大坂選手の確認。うつの確認。
経緯の細かい流れがしっかりと分かっているわけではないので、私の頭にある状況をまず、整理したいと思います。
大坂なおみ選手は数年前から、SNSなどで政治的発言をするようになりました。テニスの大会でも黒マスクに黒人の名前を書いて報道陣の前に出てきました。黒人差別を批判するものであることは、間違いないでしょう。
そうした行為に対して、ちょっとしたボヤのような炎上もありました。そんな活動をする中で迎えた全仏オープン。大坂選手は記者会見を拒否します。これは事前に自身のTwitterにて宣言していました。ここで大坂選手は規定通りの罰金を払うものの、その上で大会には参加する様子でした。
こうした全仏オープンでの一連の行動に対して、周囲の反応は厳しく、いつものボヤ騒ぎではすみませんでした。主催者、そしてレジェンドともいえるテニスプレイヤーたちも難色を示しました。
大坂選手はほんの少し沈黙したのちに全仏オープンを棄権表明しました。その原因として挙げたのが「うつ」です。
私の認識はざっとこんなところです。
さて大坂なおみ選手ですが、「鬱病」という単語ではなく「うつ」と使ったのは、大正解です。他の国の事情は知りませんが、日本において「鬱病」とはれっきとした病気です。つまり医師免許を持った人間が書いた診断書に「鬱病」と書かれて初めて鬱病患者として扱われるのです。
そのため「気持ちが上がらない」「夜眠れない」「突然涙が出てくる」といった方々。彼らが「鬱病」かと言えば、違うのです。先に挙げた方々は「うつ症状」のある人間として扱われます。これを病気と呼べるかどうかといえば、呼べないのです。
「うつ状態」「うつ症状」は誰にでもあるものです。誰しもが落ち込んで、やる気を失い、行動力を保てなくなることは往々にしてあります。「うつ症状」と「鬱病」の関係は「咳」と「肺炎」と同じような関係と思ってください。
ではどうすると「鬱病」になるのでしょうか?先に挙げた診断書。これを描いてもらうには長い期間の通院が必要になってきます。「うつ症状」があったとしても、初診で「鬱病」の診断をくだされることは基本的にはありません。長い期間とは「うつ症状」と認められる状態になってから1年半です。薬物治療やカウンセリングを1年半やっても改善が認められない場合になって「鬱病」という扱いにされるのです。
非常に優しくないシステムです。一応、「鬱病」としてみと認められれば、そこから一年半の年月を遡って、障害年金を受け取る遡及請求なんていうものもあります。
もちろん、こういったシステムでないと、軽度の「うつ症状」にある人間が年金目的で診断書を求めて大量発生してしまうでしょう。なんだったら軽度である必要すらありません。問診で適当な文句をでっちあげることなんて簡単でしょうし。
「鬱病」に限らず「目に見えない病気」は扱いが非常に困難です。例えば腕を失った人間に対して観察期間を設けることは、当然ながらありません。その日に申請受理されるでしょう。何でって、そりゃ見たら分かるからです。どこを失って、そうなるとどういう支障が出るのかすぐ分かるからです。詐病は論外として「目に見えない病気」はその病状の強度、強いか軽いかの見極めもまた、非常難しいものがあります。