作品No.1〜10
作品No.1【双子】
一郎君と二郎君は、とてもよく似た双子。見た目からの判別は、家族にしかできない。
ある日、2人は一緒に階段から転げ落ちた。階上にいた両親が慌てて駆け寄り、心配そうに声を掛ける。
「俺は大丈夫」
「僕も」
幸い、2人とも無傷だったが、何故か両親の顔は真っ青になった。
作品No.2【ネズミ捕り】
ある仕事帰りの男が、独りバイクを走らせていた。
この日は運悪くネズミ捕りに引っ掛かり、渋々免許証を見せる。
特に違反はしていないはずだが、何故か切符を切られてしまった。
何が違反なのかと抗議すると、警察は免許証を返しながらこう言った。
「免許取ったの先月でしょ? じゃあ違反だよ」
作品No.3【落とし物】
僕はよく落とし物を拾う。パパが「交番に届ければ、1割もらえるよ」って言ってたけど、面倒だから先にもらってから届けるようにしてるんだ。
先週は、10円玉が10枚入ったサイフを拾ったから、1枚だけもらった。
昨日は、飴玉を拾ったから、ちょっとだけなめておいた。
今日は、迷子を拾った。
作品No.4【土葬】
とある土葬の風習がある村で一人の男が亡くなり、棺に入れられ土の中で深い眠りについた。
だが、数日後に起きた未曾有の大水害によって、大量の土砂とともに流されてしまう。
発見されたのは一週間後。幸いにも蓋は閉じたままになっており、棺は中も外も傷だらけだったが、遺体は無事だったそうだ。
作品No.5【フィギュア】
「お前、それ…」
「ああ、これ? 俺の好きなアニメのフィギュアなんだけど、知ってる?」
「いや、アニメ見ないし。お前にそんな趣味があるとは」
「別にいいだろ」
「まあ、他人の趣味をとやかく言う気もないが…現実との区別はちゃんとしとけよ。さすがに中学生は犯罪──」
「えっ?」
「あっ…」
作品No.6【ペットと探検】
今日は、ペットのポチと一緒に山に探検しに来た。
飲み物とおやつも持ってきたし、帰り道の目印用に、食パンの準備もしてある。
さあ行こう、ポチ。
…ふぅ、疲れてきたな。ここらで休憩しようか、ポチ。
お前のおやつも持ってきたよ、ほら。
え?いらないの?
いつもは食いしん坊なのに珍しいね。
作品No.7【日本人形】
先日亡くなったおばあちゃんの形見に、日本人形をもらった。
気味の悪い人形だけど、部屋の西側に置くと縁起がいいらしいので、とりあえず置いてみることにした。
翌朝、目を覚ました私は、いきなり人形と目が合ってしまった。髪が伸びたり目から血を流したりはしてないみたいだけど、逆光で顔が怖い。
作品No.8【くしゃみ】
「くしゅっ、くしゅっ、くしゅっ」
「誰かに噂されてる?」
「1回だと褒められてて、2回だと憎まれてて、3回だと…何?」
「惚れられてる、かな?」
「えー、ちょっと、だれー?」
「A君じゃない? あんたのこと超見てるし」
「は?キモッ…」
その時、草むらからくしゃみが2回聞こえた。
作品No.9【ペンダント】
ペンダントをなくした。
彼は新しいのを買おうと言ったけど…亡き母の写真が入ってると知らないから仕方がない。
そんな彼が突然、交番で聞こうと言うので、ダメ元で行ってみたら本当にあってビックリ。泣きそうなのをずっと我慢してたのに…彼は言った。
「我慢しなくていい。大切なロケットだろ?」
作品No.10【タイムマシン】
ついにタイムマシンが完成した。
腕時計型のこの装置で、好きな時代、好きな座標に飛ぶことができる。
手始めに、先日恐竜の化石が発見された場所に飛んでみることにした。
座標を合わせて装置を起動すると、次の瞬間、辺りは真っ暗。身動きも取れなくなってしまった。
一体どこに飛ばされたのだろう。