第10話 男
タオルを頭から外した途端、
目の前のソファーに
髪の毛を短く刈り込んだ男が
反っくり返って
無言で
ジッと
泥田を見ていた。
その横に女が俯いて
座っている。
そして
入口を塞ぐように
三人の態度の悪い若い男達が立っている。
泥田は慌てて
下半身をタオルで隠した。
何が何だか訳がわからず、
頭は混乱している。
この事態をどうしたらいいのか。
いろいろ考えたが、
考えがまとまらない。
「俺の女になんてことをしてくれたんだ。」
数呼吸の沈黙の後、
男が口を開いた。
「何もしてないです。
この女が行こうって言ったから
ここへ来ただけで、
なにもないです。」
泥田は気が動転して、
何を言っているのか
わからないような言い訳をした。
「じゃあ、
その格好はなんなんだ。
女と同じ部屋にいる男が
裸になっているじゃねえか。
これで何にもないだと。
ふざけたことを言うんじゃねえ。」
男が声を荒らげた。
泥田は反論出来ずにうなだれて
黙るしかなかった。
ああ、
失敗したな。
あそこで声をかけられたとき
何で気が付かなかったかな。
これはヤクザだよ。
まずいことになっちゃったな。
どうしよう。
泥田の考えは堂々巡りして先へ進まない。
取りあえず服を着なくちゃ。
裸じゃまるで格好がつかない。
泥田は服を着るタイミングを謀っていた。
「お前の会社の社長を呼べ。
電話しろ。」
男が言った。
「えっ、
社長ですか。」
泥田は会社に知れたら
まずいことになるなと思って、
どうしようかと
思い惑ったまま動けずにいた。
「なに突っ立ってるんだよ。
会社の従業員が営業車で
こんなことしてるんだ。
お前んとこの社長にも
責任があるだろう。
早く電話しろ。」
男が怒鳴った。
泥田はもうこうなったら諦めるしかないと
覚悟を決めて電話をかけた。
たまたま
社長がいたが話しを聞いて、
しかたなく
ホテルまで来てくれることになった。
社長を待っている間、
男は泥田と女に
「俺を裏切るとはいい度胸じゃねえか。
裏切りは絶対許さねえ。
裏切るからには
覚悟は出来ているんだろうな。
この責任はどう取ってくれるんだ。
どうするつもりだ。
俺の顔に泥を塗られたんじゃあ
このままじゃすまねえんだよ。」
と恐怖を煽るような
言葉を言い続けた。
しばらく経って
社長が入って来た。
「君はいったい何をやってるんだ。」
入って来るなり、
この有様を見て
社長は呆然として言った。




