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第25話 ハラハラ

だいぶ長い時間



待たされように感じたころ、



社員が出て来た。



そして



まるで怪しむ様子もなく



車に乗り込むと



急発進するように



また走り出した。



私はその車が



横を通り抜けるのを見送ってから



後を追った。



前の車は



グングンスピードを上げて行く。



しかし



こんなわざとらしく止まっていて、



自分の車が動き出したら



後をついて来るというのだから、



はっきり尾行とわかるだろうに



相手はなんで気づかないのだろう。



私は不思議だった。



次の押しボタンの信号は



問題なかった。



そして



コンビニを過ぎた先にある



郵便局の信号は青なのだが、



その目と鼻の先に



国道の交差点があって、



そこから



郵便局の信号の手前まで



渋滞している。



今渋滞で止められているところの



小さい十字路の道に、



そこから



出ようとしている車が待っている。



私のニ台前に社員の車があるが



それは信号の先に止まっているのだ。



不意にこの信号が



赤に変わった。



まだ前の車は動きださないが、



私の車は



赤信号で止められてしまった。



細い道から車が出て



割り込んだ。



国道の信号は長い。



まだ変わらない。



私はまたハラハラしてきた。



この信号がうまく国道の信号と合うように



変わってくれればいいが、



さもないと見失ってしまう。



そう思った矢先、



国道の信号が青に変わった。



前の車が動き出して



国道の交差点を抜けて行った。



郵便局の信号がまだ変わらない。



国道の信号は青だが



こっちの信号が青にならなければ



どうにもならない。



私はイライラがつのっていた。



へたをすれば



ここで見失って



尾行中止になるかもしれないのだ。



前を行く社員の車が



どんどん遠ざかって行く。



どうなることかと



それを目で追っていると



信号が青になった。



国道を早く越えなくちゃ。



ギリギリでもいい。



私は祈る想いで



近づいて来る国道の信号をにらみつけ



「まだ変わるなよ。



まだ変わるなよ。」



呪文のように繰り返しながら



スピードを上げた。



探偵は身を乗り出して



助手席の背もたれをつかんで



国道の信号を凝視している。



手に汗を握っているのだろう。



私の白い手袋の中の手も



汗が吹き出していた。



もう少しだ。



交差点の歩行者信号の



点滅が始まった。



これは何とか抜けられる。



大丈夫だ。



私は身を固くして



一気に交差点を通り抜けた。



「えーい、



ちきしょうめ。



ハラハラさせやがる。」



私はホッと息をついた。



探偵もため息をはいて



グッタリうしろの座席に



寄り掛かった。



この道を行くと



あと少しで馬山駅の南口だ。



だいぶ暗くなって来て



ライトを点灯する車が増えてきた。



鉄筋コンクリートのビルが多くなって



いろいろなネオンが光っている。



社員は駅南口信号の



手前の信号を左折した。



そこは線路の下をくぐって行く



アンダーパスの道だ。



そこをくぐると



すぐ信号があるのだが、



その信号で



車はアンダーパスの底のところまで



つながって渋滞していた。



いつのまにか



社員の車のすぐうしろに



私の車がついて止まっている。



社員がルームミラーをのぞけば



私と探偵の顔がわかってしまう。



大丈夫かな。



心配になって、



あえて前の車を見ないように、



どこともなく



視線をそらせながら



前の様子をうかがっていた。


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