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140字小説  作者: 束田慧
25/30

作品No.241〜250

作品No.241【冷たいのは心か体か】


女手一つで育ててくれた母が死んだ。

涙は出なかった。淡々と葬儀の準備をする俺に、妹は冷たいと言う。

介護の協力を一切しなかったくせに…と思ったが口には出さなかった。これ以降関わることはないし、俺が冷たいのは本当のことだから。

母を看取れてもう心残りはない。これでようやく成仏できる。



作品No.242【二世帯住宅】


土地代が高騰している昨今、二世帯住宅が増えている。特に、地下型の横割りタイプがトレンド。

とある専門家が、その理由について、

「暗くジメジメした場所に親を押し込んで、早死にしてもらおうって魂胆では?うちも地下型ですよ」

と、冗談っぽく笑いながら話したが、目は笑っていなかったという。



作品No.243【リアリティ】


「どうやったら売れますか?」と聞いてきた後輩に、「お前の映像にはリアリティが足りない」と教えてやったことがある。

その後、そいつが撮ったホラー映画が、死体がリアルで恐ろしいと話題になった。

ヒットの秘訣を聞くと、

「とある筋から本物の死体を仕入れました」

と、得意げに言った。



作品No.244【最終便】


ある山間に佇むバス停。

過去に、最終便が崖から転落する事故が起きており、亡くなった親子の霊が出るとの噂がある。

それを聞きつけた心霊マニアの男が雪の日に訪れたが、この日は何も起きず、写真だけ撮って18時の最終便に乗り込んだ。

その数分後、雪で遅れた『本当の』最終便がバス停に到着した。



作品No.245【包み隠さず教えただけなのに…】


わりと仲の良いクラスの女子から恋愛相談をされた。

告白された相手のことをよく知らないから、包み隠さずにそいつのことを教えてほしいというので、悪いところを全部教えてやった。

「あいつ性格悪いから、やめといた方がいいよ。それより…俺なんてどう?」

「え、人の悪口言う人無理」

「えぇ…」



作品No.246【多頭飼育崩壊】


ある女の家で、猫の多頭飼育崩壊が起きていた。

転がる死骸に群がるハエやゴキブリ。残り20匹の猫たちは痩せ細り、大量のノミに寄生され、地獄絵図。ついには、霊能者の知人から、猫の霊が大量にいて危険だと言われる始末。

女は笑い飛ばしたが、翌日、その家から人間はいなくなり、猫は21匹になった。



作品No.247【1129の日】


今朝妻が、「今日は11月29日だし、贅沢してもいい?」と聞いてきたので、承諾した。

仕事を終え、ワクワクしながら帰宅したが、何故か焼き魚のにおい。

「あれ?肉は?」

「何のこと?」

「だって、いい肉の日って…」

「あ、それもあったか。いい服の日ってことで、新しい服買ってきたの」

「えぇ…」



作品No.248【悪さの代償】


子ども達が小さい頃は、悪いことをすると押し入れに閉じ込めたものだ。悪さの度合いで閉じ込める時間を決め、絶対に途中で出さなかった。

この子達のことを思ってやってきたのに…何故、私が閉じ込められているのか。襖の向こうから声がする。

「私達を虐待してきたママは、1日や2日で出られないよ」

 


作品No.249【嘘から出たまこと】


うちの会社に月1で休む人がいる。

子どもが熱を出したと思ったら、次の月には本人が、というのを繰り返している。親戚の訃報もたまに聞くが、恐らく嘘だ。

昨日も欠勤して、「祖父と祖母と伯父と伯母が亡くなり、家族全員発熱」とのこと。

盛り過ぎだろうと思っていたが、今回は全部本当だったらしい。



作品No.250【幽霊危うきに近寄らず】


アパートを転々としている知り合いがいる。理由を聞いてみたが、「霊が…」と言葉を濁していた。

引き寄せやすい体質なのかなと思っていたが、真相は真逆だった。

わざと事故物件を選んでいるが、全く霊に遭遇しないので転々としているのだそうだ。

引き寄せるどころか遠ざける体質なのかもしれない。

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