐ夫に娘が問う。

「どう?」

「綺麗になった!」

良かったね。

「虫歯治ったし」

凄いね。

「髪増えたし」

うん?

「宝くじ当たった」

怪しいパワーストーンかな?



作品No.299【駄菓子屋の怪異】


路地裏に迷い込み、駄菓子屋に行き着いた。店主らしき老婆と…背後に、柔和な笑みを浮かべる老爺。

「失礼ですが、ご主人は?」

「とっくに死んだよ」

「そうですか。すみません」

「まだ生きてるぞ」

と言いながら、奥からご主人が登場。偽ご主人は…柔和だった笑みが不気味な笑みに変わっていた。



作品No.300【ストーカー】


今日は新築の完成見学会。私は知っている。ここがあの人の家だと。

盗聴器でも仕掛けるつもりじゃないかって?

私はそんな低俗なことはしないわ。家の中も外も隅々まで観察して、同じ家を作るの。

この家は奥さん名義のはずだから、別れたら拾ってあげて、私の家で一緒に住むの。

住み慣れたこの家で。

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