作品No.141〜150
作品No.141【AIの判断は…】
孤独死を防ぐ為、脳波計測AIが開発された。
脳に電極を埋め脳波を測定。異常を検知するとAIが診断し、必要に応じて通報と家族への通知を行う。
だが、通報が遅れる不具合が続出し、AIに原因を問うと驚愕の回答が返ってきた。
『あのまま逝かせた方が本人も家族も幸せだろうと判断しました』
作品No.142【落書き】
近所に、塀が落書きだらけの家がある。日に日に増えていくが、何故消さないのか気になって訊いてみると、
「私達夫婦にとっては宝物なので…ここ、見てください。これ全部、達也が描いてるんですよ」
と、指差した先に『た⊂や』と書かれていた。
達也君は去年死んだはずでは…?
作品No.143【◯ケトウダラかよ】
川遊びから帰ってくると、息子が絵日記を出しながら訊いてきた。
「あの川、魚いないの?」
「昔はパパでも足届かないくらい深くて大きい魚もいたんだけどな。人の手が加えられて足がつくようになってから全然見ないな」
「ふーん」
興味なさげに相槌を打った息子は、手足が生えた魚を描き始めた。
作品No.144【13階段】
「13階段って知ってる?」
「12段のはずなのに13段になってるってやつ?」
「そうそれ」
「それがどうかしたの?」
「うちの階段も12段なんだけど、たまに13段になるんだよね」
「マジで?大丈夫それ」
「夜中トイレ起きた時とか、普通に踏んづけそうで危ないんだよね」
「…どゆこと?」
作品No.145【それはそれで価値ありそう】
「最近、高級車専門の窃盗団が出てきたから監視カメラ買いたいんだけど、費用がバカにならなくてな」
「ハリボテでもつけとけば?」
「あれ効果あんの?」
「…そもそも、お前のハリボテ高級車を盗む奴いんの?」
作品No.146【潤滑油】
アルコール依存症の友人は、「酒は潤滑油」と言って毎日浴びるように飲んでいた。
それが原因で糖尿病になり、それでも酒を辞められず重症化。そして、片腕を失った。
今では、義手に潤滑油をさしている。
作品No.147【とかげのしっぽ】
「パパ、とかげがいる。捕まえたい!」
「しっぽじゃなくて体をつかむんだぞ」
アドバイス通り、息子がとかげの胴体をつかんで持ち上げると、しっぽがボトリと落ちた。
しばらくウネウネ動いていたが、「このとかげ動かないよ」と息子が本体を差し出してきた瞬間、物凄い早さでしっぽが逃げていった。
作品No.148【トナラー】
「この前トナラーに遭遇しまして」
「へぇ」
「買い物行ったら、駐車場ガラガラなのに隣にとめて、トイレに入っても隣に来て、ちょっと気味悪かったです」
「そういう人いるよな」
「しかも、昨日隣の部屋に引っ越してきたんですよ、その女」
「そこまでいくと偶然とは思…えっ、女!?」
作品No.149【レギュラー満タンで】
「ただいま」
「おかえり。遅かったな」
「それより聞いてよ。軽のおばちゃんが、『軽油満タン』とか言ってて、さすがに笑ったよ」
「そうか…それより、何それ?」
「いや、これじゃなきゃダメだって言うから買いに行ったんだよ。それで遅くなった」
「頼んだのは灯油だぞ。ヒーター燃やす気か」
作品No.150【成仏してクレメンス】
お盆。実家に帰省すると、仏間に祖父母がいた。両親や妻には見えていないようだ。あまりにも自然にいるので驚きはなかったが、
『お前、不倫してるな』
祖父の言葉に、心臓が跳ね上がった。平静を装い無視するが、今度は祖母が言う。
『お供え物は高級すいーつがいいわねぇ』
俺に拒否権はないらしい。




