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第6話 コンビニ

「あ、



店がいてねえか。



じゃいいや。



仕方ねえな。」



禿原が渋々しぶしぶあきらめて言った。



やれやれ



何とか諦めてくれたかと



私は内心ホッとした。



これで向こうへ着いて



素直にお金を払って、



降りてくれればいいがなと、



早くこの仕事を済ませたい一心で思った。



道も(なかばを過ぎて、



前方にコンビニの看板の



明かりがともっているのが



見えて来た。



あと少し行けば馬山駅だ。



重い気持ちも少し軽くなった気がした。



「おい、



コンビニがあるじゃねえか。



あそこへ寄って



包丁を買ってこい。」



禿原が身を乗り出して言った。



またかよ。



コンビニに包丁なんかありゃしねえよ。



どうしようもない奴だな、と



思ったが



タクシーは接客業だから



怒鳴どなりつけて、



なぐり合いする訳にはいかない。



「お客さん、



コンビニには包丁ありませんよ。



寄っても無駄だと思いますがね。」



ぶん殴ってやりたいと思いながら



私は言った。



「つべこべ言ってねえで、



いいから寄って買ってこい。」



禿原はイライラしながら言った。



タクシーは接客業なのだ。



お客さんの意向いこう



聞いてやらなければならない。



包丁は無いのがわかっているから、



一応店員にたずねているところを見せて



諦めさせるしかないと



思い直して



「お客さん



お金はどうしますか、



無ければ買えませんけど。」



コンビニの駐車場に車を止めると



振り返って言った。



禿原を目前もくぜんであらためて見ると



30才くらいに見えていた顔が



意外に老けていて



50代くらいに見えた。



「金はあとから払うから



出しておけ。」



と禿原が言ったが



「立て替えは出来ません。



お金がないんじゃだめです。」



ただ店員に聞いて見るだけで、



お金は必要なかったのだが、



持っているのかどうか



確かめてみようと思って



言ってみた。



「金か。」



禿原はポケットに手を突っ込んで



探っていたが、



「これを持って行け。」



おもむろに



小銭がいっぱいにぎられた手を



突き出した。



おいおい



金持ってないんじゃないか。



これだからこういう客は嫌なんだ。



さっき組事務所で



いくらもらったんだよ。



いくらもくれなかったのか。



まったく、



仕事になんかなりゃしない。



私は仕事の邪魔をされている気持ちがして



愚痴ぐちりたくなった。



「じゃあいいです。



包丁聞いてきます。」



どうせ置いて無いんだから、



聞いてやれば気が済むだろう。



私は車を降りて



コンビニに入って行った。


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