6.よくある話
「あ、あのー……なにか日本出身だと問題でもあるんでしょうか?」
恐る恐る質問してみる。すると、言いにくそうにしながらも二人が答えを返してくれた。
「ああいや、問題があるという訳では無いんだ。ただ……」
「最近、魔物の中でも言葉を話せる高位種がね、ニホンという言葉を口にするのよ。だから、少し驚いてしまって」
魔物が日本と口にする? つまり、私以外にも転生者がいるということか? そんなに転生する人が多いのかな。
「そ、そうだったんですね。不思議ですね」
言葉が思いつかなくて適当に返してしまった。多分、私と同じ転生者だと思います、なんて言えないし。
「本当に不思議だよね。しかも目が覚めたらここにいたという所まで同じなんだ。もしかすると、君と同じ境遇なのかな」
「その可能性は大いにあると思うわ。というか、アズはほぼ確定的だと考えているんでしょう?」
「まあそうだね」
そりゃそうなるよね。そこまで類似してるならそう考えるのも無理はない。むしろそこに辿り着かない方が難しい。
「だからね、もし君が良ければなんだけど……ここに住みながら情報を提供してくれないかな?」
「えっ! 情報を……?」
「アズ、そんな興奮しながら言ったらマオが怯えるわよ?」
頬を紅潮させ、若干息が上がっているアズさんをルージュさんが宥める。大丈夫ですよ、と答えるが、少しマッドサイエンティストさをアズさんに感じていたのは内緒だ。
「ああすまない。情報といっても解剖したりするわけではないから安心して。こう……君のいたニホンの話やそこでの生活について話してくれるだけでいいんだ」
解剖のワードが出てくるのが既に怖い。好青年らしさ全開なのに、微妙に狂気が滲んでる気がする。まぁ、ゲームのキャラクターだったら絶対に癖はあるだろうから仕方ない。
それはともかく、条件的には非常にいい。これまでのことを話すだけで住処が手に入る。これは乗るしかないだろう。
「それくらいのことでいいなら……どうぞよろしくお願いします」
「ありがとう。なにかして欲しいことがあればなんでも言って。快適に過ごせるように手配をするから」
「ふふ、マオがここにいてくれるだなんて嬉しいわ」
こうして、私の異世界生活?が始まった。