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140字小説  作者: 束田慧
22/30

作品No.211〜220

作品No.211【流行りの海賊にジョブチェンジ】


山道を歩いていると、山賊に襲われた。10人ほどに取り囲まれたが、長年やってきた空手のお陰で撃退に成功。最後に残ったリーダー格の男に、「山賊なんて格好悪いことはやめろ」と諭すと、「心を入れ替えます、兄貴!」と言って去って行った。

数日後、彼と酒場で再会。今は海賊をやっているらしい。



作品No.212【マッドサイエンティスト】


100年ほど前、国中を恐怖のどん底に陥れた稀代のマッドサイエンティスト。人体実験の犠牲者は数知れず。彼が、捜査の手を掻い潜り最期の拠点としたであろう研究所を発見した。

埃をかぶった研究書――人間と魚の合成と書かれている――が床に散乱し、机の上には比較的綺麗な研究書が置かれている。



作品No.213【移動販売】


「おう、久しぶりだな。元気か」

「もう目がよく見えなくてよ。免許返納したんだ」

「あの山の中じゃ不便だろう」

「たまに息子が買い物連れて行ってくれるし、普段は移動販売が来るから」

「俺のとこも来るわ。サ◯エさんの曲流しながら」

「俺のとこはゴッ◯ファーザーだな」

「ナニ売ってんだそれ」



作品No.214【勇敢な小人】


とある山中に小人の村があった。

山麓に暴食の鬼が住み着き、一人の若者が鬼退治に出かけた。葉っぱの船で川を下り、敵地へと向かう。

ちょうど水浴びをしていた鬼に名乗りを上げると、船ごとつかまれてしまったが、勇敢な小人は怯まなかった。

鬼は知らない。山奥に猛毒の葉が自生していることを。



作品No.215【勝てるわけがない!】


3歳になる我が娘はとにかく強い。同年齢の子と比べて明らかに体格が良く、舐めプすれば普通に力で負けるし、こちらが少し本気を出すと今度は鋭い口撃が飛んてくる。

それでも勝てないとみると泣き出して、最強の召喚獣『ママ』を呼び出すので隙がない。



作品No.216【『道連れだ』】


過労死発生を受け、緊急会議が開かれた。管理職が集められ、若手社員が、文字起こしツールを使って議事録を作成する。

会議はつつがなく進み、直属の上司が勤務実態について説明し始めるが、話の最中に突然苦しみ出した。

騒然とする中、議事録を担当していた社員は、出力された文面を見て息を呑んだ。



作品No.217【物理無効のゴーストタイプ】


プ〜ン…パチン!


「またかよ。これで何匹目だ?」

「お前は今まで潰した蚊の数を覚えているのか?」

「いや、ゼロだけど」

さすが令和の綱吉。

「千匹潰したら、蚊の霊が出るぞ」

刺さない蚊なんて痛くも痒くもない。そう思っていたが、後日、就寝中に蚊の霊の恐ろしさを知ることになる。


プ〜ン



作品No.218【飲んだらアカンやつ】


学校からの帰り道。喉が渇いたので自動販売機でジュースを買うことにした。

こんな時は炭酸に限る。ボタンを押すと、ガラガラと音を立ててコーラが大量に出てきた。

周りに人がいないのを確認してリュックにしまい、1本だけ開けて喉に流し込む。

…なんだこれ。喉が焼けるように痛い。



作品No.219【転生したらクライマックスだった件】


RPGをする度に思っていた。スタート地点の周辺が雑魚敵ばかりなのは都合が良すぎないかと。

たまには主人公も、強敵に囲まれた状態からスタートしてもいいんじゃないか。そう思っていた時期が俺にもありました。

今こうして、実際に魔王城間近の村に転生してみて分かった。

詰んでるわこれ。



作品No.220【路傍の石】


「君にとって俺は路傍の石みたいなものかもしれないけど、俺にはどんな宝石よりも君が輝いて見える。付き合ってほしい」

「えーと…石ころだって価値のある人にはあるんだよ?」

「えっ、じゃあ…」

「勘違いしないで。私は石コレクターだから。悪いけど私にはあなたより路傍の石の方が価値がある」

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