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140字小説  作者: 束田慧
15/30

作品No.141〜150

作品No.141【AIの判断は…】


孤独死を防ぐ為、脳波計測AIが開発された。

脳に電極を埋め脳波を測定。異常を検知するとAIが診断し、必要に応じて通報と家族への通知を行う。

だが、通報が遅れる不具合が続出し、AIに原因を問うと驚愕の回答が返ってきた。

『あのまま逝かせた方が本人も家族も幸せだろうと判断しました』



作品No.142【落書き】


近所に、塀が落書きだらけの家がある。日に日に増えていくが、何故消さないのか気になって訊いてみると、

「私達夫婦にとっては宝物なので…ここ、見てください。これ全部、達也が描いてるんですよ」

と、指差した先に『た⊂や』と書かれていた。

達也君は去年死んだはずでは…?



作品No.143【◯ケトウダラかよ】


川遊びから帰ってくると、息子が絵日記を出しながら訊いてきた。

「あの川、魚いないの?」

「昔はパパでも足届かないくらい深くて大きい魚もいたんだけどな。人の手が加えられて足がつくようになってから全然見ないな」

「ふーん」

興味なさげに相槌を打った息子は、手足が生えた魚を描き始めた。



作品No.144【13階段】


「13階段って知ってる?」

「12段のはずなのに13段になってるってやつ?」

「そうそれ」

「それがどうかしたの?」

「うちの階段も12段なんだけど、たまに13段になるんだよね」

「マジで?大丈夫それ」

「夜中トイレ起きた時とか、普通に踏んづけそうで危ないんだよね」

「…どゆこと?」



作品No.145【それはそれで価値ありそう】


「最近、高級車専門の窃盗団が出てきたから監視カメラ買いたいんだけど、費用がバカにならなくてな」

「ハリボテでもつけとけば?」

「あれ効果あんの?」

「…そもそも、お前のハリボテ高級車を盗む奴いんの?」



作品No.146【潤滑油】


アルコール依存症の友人は、「酒は潤滑油」と言って毎日浴びるように飲んでいた。

それが原因で糖尿病になり、それでも酒を辞められず重症化。そして、片腕を失った。

今では、義手に潤滑油をさしている。



作品No.147【とかげのしっぽ】


「パパ、とかげがいる。捕まえたい!」

「しっぽじゃなくて体をつかむんだぞ」

アドバイス通り、息子がとかげの胴体をつかんで持ち上げると、しっぽがボトリと落ちた。

しばらくウネウネ動いていたが、「このとかげ動かないよ」と息子が本体を差し出してきた瞬間、物凄い早さでしっぽが逃げていった。



作品No.148【トナラー】


「この前トナラーに遭遇しまして」

「へぇ」

「買い物行ったら、駐車場ガラガラなのに隣にとめて、トイレに入っても隣に来て、ちょっと気味悪かったです」

「そういう人いるよな」

「しかも、昨日隣の部屋に引っ越してきたんですよ、その女」

「そこまでいくと偶然とは思…えっ、女!?」



作品No.149【レギュラー満タンで】


「ただいま」

「おかえり。遅かったな」

「それより聞いてよ。軽のおばちゃんが、『軽油満タン』とか言ってて、さすがに笑ったよ」

「そうか…それより、何それ?」

「いや、これじゃなきゃダメだって言うから買いに行ったんだよ。それで遅くなった」

「頼んだのは灯油だぞ。ヒーター燃やす気か」



作品No.150【成仏してクレメンス】


お盆。実家に帰省すると、仏間に祖父母がいた。両親や妻には見えていないようだ。あまりにも自然にいるので驚きはなかったが、

『お前、不倫してるな』

祖父の言葉に、心臓が跳ね上がった。平静を装い無視するが、今度は祖母が言う。

『お供え物は高級すいーつがいいわねぇ』

俺に拒否権はないらしい。

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