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第20話 尾行

その場所に車を止めてから



だいぶ時間がったが



目当ての車はなかなか出て来ない。



他のコースを通ったのかも知れない。



道は営業所から反対方向へ行っても



大通りに抜けられるのだが、



探偵は何故



こちらの方向だと決めたのだろうか。



なにげなく



ルームミラーをのぞいたとき



白い車が通り過ぎたのが写った。



あまりにも長い待ち時間に



しびれが切れて、



悪戯心いたずらごころ



ムクムクと頭をもたげてきた。



「あっ、


いま白い車が通り過ぎましたよ。」



軽い気持ちで



冗談じょうだんを言ったつもりだった。



途端に



悲鳴のようなあわてふためいた絶叫が



車内に響き渡った。



「気がついたらすぐ追って下さーい。



何してるんですか。



早くー。



早くあとを追ってー。



追ってー。



見失なっちゃうー。



何してるんですかー。



早くー。」



探偵は半狂乱になって叫び続けた。



あまりのうろたえぶりに



呆気あっけにとられて、



まずいこと言っちゃた



と思ったが、



あれは明らかに違う車だ。



私は罰の悪い想いで



「でもあれは違うと思います。



私の勘違かんちがいです。」



と言ったあと、



そのまま私は車を動かさなかった。



が探偵は



しばらくの間絶叫をり返した。



この人には迂闊うかつなことは言えない。



なにがなんでも



うまく仕事をやりげなければ



という重圧で



ひどく緊張して



変になっているのであろうか。



うしろの十字路の信号が



幾度も赤になって、



そのたびに



車が止めにくそうにならぶ。



だいぶ迷惑になっているなと



ハラハラしているのだが、



そこから動くことは出来ない。



いい加減に出て来てくれよ。



いやになったな。



こんな仕事受けなければよかったよ。



とヤキモキしながら



どのくらい時間が過ぎただろうか。



営業所の裏道から抜け出て来る道に



一台の車が姿を見せて



右折するために



一時停止で止まった。



「あっ、来た。」



目の前に電光が走って



私は思わず叫んだ。



「よし。」



探偵が身を乗り出して



興奮気味に言った。



車はこちらに気付く気配もなく



右折すると



スピードを一気に上げて



またたくまに



グングン遠ざかって行く。



即座に



二人がナンバーを確認した。



間違いない。



探偵は興奮して



「早く、



あれを追ってください。」



早口で叫んだ。



私はあまりに突然のことだったので



もたついた。



気が焦って



素早く発進出来ない。



「早くして。



早く。」



探偵がパニックになって、



私もパニックになった。



前の車が先の青信号を抜けて



左折した。



青ランプが黄色になった。



「あっ、ヤバッ。」



私はアクセルを一気に吹かして



加速した。



車は前の車が通り抜けた信号に飛び込んで



黄色信号スレスレで



左折して抜けた。



「あっぶねー、



あそこで引っかってたら



アウトだぜ。」



私は額から冷や汗が



ドッとき出した。



どこまで行くのかわからないが、



はたしてこれから先、



信号に引っ掛からないで



あの車をつけて行くことが出来るのか、



私は信号だらけの市内に向かって



走って行く車を追いながら



緊張が極限にまで達していた。



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