第31話 新入社員
その事件以後、
大山大学は
そのラーメン屋に
学生が立ち寄ることを禁止した。
それからしばらくたった後、
五十代位で背が低く、
痩せて
髪の毛がやや薄くなりかかっている
暗い雰囲気の
下次素男が
入社して来た。
下次はロンタコスという
大手企業の係長だったが、
リストラされて
タクシー乗務員になった。
妻と子供二人。
子供は小学生と中学生だ。
結婚が遅かったのだろう。
家のローンがまだ残っている。
タクシーは慣れないと
非常に神経をすり減らすものだ。
道はわからない。
客から怒鳴られる。
渋滞の中でも
客から降りる指示があれば
他車の迷惑もかえり見ず
止めなければならない。
そんなとき
一万円でも出されて
釣銭を数えなければならない
なんてことになると
パニックになる。
一日中脂汗にまみれるのだ。
ベテランドライバーの助手席に乗って
研修する期間が済んで、
一人で
タクシーに乗務するようになった下次は
馬山駅付けの勤務になった。
馬山駅はタクシーが多い。
タクシープールは
横に四台、
縦に十台位列んで
詰め込まれ、
入れない車がプールを取り巻くようにして
列んで待っている。
特急も止まって
乗降客が多い馬山駅だが、
タクシーの台数が多過ぎて
なかなか順番が回って来ない。
プールに入ってから出るまでに
時間がかかる。
下次は数日後
下痢が止まらなくなった。