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140字小説  作者: 束田慧
11/30

作品No.101〜110

作品No.101【異世界旅行】


セレブの間で異世界旅行が流行中だ。冒険者に同行するダンジョン体験ツアーが一番人気。

旅行代金は高額。ギルドがクエストとして発注し、報酬も高い。

低レベル帯のダンジョンが主となり、冒険者には美味しい仕事だが、そのせいで高レベルクエストが放置されつつある。

果たしてこの世界の未来は――



作品No.102【渡る世間は定規ばかり】


「お疲れ様でした」

今日も新人が定時で帰っていく。その姿を見送った上司達が嘆息した。

「今日も定時上がりか」

「カチッとしてますよね。融通が利かないというか」

「杓子定規ってやつだな」

そういうあんたらは手前定規だよ、とは口が裂けても言えなかった。

自分の物差しがブレない彼が羨ましい。



作品No.103【アカシックレコード】


アカシックレコードには、過去から未来まで全ての事象が記録されているという。

その管理者に訊いてみた。

「俺の未来の彼女は誰?」

「それはアカシックレコードにも記録されておらん」

「何でだよ!全部書いてあるんだろ!?」

「存在しない未来など記録されているわけがなかろう」

泣いた。



作品No.104【俺の織姫】


彼女は明るい人だった。夏空で輝くベガ――俺の織姫。

だが、病を患い彼女の目は曇った。一緒に天の川を見れば少しは心が晴れるかとも思ったが、空は雲に覆われている。

沈黙の中、風の音が聞こえ始めた。回復を願った短冊が揺れ、雲が晴れていく。

さやかな光を放つベガを眺めて、彼女は微笑んだ。



作品No.105【呪いの南京錠】


恋人岬には、『愛の南京錠』がたくさんかけられている。

愛を誓う岬で、夜な夜な特別な南京錠を売る男が現れるという噂があった。

気になった一人の男が、夜の岬を訪れた。駐車場にいる怪しい車に声を掛ける。

差し出された南京錠はヒビ割れたハートのデザインで、『破局の南京錠』と書かれていた。



作品No.106【ゾンビに魅入られた男達】


世界を恐怖のどん底に陥れたゾンビウイルス。ばら撒いた研究チームが捕まり、動機を訊かれた。

『ゾンビ映画が好きで』

『嫌いな奴をゾンビにしたくて』

『ゾンビ物の主人公になりたくて』

何れ劣らぬ身勝手さだが、一番こじらせているのは、こいつだろう。

『ゾンビヒロインとイチャイチャしたくて』



作品No.107【窓越しの思慕】


自宅の前で子猫を拾った。弱っていたが、今ではすっかり元気だ。

ただ気になることがある。

ずっと窓の外を眺めていて、隣の親子を見ると寂しそうな声で鳴き出すのだ。

もしや、亡くなった奥さんの生まれ変わりでは…?

突飛な発想かもしれないが、猫を飼う気はないか聞いてみるのもいいかもしれない。



作品No.108【異世界農家】


異世界の農家の中には、魔物を使って作物を育てる過激派がいる。

ジャイアントワームに農地を耕させたり、アーミーフロッグに虫を駆除させたり。

極めつけに、野菜とそっくりな葉のマンドラゴラを植えて野菜泥棒を撃退したり…

だが、誤って自分で抜いてしまう事故が後を絶たないという。



作品No.109【半年後の別れ】


私は母の顔を知らなかった。父と喧嘩して出ていったそうだ。

その父が見知らぬ女性と病院から出たのを目撃し、父にも捨てられると、この時は思った。

半年後、別れは別の形で訪れる。末期癌だった。

葬儀で独り泣く私を抱きしめた、あの時の女性。彼女が母だと気付くのにそう時間は掛からなかった。



作品No.110【最強の線香】


蚊取り線香が売れなくなり、あらゆる吸血動物に効く線香の開発という、冗談みたいなプロジェクトが始まった。

試作品お披露目の日、一人の社員が倒れ、原因不明と思われたが、後に彼が吸血鬼であったことが判明する。

研究チームは、吸血鬼の存在よりも線香が彼らに有効であることに驚いたという。

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