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140字小説  作者: 束田慧
12/30

作品No.111〜120

作品No.111【トマトが赤くなると】


俺はトマト農家。種まき中、異世界に召喚された。

トマト栽培のノウハウしかないので農家をやるしかない。持っていた種をまくと、妙な肥料のせいか、トマトの化物が爆誕した。

強くて俺に従順だったので、魔王と戦わせたらあっさり勝利。

『トマトが赤くなると魔王が青くなる』という諺の誕生である。



作品No.112【彼女の心を射止めたのは】


年の近い三兄弟がいた。彼らには幼馴染がいて、誰が彼女と結婚するのか張り合っている。

負けず嫌いの長男と次男は、高層ビルが好きという彼女の為に建築を始めた。

競い合うようにどんどん高くなっていく摩天楼。だが、高くなりすぎて脆くも崩れ去り、砂山に穴を掘っていた三男が彼女の心を射止めた。



作品No.113【日陰】


「今日も暑いな。快晴だし」

「だなぁ…あれ、そこに日陰あんじゃん。入ろっと」

「え?日陰なんてどこに」

「こっちこっち。お前も来い…」

そう言い残して、彼は消えてしまった。まるで、陰の中に吸い込まれるように…

あなたも、不用意に陰に入ってはいけない。その陰、遮蔽物は存在していますか?



作品No.114【家族写真】


夏休み。自由研究の時期だ。

「今年は何作る?」

「パパは陽菜の世話あるから、今年はジジと作る」

「そうか…」

成長を感じられて嬉しいやら寂しいやら。

結局、完成品を見られたのは夏休み最終日。

小さなフォトスタンド――に飾られた家族写真。そこには、出産で命を落とした妻が合成されていた。



作品No.115【意見が合わない上司達】


私の会社には、「だろう」が口癖の適当上司と、「かもしれない」が口癖の臆病上司がいる。彼らより社歴の長い別の上司曰く、入社以来一度も意見が合ったことがないそうだ。

そんな2人も、会社が業績不振に陥ると、「もうダメだろう」「もうダメかもしれない」と初めて意見が合った。皮肉なものだ。



作品No.116【妖怪雨女】


水害が頻発する昨今、ずぶ濡れの女の目撃が相次いでいる。大雨が降る直前に出没し、その地域では必ず被害が出るのだという。

人々は『妖怪雨女』と呼んで恐れた。

ネット上の至る所に目撃情報が寄せられ、そのおかげか逃げ遅れる人は減少傾向にある。

もしかしたら彼女は守り神なのかもしれない。



作品No.117【過保護】


今日は初出勤日。準備していると、

『ハンカチは持った?』

祖母が忘れ物の確認をしてくれた。

『何事も初めが肝心だ』

祖父が心得を教えてくれた。

『辛くなったら無理せずに』

曾祖母が優しく声を掛けてくれた。

『頑張れよ』

曽祖父が照れ臭そうに送り出してくれた。


私の先祖はみんな過保護だ。



作品No.118【マイストロー】


ファストフードでランチ。俺はいつものようにドリンク無し。

いつものようにセットで頼んだ彼女は、珍しくストローを断った。

席につき、バッグから取り出したものをカップに突き刺しながら言う。

「今日は暑いし、一緒に飲もうよ」

二股に分かれたそれを見て体が火照るのは、きっと夏の暑さのせいだ。



作品No.119【ビッグウェーブ】


いつか順風が吹くと信じて頑張ってきた。逆風に耐えて朝凪を待てば、報われる時が来ると。

しかし、風は弱まるどころか次第に荒れていった。さざ波だった俺の心も大荒れだ。

そんな時、同僚が退職代行を使った。これを皮切りに、他の社員も次々と辞めていく。

乗るしかない、このビッグウェーブに。



作品No.120【骨のある女】


生物の授業中、骨格標本を見ながら女生徒達が何やら話している。

「肋骨を抜くダイエットとかあるよね」

「さすがにそこまでしないわー。でもボンキュッボンになりたい。今なんてボンボンボンだもん」

『肉があるだけいいじゃない。私なんてボーンボーンボーンよ』

生徒達は悲鳴を上げた。

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