閻魔様、罪人が作った料理を食べる(その後、料理人として働かせるまで)
勢いで書いたので、めちゃくちゃ拙い文章となっていますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
※内容は、ほぼあらすじの通りです。
「あぁーーーー!!!!!」
真っ暗な空を眺めていると、どこからか悲鳴が聞こえる。私は、またか、と思いながら黒い花が咲き乱れる高原に寝転がる。
ここは、『黄泉の国』、生前、悪事を働いたものが、死後、落ちてくる世界だ。
先ほどの悲鳴は、ここに落ちたものに対する罰を私の部下が与えた故に、生まれたものだ。やりすぎないように言っとかないと。壊れて、判決をまともにすすめなくなって困るのは嫌だし。
すると、
「大王様!お時間、よろしいでしょうか!」
「ん、どうかした?」
私、閻魔大王のもとに部下の一人が声をかけてきた。
「はっ!先ほど落ちてきた罪人なのですが、閻魔様自ら対処するべき者と判断し、お伝えしにまいりました!」
「私自ら、とは?」
本来、『黄泉の国』に落ちてきたものに対しては、あらかじめ、生前の経歴から、どのような罰を与えるか協議し、罰を与え、その後の反応にて、閻魔大王が判決を下す、というのが一般的な流れだ。
例えば、生前、放火によって、殺人を犯した者に対しては、長時間、炎で炙り続けるという罰を与え、反省したかを問い、返答によって、減刑、もしくは何かしらの罰に置き換える、といった風に進める。もし、そこで閻魔に反抗しようものなら、より厳しい罰が与えられ、想像を超える苦しみを味わうことになる。
しかし、稀に、最初から私が罰を与えるほどの罪を犯した者が現れる。そうした場合、私自ら、経歴と動機から、判決を下し、罰を与えるのだ。
「はっ!その者、生前、多くの者の食事に毒を混ぜ、殺しております!」
「すぐにつれてこい」
「っ!かしこまりました!」
自分でも驚くほどの、凍えた声が出ました。あの部下にはあとで謝罪をしておきましょう。
しかし、食事に毒、ですか。この『黄泉の国』にて、それは最大の罰にほかなりません。『黄泉の国』はいわば、地獄。そのため、まともな食事、ましては食材が手に入らないのです。だからこそ、私は、この『黄泉の国』にて食事は何より大事にするものとしており、部下にも出来る限り、美味しいものを与えるようにしています。
私が内なる暗い炎を燃やしていると、足音が聞こえてきました。どうやら、罪人が到着したようです。
私の目の前に現れたのは、まだ幼さが残る少年でした。年は、15ですか。まぁ、この場で、年齢など関係ありませんが、少し悲しくはあります。こんなに幼い子が、食事に毒を盛ったのですか、人間の世界は、もしかすると、ここより荒れているのかもしれませんね。
私は、手錠をかけられ、座り込んでいる少年に問いかけます。
「名を申せ」
「......信」
「信、というのか。そなたは、多くの者の食事に毒を盛ったとあるが、間違いないのだな」
「......そうだよ」
信の返答に、胸が痛くなります。私は思わず聞いてしまいます。
「なぜ、そのようなことをしたのだ?」
「別に、あんたには関係ないだろ」
「いいから申せ、そなたのような幼子が毒を盛る、何かしら訳はあるのだろう?」
「・・・・・・」
私は黙って、返答を待ちます。そして、
「......あいつらにムカついたからだ」
「ほう、なぜ?」
「,,,,,,俺たちの、努力の結晶を馬鹿にされたからだ」
「努力の結晶?」
「これだよ」
すると、信は懐から何かを取りだす。藁に包まれており、中は分からない。
「それは?」
「正式な名称はないけど、俺たちは『ソーセージ』って呼んでいる」
「ソーセージ?」
約千年、ここで様々な罪人を裁き、その中には料理人もいたが、こんな料理は見たことがない。形は、野菜のきゅうりに近いが、おそらく、信が独自に作ったものだろう。
「あぁ、魚肉を練って作ったものだ」
「魚肉?魚からこんなものを作れるのかい?」
「相当苦労したがな」
信は苦笑いをしながら、『ソーセージ』を私に差し出してきた。
「食べてみるか?」
「え?」
「いや、気になっているみたいだから」
「う、嘘っ!顔に出てた!?」
「はっきりと、な」
最悪だ......!私、これでも閻魔なのに!
け、けど、確かに気になる。でも、食事に毒を盛るような奴だし!どうしよう......
すると、信が困った顔で話しかけてきた。
「やっぱり、毒を盛るような奴の食べ物は信用できないか?」
「い、いやっ!そんなことはないぞ!」
意を決した私は、『ソーセージ』を口に含む。こ、これは......!
「美味い!こんな味は初めてだぞ!」
「そ、そうか!や、やっぱり美味いか!」
「うむ!これは私が今まで食べてきた中で、一二を争うぐらいの美味さだ!」
「よ、よかった......!」
そう言いながら、なんと信が涙を流し始めた。
「な、なぜ泣くのじゃ?」
「それ、俺が生きてた頃、仲間と何年もかけて作りあげたものなんだよ......!だから、誰かに認められたのが、嬉しくて......!」
「そうなのか......」
やはり、不思議だ。こんなにも食に対して誠実な者が、毒を盛ったとは信じられない。だから、私は信に尋ねた。
「信、君は、食事に毒を盛ったんだよね?」
「......そうだけど、それがどうした」
「どうして、そんなことをしたんだ?どうしても、君の食に対する態度からは、毒を盛るなんて想像もできないんだ」
「......大した理由じゃねぇよ」
すると、信は生前のことを、話し始めた。
俺は、海に近い小さな町に住んでいたんだ。親父は昔から続く飲食店でオーナーをしていて、お袋はその手伝いをしていた。成長するにつれて、俺も店の手伝いをするようになった。
そして、俺が十二になったとき、親父から「今度、新作の料理を出す予定なのだが、そのメニューをお前に任せる」って言われたんだ。
さすがに驚いたよ。まだ、子供と呼べる年齢の俺に、店の新作料理を任せるんだからな。だけど、任せられたからには頑張ろうと思った。
そこからは、試行錯誤の毎日だったよ。最初は、しっかりとした定食を作ろうと思ったけど、流石に費用の面などで難しくてな、悩んだよ。知り合いとも何度も相談したけど、これだ!っていうのはなかなか出来なかったな。
そこで、考えを変えて、持ち帰りしやすいものを作ろうと思ったんだ。多くの人がお店で食べるんじゃなくて、いろんなところで食べれるものを作ることにしたんだ。
んで、保存がきくものを作る必要があったから、どうしよう、ってなったんだが、知り合いに加工食品を作ってるやつがいてな。そいつに、当時は焼くか生で食べるだけの魚を加工してみたらいいのでは?って提案したら、乗り気でな。
約半年、そいつだけじゃなく、多くの人と協力して『ソーセージ』を完成させることが出来たんだ。親父も認めてくれてな、いよいよ、販売開始だ!って思ったときだった。
町の領主が年に数回の視察にきてな、ウチの店に寄って行ったんだ。偉そうな態度で店内に居座って、ご飯を食べていたとき、俺が、町の人に『ソーセージ』を販売したのを見たんだ。
気になった領主は一つ、俺に渡すよう要求してきた。俺は、用意していたうちの一つを渡し、領主はそれを受け取った後、しばらく観察をして、口に含んだんだ。そして、
「なんだこれは!こんなに不味いもの、食べてられるか!」
そう言って、口に含んだものは吐き出し、手に持っていた残りも、地面に投げ捨てて踏みつぶしたんだ。そのまま、領主はお金も払わず、帰っていったんだ。
俺は悔しかった。せっかく頑張った完成させた料理を、馬鹿にされたんだ。
だから、殺した。領主の館に住み込みで働かせてもらい、三年。料理を任せてもらえるまでに成長した俺は、毒を盛り、殺した。
その後は、あっという間だったな。殺人罪で捕らえられた俺は、民衆の前で処刑。んで、ここに落ちてきたんだ。
............
話を聞き終えた私は、どうしようもない怒りが湧き出していたんだ。
私の怒りに呼応して、『黄泉の国』全体の空気が震える。思わず近くにいた部下に止められる。
「閻魔様!」
「ッ!すまない」
冷静になった私は、少年に声をかける。
「少年、判決を言い渡す」
信は黙って、私の言葉を待つ。
「そなたの罪は本来、許されるものではない。されど、料理人としての意地、しかと見た」
「よって、そなたは本日から、私のもとで、料理人として働き、この『黄泉の国』の料理に革命をもたらせ!」
「ッ!?」
私の判決を聞いた信が、驚きの表情を浮かべている。
「閻魔様!どういうことですか!」
同じく信じられない、といった部下が私に詰め寄る。
「のう、お主は、この国の料理に対して、どう思う?」
「り、料理ですか?」
「あぁ、正直に申せ」
「......幾分か改善はされましたが、やはり、まだ不味い、と思ってしまいます」
「そうであろう、だからこそ、私はこの、信をここで働かせる」
「そして、この国の料理に変革をもたらすと?」
「あぁ、今までも、料理人を裁いてきたが、このようなものは初めてだ」
私の返答を聞いて、部下は、なんとか納得できたようだ。
「な、なぁ!」
すると、話を聞いていた信が声を出す。
「ん、どうした?」
「ほ、本当にいいのか?」
「あぁ、ただし、一度でも私の信頼を裏切るようなら、この国で最大の罰である、『無限地獄』にて永久に責め苦を味わってもらうから、覚えておくように」
「わ、分かった!」
「うむ、とりあえず、お主は私の家で暮らすが良い」
そして、私は何もない場所に手をかける。すると、
「ッ!」
突然、巨大な扉が現れた。
「この扉をくぐれば、私の家の厨房に着く。そこで、今日の夕食を作ってもらいたい」
「わ、分かった」
信は、戸惑いながらも、扉をくぐっていった。そして、くぐりぬけたのを確認した私は、部下を呼ぶ。
「あやつが殺した領主とやらは、この国におるのか?」
「はっ!現在、百年間『針地獄』にて、刑罰を与えた後、閻魔様のもとにて、判決を行う予定でほざいます!」
「そうか、残りの年数は?」
「残りは99年と六か月でございます!」
「うむ、その者を私のもとに連れてこい」
「はっ!」
しばらくすると、肥えた体をした男がやってきた。
「お、おい!ここはどこだ!」
「黙れ!ここにおられるは、この国の王、閻魔大王様だぞ!」
「なっ!?」
男が驚愕を隠せないでいるなか、私は問いかける。
「そなた、生前、領民が作ったものを吐き捨て、踏みつけたそうだな」
「な、なんで、それを......。ま、まさか、あのガキか!」
「そうだが、お主に関係あるのか?」
「あのガキ、私の食事に毒を盛ったのだぞ!私自ら処罰しないと気が済まないのだ!」
「......お主にそんな資格があると思うなよ」
「ひっ!」
あまりに身勝手な発言に、思わず、殺気が出てしまいました。
「お主は、料理人の誇りを汚したのだぞ?この国でそのような者を許すわけがなかろう」
「あ、あの、お、俺、じゃなくて、私は.......」
「それ以上、喋るな。お前の声が耳に入るたび、不快でしかない」
「そ、そんな......!」
「喋るな、と私は言ったぞ?」
「ひっ!」
震える男に、私は言い渡す。
「お主の罰は、この国において、最も罪深きもの。よって、お主には『無限地獄』にて永久に続く苦しみを味わってもらう」
「い、嫌です!お許しを、閻魔様!あそこだけは!」
「連れて行け!」
「はっ!」
「た、助けてくれーーーー!」
男の悲鳴が遠くなるの感じた私は、信がいる厨房への扉を目の前に出現させる。そして、彼が作っているであろう料理を楽しみにしながら、扉をくぐりぬけた。
この後、『黄泉の国』の料理のレベルは格段にあがり、信が祭り上げられるのだが、それはまた別のお話で。
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