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140字小説  作者: 束田慧
16/30

作品No.151〜160

作品No.151【意外と余裕あるな、パパ】


拠り所を失った仔羊達は身を寄せ合った。お互いの存在を確かめ合うように手を重ねるが、次第に喪失感に苛まれていく。

絶望の刻だ。

飛び散る体液。叫び声の大合唱。

阿鼻叫喚の地獄絵図だ。

宥める声は、彼らには届かない。

そこへ救世主が戻ってきた。

「ただいまー」

「ママー!」



作品No.152【封印魔術】


何やらテーブルの上におもちゃが並べてある。散らかっているというよりは整然と。

「そろそろご飯にするから、片付けて」

「今封印してんの」

「じゃあママ片付けるね」

「ダメー!!」

必死に止める娘を無視しておもちゃをつかむ。持ち上げた瞬間、電気が消え、部屋中の物が動き出した。



作品No.153【子の成長矢の如し】


娘と2人きりのある日。会社から呼び出しがあった。そろそろ昼だが、用意してる暇はないし…仕方ない。

「カップ麺食べといて」

娘は無言で頷いた。

1時間後、帰宅するとカップ麺は減っていなかった。

「ご飯食べてないのか?」

「食べたよ。パパの分も冷蔵庫に」

自分で作ったらしい。成長したなぁ。



作品No.154【幽ズドカー】


マニアに人気の中古車販売店がある。普通の中古車とは別に売られている、店頭に並ばない車。見た目は普通のそれらは、何故か相場より高く設定されている。

その筋のマニアにとっては、他では得難いプレミアムな車ばかりだ。

「いいの入ってる?」

「家族4人、練炭自殺に使われた車がございます」



作品No.155【ガス抜き】


「スプレー缶は、こうやってガスを抜いてから捨てるんだぞ」

「へぇ」

「パパはちょっとトイレ行ってくるからやっといてくれ」

「お腹痛そうだけど大丈夫?」

「たぶんガスが溜まってるだけだと思うが」

「そうなんだ。じゃあこれで…」

「待て。ガス抜きをこっちに向けるな」



作品No.156【猿注意】


「これって猿注意の看板ですよね?なんでこんな住宅街に?」

「この辺も昔は山だったからな。よく猿が出たんだよ。あの頃は規制がなかったから、よく皆で猿狩りをしたもんだ」

「その名残ですか」

「いや、今でも『出る』んだよ」



作品No.157【シュワッとスカッと】


「暑い中ご苦労さん!」

上司が飲み物を持ってきてくれた。

炭酸のジュース2本。俺と先輩の分だ。

「ちょうど水筒の中無くなってたんすよ。あざーす」

当たり前のように2本とも持っていく先輩。

そのうちの1本を水筒に入れて…吹っ飛んだ蓋にアッパーを食らう姿を見て溜飲が下がった。



作品No.158【撫で巫女】


ある神社に『撫で巫女』と呼ばれる巫女がいた。びんずる様よろしく、自分の体の悪い部分と同じ場所を撫でると、病気やケガが治るという話だ。

ある日、遠路遥々やって来た心臓病の男性に、

「そこを撫でるには別途オプション料が掛かります」

と言い放った巫女は、後日、風営法違反で逮捕された。



作品No.159【俺、甲子園で優勝できたら告白するんだ…】


「明日はいよいよ甲子園決勝だね。なんか私まで緊張してきた」

「私は別の意味で緊張してる」

「どうしたの?」

「優勝できたら付き合ってほしいって言われたの」

「えー、だれだれ?」

「バスケ部の先輩」

「甲子園関係ないやーん」



作品No.160【乗り換えからの乗り移り】


浮気相手に乗り換えたせいで自殺したはずの元彼女から着信があった。

「かすみ!?」

『…うん』

「ごめんな」

『いいの。だって…』

その時、物陰から彼女の妹――浮気相手のすみれが飛び出し、冷たい感触が腹を襲う。倒れる俺にすみれの顔をしたナニかは冷たく言い放った。

「これでまた一緒だから」

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