作品No.261〜270
作品No.261【デイドリーム】
嫌なことがあった時は、いつも空想の世界に逃げる。
今日も仕事中に白昼夢。嫌いな同僚や上司が次々とゾンビに襲われていく、刺激的なやつだ。
グロテスクな姿や息遣いが、とてもリアルに感じられる。鉄臭いにおいが鼻につき、腕に噛み付かれて痛…え、なにこれ、痛いいたいいだいぃ…!
作品No.262【前世の記憶】
全く似ていないうちの三姉妹。素直な長女と気まぐれな次女、人懐っこい三女と三者三様だ。
ある時長女が、
「私、前はモモって呼ばれてた」
と言い出した。次女と三女が、
「私はルナだった」
「私はピーちゃん!」
と応え、私は言葉を失った。何故なら、昔飼っていた犬、猫、インコの名前だったから。
作品No.263【雪国マウント】
『こちら大雪。10センチ積もった』
『たった10センチで大雪とかw
こっちは50センチ』
『大した事ないな。一晩で100センチ積もったぞ』
『出た、雪国マウント』
『こっちは1センチ積もった。やばい』
『そんなの降ったうちに入らないだろw』
『こちら沖縄ですが』
『それは大雪だわ!』
作品No.264【忌み数】
家賃激安のボロアパートで一人暮らしを始めた。
部屋自体に不便はないが、夜中になると隣がうるさい。抗議にも行ったが、「うちではなく104号室では?」と妙なことを言う。
これは話が通じない奴だとその場は帰ったが、その日の夜中、ついに我慢ならず隣に突撃すると…何故かそこには104号室があった。
作品No.265【雪女峠】
冬になると通れなくなる峠がある。バリケードで塞がれ、「冬季通行止め」の看板が立っている。
無理矢理入ろうとする馬鹿はそういないのだが、一度地元のDQNが侵入し、春に遺体で発見されたことがあった。
事件性はなく死因は凍死。それを聞いて思い出した。この峠がかつて何と呼ばれていたのかを。
作品No.266【仕上げはお母さん】
「終わったー」
「綺麗にできた?」
「うーん、分かんない。見てくれる?」
「そうだねぇ、まだちょっと甘いかな。やっぱり、ママが仕上げしないとダメだね」
「ごめんママ、お願い」
とある殺し屋一家の会話。
作品No.267【インタビュー中にナンパ】
ある番組で、外国人に日本語でインタビューをする企画をやっていた。
「好きな食べ物は何ですか?」
「ニンジンデス」
「へぇ、にんじんですか」
「オサシ二ヨクアウネ」
「オサシ、ですか? お寿司のことでしょうか。にんじんのお寿司は珍しいですね」
「コンドフタリデ、オサシノモウ」
作品No.268【ホワイトクリスマス】
12月24日。孤独なイブ。
いなくなった家族の写真を見ながら食べるケーキは、何故かしょっぱい。
どこへ行ってしまったのか…夜空を眺めて思いを馳せていると、玄関から物音が。慌ててドアを開けると、いなくなったはずのシロがそこにいた。
風呂に入れて、一緒にケーキを食べる。やっぱりしょっぱい。
作品No.269【あの日のクリスマスプレゼント】
パパが事故にあった。もう目覚めないかもしれないんだって。
クリスマスは一緒って言ったのに…私が悪い子だったからなの?
良い子にするから、プレゼントいらないから、パパを返してよ。
そう願ったのが20年前。
今は私も母だ。娘にプレゼントをくれたサンタにお礼を言う。
「ありがとね、お父さん」
作品No.270【売れ残り同士】
12月26日。仕事帰りのスーパーで、売れ残りのケーキが目についた。今日はこれを買って、独り寂しく食べよう。
手を伸ばすと、横から誰かの手。視線を向けると、私が密かに思いを寄せている同僚がそこにいた。
彼は、慌てて手をどけながら、
「良かったら、一緒に食べない?」
と照れくさそうに言った。




