0話 いつもの酒場でいつもと変わらずに
「今日も一日お疲れ、乾杯」
俺たち5人はいつものようにグラスを合わせた。
ここはユーラリア大陸のアオニーという街の酒場だ。
今日も害虫駆除を行った俺たちは、いつもと同じように打ち上げに来ていた。
周りの客たちも今日の仕事終わりに酒を飲みに来ている。
「ユキ、今日の収支報告してもいいか」
「頼む」
俺の名前はいま呼ばれた通りユキで、話しかけてきたのは経理担当のカズだ。
「本日の獲物はグリーンモス1体魔石のサイズは30㎝、純度はE、買取価格は10000Gだった。
食事代で終わりだな。使用した弾頭が散弾1発だったため本当にゼロだな。」
カズはざっくりと今日の稼ぎを報告してくれた。
俺たちは、戦車に乗って害虫を倒して生計を立てている。
今日は獲物がそんな全くいなかったため何とか赤字にはならなかった。
しかし、俺たち5人の空気は若干重くなってしまった。
この5人というのは俺の古くからの仲間で1台の戦車を運用している。
戦車長兼リーダーが俺。
さっきのカズは装填士兼経理係。
あとは、操縦士兼メカニックのタク。
砲撃士兼サブリーダーのジン。
通信士兼営業係のヤスの5人。
昔から悪さをするでも何をするでもこのメンバーでつるんで来た。
生まれた時から住んでるこのアオニーでは5バカとか呼ばれている。
「今回はヤスが上手いこと言ってランクFだった魔石のランクをEで処理してもらえたから
よかったけどFだったら赤字だな。明日は依頼でも受けるか?」
サブリーダーのジンが聞いてきた。
戦車で害虫を駆除する仕事には2種類のパターンがある。
指定された狩場で指定された獲物を狩るか
指定外の場所で獲物を狩るかだ
前者は依頼と呼ばれるタイプで、斡旋所で依頼を受ける為、街の居着きの戦車乗りが基本的に受けている。
こちらは素材が必要だったり害虫の間引きが目的だったりする。
後者は即金目的で、流しの戦車乗りが多い。
「そうするしかないか」
と答えながら俺はタバコに火をつけた。
その時酒場に40代くらいのおっさんが現れた。
そのおっさんとの出会いが俺たちの人生を動かしていくことになる。