少年の夢
久しぶりすぎて意味のわからない事になっているのは…まぁいつも通りですが。
ちょこちょこ変なので、それでも気にならない心のひろい方のみ…
「東堂、笑わないで聞いてくれないか」
「あー?なんだよ加藤。そんな改まってキモチワルイな」
「最後のは余計だ。最後のは。そして失礼だなお前」
時は昼。所は屋上。
ちなみにさきほどまでグラウンドから聞こえていた騒ぎ声はなくなり、代わりに笛の音などが響く。
教室棟から聞こえていた話声は静まり、今はペンを動かす音か教師たちの声が聞こえていた。
つまり、現在二人は絶賛授業サボり中である。
あまり綺麗ともいえない屋上の真ん中らへんに二人で寝転がり、春という素晴らしい気候の恩恵を受けながら、二人はただ何をするでもなくボーっと空を見上げていた。
「で、どうなんだ?」
「あぁ。そうだったな。しょうがねェ、聞いてやるよ」
「お前、ほんっといつでも上から目線だな」
「まぁな。実際おれはお前より上だし?」
「はは、いつか刺されてしまえ」
「はは、断る」
先ほどまで、ほとんど寝ているように静かだった二人だったが、不意に話しだした加藤の言葉によって、あたりがすこし騒がしくなった。
「で、なんだったか。笑わないでって、なんの話だ?」
「あー、クソ、おまえのせいで覚悟が揺らいじまった」
「そんな覚悟、倒しちまえ。お前の場合もう一度再建した方がいいだろ」
「なんだよそれ。人をボロビルみてェに言うな」
「実際そうだろ。ちなみに俺のは高級マンションだ」
「手抜き工事のか?」
「まさか。完璧に整備されている安心できるマンションさ」
「かわりに幽霊とか、いわくつきのスポットになりそうだよな。お前の場合」
加藤がそう笑いながら言い放つと、東堂はフンッと鼻でそれを笑い飛ばし、最初の話の続きを促す。
その言葉に、加藤は少々面食らいつつも、一度溜息をつくと、再びポツリポツリと語りだした
「あーそうだったな。俺さ、ちいせぇころ…」
「今もちいせぇぞ。いつのころだ」
「お前は黙って聞けないのか。おれがまだガキの頃だよ!!」
「はー。これだからコーヒーも飲めないお子ちゃまは困る。ガキっつって、まだガキだろ」
「あーあー、わかったよ!まだ、小学生の時の話だ!!」
「はっはっは、よくできたな。お利口お利口」
「俺、時々なんでお前みたいのとつきあってんのかわからなくなる…」
「心外だな。おれは付き合うならもうちょっと可愛げのある女の子がいい」
「ほんと、腹立つな。階段からいっぺん落ちろ」
「はは、確かに君より長い脚を持っているから、もしかしたら踏み外すことがあるかもな」
…かのように見えたが、話は再び脱線し、あたりは先ほどよりも騒がしくなる。
加藤は、本気で話をするのをやめようかと思い始めたころ、東堂がふっと先ほどとはうってかわって柔らかい笑みで「悪かったよ」と素直に謝ったのを聞いて機嫌も少しは治ってくる。
「おにーさんに話したい事があったんだよな。次は真面目に聞いてやるよ」
「今まで真面目に聞いてなかったという事実は聞き逃せねェな。今度ジュースおごれ」
「お前がこの話の相談料として缶コーヒーおごってくれたらな」
「なんだよソレ。プラマイ0じゃねェか」
そういって、加藤は今まで寝転がしていた身を起こし、隣で未だくつろぐ東堂の方を見やる。
すると東堂の方は、さすがにバレたか。と声を殺そうともせずに笑う。
そんな東堂の姿を見て、少々ふくれっ面になる加藤だったが、もう今更のことだったりするので、もう気にしないことにして続きを話し始めた。
「おれさ、昔、鳥になりてぇと思ってたんだ」
「鳥?空でも飛びたいっていう奴か?だったら、今でも十分跳べるじゃねぇか。奴らにはやわらかい羽があるが、おれらには鉄の翼がある」
「ちげェよ。そうじゃなくて、自分の羽で、空を自由に飛び回りたかったんだと思う」
「ハッ随分なロマンチストだな。で、今もその夢は健在ってか?」
「さァな。今の今まで忘れちまってたから」
「…は?」
突然話しだすからには、何か特別な理由があって、思い出に残っているものを話しているものだと思っていた東堂は、その加藤の言葉に拍子抜けする。
おもわず出た間抜けな声に、加藤は先ほどのやりとりで負け続きだったせいもあり、どこか勝ち誇ったような顔をしてニッと笑う。
「さっき、空を見て思いだしたんだ。何にも縛られずに生きていける、鳥がうらやましいな。って」
「だが、鳥になったら俺等ができることができなくなる。一生その羽根を使って空を飛び続けなきゃなんねェ」
「それでも良いじゃねェか。自分の手で、大空を飛びまわれんなら、おれはそれでも良い」
そう言うと、先ほどまで背の後ろについて体重を預けていたその手をすっと空へ突き出して、何かをつかむようなしぐさをする。
そのまま自分の目の前までもってくると、ゆっくりと手を開く。しかし、そこには当然のようになにもなかった。
その事に少し寂しそうな表情を浮かべる。
「それに、考えても見ろよ。あの空を、自由に飛ぶことが出来るんだぜ。地に這う事しかできねェ俺らより、随分凄い事だとおもわねェか?」
「おーおー随分鳥の肩もつな。俺等は芋虫扱いかよ」
「ンなこたねェって。ただ、純粋に思った事を口にしただけだ」
「…純粋さは時に悪意よりも狂気となるってな」
「なんだそれ」
「なんとなく思った事だ。気にすんな」
「そうか?」
「そうだ」
そこで一度会話は途切れ、加藤は再び空を見ると、
「鳥みてぇに、なりたかったんだ」
そうぽつりと零した。
それをバッチリ聞き取った東堂は、しばらく何かを考えるような顔をして、それから足を振り上げその反動で上半身を起こす。
一向に此方を見ようともしない加藤の方へ向き直ると、東堂は加藤のデコに迷わずデコピンをくらわせ、その突然の行動に驚いている加藤へ、言い聞かせるように言った。
「なら、おれが。お前を鳥みてぇにしてやるよ」
「…は?」
先ほどとまったく同じような声を、今度は加藤が出した。
意味のわからない。という顔を前面に押し出す加藤をそのままスル―して、東堂は言葉を紡ぐ。
「お前が、鳥みてェフカフカになりてェッつーなら、羽毛でもなんでもかき集めてやる」
「いや、別に鳥のコスプレがしたいわけじゃなくてな…?」
「色んなとこに行きたいなら、今は無理だが連れてってやる。空を飛びたいなら飛行機にでも乗せてやるしヘリコプターでもなんでも乗せてやる。奴らが出来ておれができねェなんてことはない。全部叶えてやるよ。この俺が」
「おい、東堂?おれは、別に…」
「なんたっておれはお前のダチだからな。しょうがねェ」
「…」
「次、他になんかあったら俺に言え。おれは有言実行する男だ!」
急に立ち上がってそう断言する東堂に、加藤はポカンとする。
が、ふっと笑い、次の瞬間には腹を抱えて大爆笑へと変わっていた。
「おい、何がおかしい」
「ははっ!!よく言うぜ!よく夏休みの宿題を初めの段階で終わらせるっつー無謀な企画だして、結局最後にやるくせに!!」
「フン!アレは実行するに足りないものだったからな。それに夏休みが終わるまでには終わらせたんだ。文句はねェだろ」
「あっはっはっは!!」
「笑え笑え。おれはやる時はやる男だからな。いずれお前がおれに土下座する日も近いだろうよ!」
「なんで、土下座なんだよ」
「『あの時、笑ってごめんなさい。確かに東堂様はやる男です』ってお前が言うからに決まってんだろ!」
「へいへい、じゃぁ楽しみにして待っててやるよ。東堂様?」
「ふっ後でほえずらかきやがれ」
「そりゃ違うだろ!」
そうして、その場に二人の笑い声が木霊する。
と、同時にチャイムが鳴り響き、授業の終わりを知らせた。
二人は未だこみあげてくる笑みに、しばらくその場で過ごし、再び授業開始のチャイムを聞いて、次の時間もそこで過ごすことにした。
次は、夢の事ではなく、将来の事を話しながら。
それは、どこかの屋上で結ばれた、小さな約束
ほらやっぱり変だった!
昨日の夜にポツンと思いついた作品です。突飛過ぎてオチがどうしようもなかった。きっとそのうち消えるか内容がガラリと変わるんじゃないかな!
それと、一応つながりのある話もあるので、近々あげようと思ってたり思ってなかったりしてます。