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〜ヒロインに転生した私は推し悪役令嬢の取り巻きになり幸せのお手伝いをする事を誓います!〜

作者: 猫山 鈴

 社交界の事とか、貴族の事とかおかしいとこあるかもです。すみません。

 ここは現代電車の中、学校帰りなのだろうか、高校の制服を着た少女が熱心にスマホを操作している。

 「はぁ…美しい…めっちゃ美しい…シェイラ様…」

 少女が夢中になってるのは恋愛ゲーム「真実の愛を君に捧げる」略してシンキミである。シンキミとは異世界の学園を舞台にした恋愛ゲーム。ヒロインは平民の少女である。

 

 「またそれしてんの?本当好きだよね」

 と友人が話しかけてきた。

 「つーかさ?普通攻略対象を推しにするくない?シェイラって悪役令嬢じゃん?」

 そう、少女が推してるのは「シェイラ・フレンドリヒ」。シンキミを代表する悪役令嬢である。


 「あたしならそのシェイラの婚約者だった王子様が好きかな?イケメンだしさ、身分差のある恋って憧れるじゃん?」

 と友人は同意を求めるように少女を見やる。


 「うーん。どうだろうね。そりゃあ…」

ドンという大きい音がいきなり響き出す。人々の叫び声が聞こえ、耳障りなキキーっという高い音が聞こえる。すると少女の体は衝撃で浮き上がり、勢い良く頭を打ってしまった。




 「起きなさい?リアラ?今日から学校でしょ?」

 うーんと少女は目を開ける。すると中には見慣れない部屋にいた。そして目の前には見知らぬ女性がいる。

 「あれ?ここどこ?いや…でもなんか既視感が…」

 「何寝ぼけてんの?早く学校の準備しなさい!もう少しでお迎えが来るんだから!」


 そういうと女性はサッサと部屋から出ていった。少女は取り敢えず頭の中を整理した。昨日は確か友人と電車で帰宅していたのだ。しかしその後…すると体に寒気が走る。恐らく電車は脱線したのだ。そして自分は…

 「そう言えばこの景色…シンキミの冒頭に出てたヒロインの部屋に似てるような…」

しかも先程の女性は自身の事をヒロインのデフォルトネームであるリアラと呼んでいた。まさか…そう思い気になって鏡を覗く。


 「えっ?マジで…」

 そこにはヒロインの顔が写っていた。スチルの方に描かれていたあの顔である。薄桃色のふわふわの長い髪に、大きな垂れ目、瞳の色はエメラルドグリーンである。可愛い系の美少女だ。すると少女改めてリアラは叫んだ。

 「ちくしょーーーー!!」


 こういった場合、恋愛ゲームの世界に転生したら普通悪役令嬢に転生するもんでしょーが!どうせ転生するならシェイラになりたかった!

 少女は地団駄を踏んだ。しかしボロボロの床で行ったせいか響いていたらしく、

 「ちょっと!うっさいわよ!さっさと準備おし!」

 「うっさいわ!それどころじゃ無いんだよ!」


 そう言い返すと女性は驚愕した顔でリアラを見つめる。そう言えばヒロインの設定は大人しくて引っ込み思案。親戚に引き取られたが冷遇されてる設定なのである。


 あっ!やっちまったなぁ。しかし同時にある思惑が浮かんだ。もしもだ。学園で上手いことシェイラと出会えたら友人に悪くても取り巻きになれるんじゃね?と、

 「ふふふ♡ふふふ♡」

 「えっ?怖い…」

 ちなみに急に笑い出したリアラに女性は大変ビビっていた。

 

 「ふふふ♡シェイラ様待っててください♡」

リアラは迎えにきた馬車に揺られながら、上機嫌にこれからの学園生活に思いを馳せていた。実はというとリアラはヒロインがあまり好きではないのである。


 そもそもヒロインは平民なのだ。現実でもそうであるが、普通に考えて平民が貴族としかも下手したらハーレムを築くなど無理がある。思いっきり不敬である。しかも中には婚約者のいる攻略対象もいるのだ。いやあかんやろ!普通に考えて!当初は自分も身分違いの恋とやらに興味があったが、プレイしてみて逆に冷めてしまった。


 「てかシェイラ様って別に変なこと言ってなくね?」

 シェイラのやっていた事を思い出す。精々彼女が行ったのは婚約者のいる殿方に近づきすぎる、自分より上の階級の者には話しかけられてから話すこと。などなどの注意である。


 だがヒロインは、階級など関係なく皆んな仲良くした方がいい、婚約者がいる事は分かってるし彼とは友人だ。などなど、頭が花畑のような言い訳が羅列されている。しかも攻略対象達も彼女の意見に賛成し出したり、友人だと言われ悲しそうな顔をしたりという、うんごめんやっぱこのストーリー苦手じゃ。

 「学園に到着致しました。ようこそ。"グラスフィールド学園"へ!」

 そして学園に到着し、リアラは内心ウキウキしながら学園への一歩を踏み出したのだった。


 「うわぁ…めっちゃ人いるんですけど…」

 兎も角周りは人だらけである。だがここで間違ってはいけないのが入学式には絶対遅刻しない!時間厳守である。

 ヒロインが攻略対象と出会うのは学園で道に迷った事によるハプニングである。んで勿論入学式は遅刻、問題視されてしまい攻略対象者達に興味を抱かれるのだ。


 「私に必要なのは恋じゃねー!推しとの触れ合いじゃ!」

そう自分に喝を入れ、リアラはスタスタと他の生徒の向かう入学式会場へと向かう。案内看板もきちんと立っていた。

 「いやてかヒロインどうやって迷ったん?どんだけ方向音痴なんだよ?」


 そして入学式には無事間に合った。そういえば最初に出会う攻略対象はどうなったんだろ?

 「新入生挨拶、新入生代表"シェイラ・フレンドリヒ"」

 「はい」

 凛とした美しい声が答える。名を呼ばれた少女、シェイラが前に出る。そして美しいカーテシーを行い、顔を上げる。


 (やばい…生の推しやっばい…)


 シェイラ・フレンドリヒはフレンドリヒ公爵家の娘である、公爵令嬢だ。全体的にスラッとした、だけど貧相ではない身体つきをしており制服を上品に着こなしている。

 顔は小さく、肌も透き通るかの様な白さを誇る。吊り目がちな大きな目。瞳の色はアメジストを嵌め込んだかの様な美しい紫の瞳。髪は銀髪でありサラサラロングのストレートヘア。

 そして美しいが目立ちすぎない薔薇の形をした紫色のバレッタを付けている。


 え?リアラの時より見た目の説明長いって?当たり前だ!推しだぞ?

 そしてヒロイン!何遅刻しとったんじゃ我!リアラは更にヒロインへの嫌悪感を募らせていた。


 「よっしゃぁ!シェイラ様と同じクラスだ!」

まぁ、シェイラと同じクラスになるのは予習済みだが…

 「わたくしがどうか致しましたの?」

 「ひょわ!?」

 なんと後ろに神がいたのだ!

 「もっ申し訳ありませんでした!シェイラ様!とんだご無礼を!」

 そう言ってリアラは見よう見まねのカーテシーを行う。

 「そんなに畏まらなくで結構ですわよ?それよりわたくしに用事があったのではなくて?」

 「いえ!わっ私そのシェイラ様と同じクラスになれたのが嬉しくて…」

 「え?」

 「わわ!私ったらとんだ無礼を…でっでも本心です!シェイラ様の挨拶素晴らしかったです!それに挨拶をなさったということは首席で合格なさったのでしょ?並大抵の努力では…」

 そこまで言ってハッとなる。やばい引かれたか?そう思いチラッとシェイラを見ると、真っ白な頬を薔薇色に染めており、手で顔を隠そうとしている。

 「あっあなた変わったお方ですわね?そっそんなに褒めないで下さいまし!貴族令嬢として当たり前ですわ!」


 やっべぇ…私の推しめっちゃかわええ…

「まぁでも…貴方がどうしてもというなら…ゆっ友人にしてあげなくもないですわ!」

 「えっ!本当ですか!ぜひ!あっ私はリアラ・ハートと申します!」

 「ちょ!手を握らないで下さいませんか!?いっいくら友人でも距離感ってものがあるでしょ!?」

 その日リアラは神と友人になった。


 学園生活最高だわ…そうリアラは思っていた。だが奴が現れた。

 「君がシェイラと仲良くしているというリアラ嬢かな?初めまして。アルバ・レイ・フィールドと申します。以後お見知り置きを」

 そう奴はアルバ、シンキミの代表たる攻略対象にしてこの国フィールド王国の第一王子だ。そしてシェイラの婚約者である。するとニコニコした顔でリアラを見つめている。

 「どうしたんだい?そんなに畏まらないでくれたまえ」


うるせえ…お前には婚約者おるやろがい…見た目だけは確かに一級品だ。キラキラ光る金髪にサファイアを嵌め込んだような青い瞳。ザ・王子様だ。えっ?シェイラの見た目の説明より短いってあたり前だ。考えるな、感じろ。

 「私は次期国王として市井の生活を知りたいんだ…良かったら君の話を聞かせてはくれないかな?」

 「申し訳ありませんが殿下…私では少々役者不足かと…他の方をお探しになられた方が…」

 「いや…君がいいんだ!頼む!少し教えてくれれば大丈夫だから!」

 うるせぇ離せや!そう言いたいが相手は腐っても第一王子である逆らうのよくない。諦めてリアラはその申し出に応じたが


 「君の様な人は初めてだ…実は私には婚約者がいて」

 「シェイラ様ですよね?存じております。」

 「そうか!知っていたか!だが君も大変だろう?あの女の取り巻きをするのは!」

 「は?」

  えっ?何言ってんのこいつ?そうリアラは本気で思った。というよりただ自分はこの馬鹿王子の話に相槌を打ってただけだ。会話?したくないのでしてませんよ?なのに気に入られた。マジでなんだこいつ?


 「あの女はいつも私を立てずいつも先を行くのだ。面白くない。」

 「シェイラ様は努力家ですもの。さすが未来の国母ですわ。」

 「…あの女は私のすることなすことにケチをつける。」

 「シェイラ様なりに殿下を思って注意してくださってるのでしょう?ふふふ良い奥方になられそうですね?」

 「……あっあの女は私が他の女性と交流すると注意してくるんだ。」

 「あらぁそうですか?ですがお二人は婚約者ですもの、そういうこともありますわよね。」

 「…………失礼する」


 そう言って無表情でさっさと退散した殿下。よっしゃあ!勝ったぜ!ひゃっほーい!取り巻き上等だ!分かってるし!私なんかシェイラ様にまとわりつくその他大勢と大して変わらんモブだ!それでいい!が、私の目の前で推しの悪口を言う奴には黙っておけるわけがない!たとえ私がヒロイン改めてモブでもな!

 「ふふん♩ざまぁみろ!」

 そんなリアラの様子を木の影から見守る者がいた。


 「リアラ・ハート!貴様を独房送りの刑に処す!」

 今日は新入生歓迎会のパーティーだ。しかしあの馬鹿がそれをぶち壊しやがったのである。

 「貴様は先日、この国の第一王子である私を侮辱した!未来の国王である私に向かってのその行為を国家反逆罪とみなす」

 はぁ!?何言ってんのこいつ!?

 「お待ちください!殿下!私は殿下を侮辱などしておりません!」

 「えーい!黙れ黙れ!これだから平民は嫌なのだ!貴様は、ただ私の話を聞いていれば良いものを!まるで私が間違いを犯したかの様な言い分で話していたではないか!」

 いや間違いしかねーわ!馬鹿王子! すると


 「恐れ多くも殿下。発言をお許しくださいませ。」

会場に凛とした美しい声が響いた。シェイラである。薄い水色の派手すぎずそれでありながら上品さを失わないドレスを着用している。


 会場は静まりかえり、周囲は彼女に釘付けである。

 「私の友人が何か無礼を働きましたの?」

 するとアルバは怒り顔で怒鳴り出した

 「無礼もなにも問題がありすぎる。いやここを借りて貴様にも言ってやりたいことが山ほどある!まず貴様のその態度だ!いつもいつも将来の夫である俺を立てずに俺より目立つ!夫を立てない妻などあり得ぬだろうが!」

シェイラは涼しい顔をしている。


 「私は未来の国母として研鑽を重ねているに過ぎませんわ?そんなことよりも殿下?貴方の方こそ学園の女生徒に手を出しているという噂がたっておりますわよ?この国の次期国王としての自覚を…」

 「うるさい!貴様のその説教も聞き飽きた!こんな冷血女が私の将来の妻だと!ふざけるな!俺を縛りつけおって!」

 「では殿下は自由をお望みなのですね?」

「ああ!勿論だ!」

 「ならば婚約解消してくださいませ」

 すると会場がざわつき始めた。

 「ふん!貴様に非があるのに婚約解消だと?ふざけるな!私は貴様との婚約を破棄させてもらう!」

「あら?よろしいのですか?後で後悔なさっても知りませんわよ?」

 「うるさい!後で謝罪に来ようともう遅い!精々傷物の人生を歩め!この冷血女めが!」

 余裕の表情を浮かべるシェイラと興奮し真っ赤な顔のアルバ

 「まじか…」

まさかの自分とアルバくっついてないのに婚約破棄エンドである。


 しかし事態はそう悪くならなかった。まずアルバの方は親の同意を得ずに、王妃のお気に入りだったシェイラを婚約破棄したこと、理由も明らかに非があるのはアルバだというのに認めず、全てシェイラ、ついでにリアラのせいにし始め、国王陛下からの怒りを買い王位継承権を剥奪された。


 一方シェイラはフリーになったことで婚約して欲しいという貴族が大勢現れた。元々優秀な上に公爵家の令嬢であるシェイラは社交界でも人気を獲得していたのだ。

 シェイラはその後、他の男性と婚約した。その男性はきちんとまともな人物である様で仲睦まじく、最終的には正式に夫婦となった。


 「奥様、紅茶をお持ちしました。」

「あら?もうそんな時間なの?リアラ」

リアラは学園卒業後、シェイラの元でメイドとして従事していた。リアラの家庭環境などを省みてシェイラが紹介してくれたのである。

 「あとリアラ?言ったでしょ?二人の時はわたくしの事は、シェイラと呼びなさいって!」

 「うぅ…でもいまだに緊張するんですよ?シェイラ?」

そう良いながらも呼び方を変えたリアラに笑みをこぼすシェイラ。


 シェイラは生まれた時からアルバとの婚約が結ばれていた。

 しかしアルバはシェイラの見た目は好みではあったらしいが性格が好みではなかったらしく、シェイラを雑に扱った。


 プレゼントも贈らない、二人で出掛ける日もボイコットされる。発言を無視される。日常茶飯事である。一番最悪なのが、ある日アルバの部屋に訪れた時にいきなり押し倒された時である。あの時は抵抗し王妃の元へ逃げ込んだ。しかしアルバはそれを逆恨みし始めた。


 それにプラスしてきつめの見た目や家柄、第一王子の婚約者だということで嫉妬されたり、怖がられたりで友人もできた試しがない。

 そんな時だ、自分と同じクラスになれたことを純粋に喜んでくれた少女がいた。シェイラは彼女と友人になったことで救われた。彼女がアルバに狙われた際も淡々とかわしながら、シェイラに対する批判にも同意などせず、受け流し退散させた。


 そしてその後も彼女はシェイラと行動を共にして共に笑ってくれた。だから許せなかった。大切な友人を傷つけようとする婚約者が…だからこそシェイラはあの日前に出てリアラを守ろうとした。だがあれが無ければ今の穏やかな日常はないだろうと思うとリアラに感謝してもしきれない。


 「ふふふ!シェイラ!私はただのその…取り巻きかもしれないけどね?これだけは言わせて!私!リアラはこれから、ずっとシェイラを幸せにするお手伝いをすると誓います!」

とシュバっと手を上げて宣言するリアラにシェイラは苦笑し、

 「もうすでに幸せだし…取り巻きじゃなくて友人なんだけど」


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