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「だから、君もこの花が好きなのかなって。よく、ここにいるのを見かけたから」
それは想定していなかった。
あんたみたいな人が、何でわざわざこんな所に来るんだ。
「…この花が好きなの?」
「まあね。日本じゃ珍しい花だし、何より綺麗だ」
「そうね。でも、私は別に、この花が好きな訳じゃない」
「なら、どうしてここに?」
「…この花が、私と似ているから」
躊躇いながらも、私はそう答えた。
ここに来ているのを見られていたのなら、どうせ、泣いているところも見られているに違いない。
それなら、いっそのこと、彼に、全部ぶつけてしまえばいい。
どう反応するかで、この男の腹の内を探ってやる。
「こんな隅っこで、一人寂しく咲いている姿が、誰にも理解されない、独りぼっちの私とそっくりに思えてならないのよ。だから、毎日ここに来る。ここに来て、一人で、寒さと寂しさに耐えながら、綺麗に咲き続けているこの子を見て、私も頑張るの。この花みたいに、一人でも、綺麗な心で生きていこうって」