1.これって転生?
目を覚ましたら、全く知らない場所にいた。
暖かい日差し。柔らかな芝生。穏やかな風。澄み渡る青い空。
……私、とうとう死んだのかな?
元々体が弱い方で、病気もするし風邪を引けば拗らせる体質だった。
昨日も頭痛は酷く、体全体が重く、だるかった。熱も一向に下がる気配がなかった。一週間くらい前からずっと体調が悪かった。
夢にしてはリアルすぎる。手足に伝わる地面の感覚も、草木の匂いも、日差しの暖かさも、現実と大差ない。
しかし、周りにある建物は日本のものとは違う。
ゲームでよく見るような、中世ヨーロッパ風とでも言うのだろうか。
実際のヨーロッパがどうかは知らないが、フィクションでよく見る街中の風景だった。
「あの世にでも来ちゃったのかなー……」
あの世にしてはファンシーというか、想像していたのとは全然違うけれど。
なんとなく、死んで別世界に来てしまった気がする。
毎回やばいが、今回の風邪は本当にやばかったし、死んだと言われても納得できる。
「ま、あの世でも夢でもどっちでもいいか。いい天気だなぁ……」
高い高い空を見上げる。
「……うわぁ!?」
急に人が出てきた。
男の人だ。
逆光で顔はよく見えない。
「ああ、すまない! 驚かせるつもりはなかったんだ」
男の人がしゃがんで、私と目線を合わせた。
イケメンだ。金髪で瞳の色が青い。外国人のような特徴だが、顔立ちは日本人ぽい。快活で温和そうな雰囲気の人だ。
なんというか、ゲームのキャラクターにいそうな感じだ。
というか、友達がハマっていた乙ゲーのキャラクターに似てる。勧められて買った時に見た、パッケージにいた王道イケメン。あれにそっくりだ。
「……可愛いな……とても愛くるしい」
「えっ」
なんか急に口説かれた。
全然知らない人なのに。この人一体誰なんだろう?
「えっ……なにこれ」
イケメンの隣に何か出てきた。プロフィール? みたいなやつだ。
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【名前】ロール・ゼレナー
【出身地】王国
【誕生日】4月6日
【身長】172cm
【血液型】A型
真面目で誠実、日々鍛錬を惜しまない努力家な王国の王子。
剣技が得意で、戦いには自信がある。大胆で豪快な戦い方をする。
けれど、恋愛にはちょっぴり奥手な一面も……!?
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なにこの乙ゲーに出てくる紹介文的なやつ。
乙ゲーみたいというか、もしかしてこれ乙ゲーの中?
ロール・ゼレナーの名前、聞いたことがある。友達の推しだ。よく騒いでいるから知っている。
完全に紹介内容も友達が言っていた通りだ……!
まさか現実に異世界転生があるなんて思ってなかったけれど……もしかして、私は風邪を拗らせて死に、乙ゲーの世界へ転生した?
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