作品No.291〜300
作品No.291【中古物件】
今日も妻と喧嘩。ローンも払えない甲斐性なしと責められた。確かにこの家は妻の名義だが、そこまで言うか。
こんな時は、間取りを見るに限る。今の俺の、数少ない楽しみだ。今日は中古物件を…あれ、なんか見覚えのある間取りだな。
と思い至り顔を上げると、後ろに『離婚届』を持った妻が立っていた。
作品No.292【ノー味噌】
「あの車、スタッドレスはいてるな」
「この程度の雪で、ダッセェ。俺は当然ノーマルタイヤっすよ」
「甘いな。俺クラスになると、ノータイヤだぜ」
「ホイールっすか!さすが先輩、マジパネェっす!」
作品No.293【とある男女の通話】
『昨日、彼女に振られちゃってさ』
『あんたは、もう少し女の子の真意を汲み取った方がいいよ』
『難しい』
『ちょっと練習してみる?例えばそうね…月が綺麗ですね』
『月が綺麗…えっと……あっ、そうか。どうも部屋が寒いと思ったら、放射冷却か。暖房強めるわ、ありがとう』
『…ダメだこりゃ』
作品No.294【裏メニュー】
私の趣味は海外旅行だ。色々行ったが、毎年必ず行く国がある。特に、とある店の料理が絶品で、今や常連だ。
最近、裏メニューがあると聞いた。一部の常連しか知らず、合言葉を言うと個室に案内されるらしい。
運良く、それを知る常連と仲良くなり、教えてもらった。合言葉は、『carnival』であると。
作品No.295【とんでも鑑定団】
最近、ネット界隈で話題になっている番組がある。有名な鑑定番組のパロディだが、生放送で、鑑定品も何が出てくるか分からない。
その為、しばしばとんでもない物が出てくるのだが、本家で偽物と評された品に高値がついた事が物議を醸している。
偽物が本物を超えたと揶揄され、伝説の回となった。
作品No.296【いっぱい食べる君が好き】
今日は友達に頼まれてビュッフェで合コン。
どうせろくな男いないだろうし、好きなだけ食べようと思ってたけど…いるじゃん、いい男。
これはちょっとセーブしないと…そう思い、普段の5割減で少食アピールしたのに、友達は普段通りの大盛。
それを見て彼は言った。
「いいね。いっぱい食べる子好き」
作品No.297【押しボタン信号】
田舎暮らしを始めた。
信号は無いに等しい村だが、通勤路の途中に1つだけ押しボタン信号がある。人など通らないが、先日、誰もいないのに赤になった。律儀に止まる俺をよそに対向車が猛スピードで突っ込み、何かにぶつかって大破。
後で知った事だが、あの場所で子どもが轢かれる事故があったらしい。
作品No.298【ご利益】
歯磨き覚えたての娘が、『パパも磨いてあげる!』と言い出した。夫は黙って口を開け、されるがまま。
終わる頃にはダラダラで、慌てて濯ぐ夫に娘が問う。
「どう?」
「綺麗になった!」
良かったね。
「虫歯治ったし」
凄いね。
「髪増えたし」
うん?
「宝くじ当たった」
怪しいパワーストーンかな?
作品No.299【駄菓子屋の怪異】
路地裏に迷い込み、駄菓子屋に行き着いた。店主らしき老婆と…背後に、柔和な笑みを浮かべる老爺。
「失礼ですが、ご主人は?」
「とっくに死んだよ」
「そうですか。すみません」
「まだ生きてるぞ」
と言いながら、奥からご主人が登場。偽ご主人は…柔和だった笑みが不気味な笑みに変わっていた。
作品No.300【ストーカー】
今日は新築の完成見学会。私は知っている。ここがあの人の家だと。
盗聴器でも仕掛けるつもりじゃないかって?
私はそんな低俗なことはしないわ。家の中も外も隅々まで観察して、同じ家を作るの。
この家は奥さん名義のはずだから、別れたら拾ってあげて、私の家で一緒に住むの。
住み慣れたこの家で。




