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その日から私はお米が食べられなくなった。
それだけ書くとなんのこっちゃ、という話であるが、それはとてつもなく衝撃的な事件だったのである。
私はそれをきっかけに、『彼』と縁を切ることを決意した。
もう二度とかかわらないようにするために、それまでの人間関係をすべてリセットすることを決めた。
友達とは縁を切って、仕事を辞めて、引越しをして、SNSのアカウントも全部消して、思いつく限りのことをやった。
とにかく私は逃げたかったのだ。
『彼』から。
『彼』が、私に、辿り着かないように。
でも、残念ながら、どんなに逃げたって意味がなかったりする。
ほかでもない私自身が、『彼』のことを忘れられないから、いつだってつかまっている気分だ。
でかでかと掲げられた広告の中の『彼』と目があった。
人気者を目にする機会は多いから、たまったものではない。