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140字小説  作者: 束田慧
10/30

作品No.91〜100

作品No.91【添削されたラブレター】


彼女にラブレターを渡したら、添削されて返ってきた。小説家を志す俺にとっては二重にショックだ。

この時俺は筆を折りかけたが、5年後…

念願叶って小説家になった。

あの時のラブレターは、部屋に飾ってある。俺の原点であり原典だ。

今も、編集者になった妻に添削してもらっている。



作品No.92【息子の投稿】


『昨日の投稿なに?』

フォロワーからDMが届いた。昨日は何も投稿してないが、何のことだろう。

その旨を伝えると、『すぐ消えたけど18時頃に』と返ってきた。

時間を聞いて、スマホをいじっていた1歳の息子の仕業だ、と思い当たるが、更にこんな返信が。

『「次は殺さないでね」って書いてたよ』



作品No.93【ゴロゴロ】


彼の死を受け入れられず、一晩泣き続けた。涙はとうに枯れ果てたが、水すら喉を通らない。

私の心を映すかのように大雨が降り、雷鳴が鳴り響いていた。

そういえば彼、雷苦手だったっけ。情けない姿を思い出し、フフッと笑みが溢れ、お腹がゴロゴロと鳴り出した。

お腹が空いた。彼の好物を作ろう。



作品No.94【世話焼きの玄人】


ここは初めてか?ならアドバイスだ。

奴ら、あの手この手で取り入ろうとするから気を付けな。

…見ろ。また1人やられちまった。半端な覚悟でこの世界に入っちゃいけねぇ。

俺か?顔を覚えられてるからな。奴ら、俺には尻尾を振らねぇ。

いや待て、あれは新顔…可愛いでちゅね〜。あ〜、ペット欲しい。



作品No.95【世の父親諸君に告ぐ】


もう疲れた。仕事も家事も育児も、何もしない夫も、もうたくさんだ。

こんなに頑張ってるのに、誰も褒めてくれない。そう思うと途端に涙が出てきて…

その時、息子がぱちぱちと手を叩いた。褒めてくれてるのかな。もう少し頑張れそう。

ソファに座って息子の真似してる夫…お前は家事育児しろよ。



作品No.96【暴食の依頼者】


私共は、害獣駆除ギルド。幅広くご依頼を承っております。

本日はネズミ駆除のご依頼です。地下に封じられた魔剣の気に当てられ、暴食の魔物が生まれたとのこと。

魔物は生命力が強く、捕獲後焼却処分する決まりです。お伝えすると、『焼かずに私にくれ。食べるから』とご依頼者様は仰いました。



作品No.97【桜散る】


ある日、日本中の桜が一斉に散った。専門家も首を傾げた怪事件の裏には…


神々の住む『高天原』で、桜の神は嘆いていた。自分の子が受験に失敗してしまったのだ。

「桜散る…」

力なく呟くと、どこからともなく僕がやって来て叫んだ。

「木花咲耶姫様!独り言に言霊を乗せるのはおやめください!」



作品No.98【逆だったかもしれねぇ…】


男は俗世を捨て、山奥で研究に没頭した。長い年月を経て、ついに秘薬が完成。

『あらゆる物質を金に変える薬』と『不老不死の薬』。

興奮した彼は無思慮に、鉄屑に薬をかけ、自らも服用した。

薬は全身を巡り、人型の金塊に成り果てる。

鉄屑に金をも腐食させる微生物が付着していたことは幸か不幸か。



作品No.99【中昔話】


「昔々あるところに」

「昨日も聞いたよ」

「おじいさんとおばあさんが住んでいました」

「一昨日もそれだった」

「おじいさんは山へ芝刈りに」

「もう飽きたって」

「おばあさん――私は、川でお前を拾いました」

「なにそれくわしく」



作品No.100【チョコミン党】


チョコミントをこよなく愛する者達によって、チョコミン党が結成された。

当初は一部の過激派が指示するに留まっていたが、偏見による差別を無くすという公約を掲げ始めてから、支持者が増えている。チョコミントを貶された苦い経験が生きているのだろう。

色物が与党になる日も近いかもしれない。

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