作品No.91〜100
作品No.91【添削されたラブレター】
彼女にラブレターを渡したら、添削されて返ってきた。小説家を志す俺にとっては二重にショックだ。
この時俺は筆を折りかけたが、5年後…
念願叶って小説家になった。
あの時のラブレターは、部屋に飾ってある。俺の原点であり原典だ。
今も、編集者になった妻に添削してもらっている。
作品No.92【息子の投稿】
『昨日の投稿なに?』
フォロワーからDMが届いた。昨日は何も投稿してないが、何のことだろう。
その旨を伝えると、『すぐ消えたけど18時頃に』と返ってきた。
時間を聞いて、スマホをいじっていた1歳の息子の仕業だ、と思い当たるが、更にこんな返信が。
『「次は殺さないでね」って書いてたよ』
作品No.93【ゴロゴロ】
彼の死を受け入れられず、一晩泣き続けた。涙はとうに枯れ果てたが、水すら喉を通らない。
私の心を映すかのように大雨が降り、雷鳴が鳴り響いていた。
そういえば彼、雷苦手だったっけ。情けない姿を思い出し、フフッと笑みが溢れ、お腹がゴロゴロと鳴り出した。
お腹が空いた。彼の好物を作ろう。
作品No.94【世話焼きの玄人】
ここは初めてか?ならアドバイスだ。
奴ら、あの手この手で取り入ろうとするから気を付けな。
…見ろ。また1人やられちまった。半端な覚悟でこの世界に入っちゃいけねぇ。
俺か?顔を覚えられてるからな。奴ら、俺には尻尾を振らねぇ。
いや待て、あれは新顔…可愛いでちゅね〜。あ〜、ペット欲しい。
作品No.95【世の父親諸君に告ぐ】
もう疲れた。仕事も家事も育児も、何もしない夫も、もうたくさんだ。
こんなに頑張ってるのに、誰も褒めてくれない。そう思うと途端に涙が出てきて…
その時、息子がぱちぱちと手を叩いた。褒めてくれてるのかな。もう少し頑張れそう。
ソファに座って息子の真似してる夫…お前は家事育児しろよ。
作品No.96【暴食の依頼者】
私共は、害獣駆除ギルド。幅広くご依頼を承っております。
本日はネズミ駆除のご依頼です。地下に封じられた魔剣の気に当てられ、暴食の魔物が生まれたとのこと。
魔物は生命力が強く、捕獲後焼却処分する決まりです。お伝えすると、『焼かずに私にくれ。食べるから』とご依頼者様は仰いました。
作品No.97【桜散る】
ある日、日本中の桜が一斉に散った。専門家も首を傾げた怪事件の裏には…
神々の住む『高天原』で、桜の神は嘆いていた。自分の子が受験に失敗してしまったのだ。
「桜散る…」
力なく呟くと、どこからともなく僕がやって来て叫んだ。
「木花咲耶姫様!独り言に言霊を乗せるのはおやめください!」
作品No.98【逆だったかもしれねぇ…】
男は俗世を捨て、山奥で研究に没頭した。長い年月を経て、ついに秘薬が完成。
『あらゆる物質を金に変える薬』と『不老不死の薬』。
興奮した彼は無思慮に、鉄屑に薬をかけ、自らも服用した。
薬は全身を巡り、人型の金塊に成り果てる。
鉄屑に金をも腐食させる微生物が付着していたことは幸か不幸か。
作品No.99【中昔話】
「昔々あるところに」
「昨日も聞いたよ」
「おじいさんとおばあさんが住んでいました」
「一昨日もそれだった」
「おじいさんは山へ芝刈りに」
「もう飽きたって」
「おばあさん――私は、川でお前を拾いました」
「なにそれくわしく」
作品No.100【チョコミン党】
チョコミントをこよなく愛する者達によって、チョコミン党が結成された。
当初は一部の過激派が指示するに留まっていたが、偏見による差別を無くすという公約を掲げ始めてから、支持者が増えている。チョコミントを貶された苦い経験が生きているのだろう。
色物が与党になる日も近いかもしれない。




