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ズバッとお仕置き!スペクトロライト(9)

 暴走癖はあっても、騎士団長としての常識もあるらしいヴィクトワールの答えは当然ながら、「参加不可」。その連れないお答えに、イノセントは頬をこれ以上ない程に膨らませては駄々をこねているが……。駄々のコネ方がやはり、妙に子供っぽいのだから世話が焼ける。


「仕方ないでしょう、イノセント様。そもそも、あなた様は天空の来訪者でもあるのです。万が一がございましたら、私だけではフォローできません。誠に申し訳ございませんが……やはりグリード(アレキサンドライト)が不在の状態では、()()()()()()()()()()()のは難しいという判断になったようです。その上で、救護班を手配されるとのことでしたので……」

「ブゥーッ! サナのケチ、意地悪! それでもって、スカピントン!」

「だから、それは素寒貧でしょ、イノセント……」

【(まぁ、ここまではヨソウドオりだな。で、このナガれだと……)】


 ネイビーのマットレスの上でゴロンと横になっては、ジタバタと暴れだすイノセント。しかし、この手法は出先でやるから親を困らせられるのであって、自宅でやったところで効果は薄い。しかも、彼女も性質量の多いカケラの例に漏れず、涙を流すこともできない。となれば、彼女に残された強行突破の最終手段は……。


「もういい! だったら……私1人でなんとかする! 連れて行ってくれないのなら、()()()()に戻るまでだ」

「お、お待ちください、イノセント様。それはいくら何でも……!」


 お子様イノセントにはある意味で初対面のサナは、彼女のワガママ加減(常備)の前情報は持ち得ていない。いくら手練れのハンターと言えど、サナにしてみれば、イノセントの駄々っ子ぶりは想定外である。一方で、イノセントがどんな存在なのかを知らされていないサムが、ジェームズにヒソヒソと質問し始めるが……。彼の質問の向きさえも、非常によろしくないとジェームズのタンカラーは歪みっぱなしだ。


「向こう側? ……ジェームズ。イノセントの向こう側って……?」

【……イノセントはホワイトサファイアのライホウシャ。ジェームズタチみたいな、カケラの()()()()ともイえるソンザイでな。イマのスガタは、ジュンケツのスイセイのケシンのジョウタイで……ホンショウはシロいドラゴンのスガタをしている。だから……】

「そっちの姿で暴れられたら、この街一帯は火の海だろうね。……まぁ、僕としては、イノセントちゃんのそちらも見てみたい気もするけど。暴れ竜をお鎮めできる自信は、ちょっとないかもなぁ……」


 難物落とし(神様狩り)切り札(グリード)が不在の状況で、向こう側(暴れ竜)のイノセントを鎮める手段はほぼないと言っていい。そして、その事を悪知恵が働く竜神様もよくよくご存知なのだろう。ヴァンとサナが困った顔をし始めたのに、効果も抜群らしいと察知しては調子に乗り始めるから、厄介だ。


「フフン! サナもヴァンも私には敵わぬだろ? だから……」

【いいカゲンにしないか、イノセント。あっちガワのチカラはそんなコトのために、ツカうモノではないだろう?】

「うぐ……。それはそうだけど! でもぉ!」

【……ワかっている。おルスバンはタイクツなんだよな? だったら……はぁぁ。シカタないな。ジェームズとイッショにケンブツにイくか? ヤネのウエからナガめるブンには、モンダイないだろう?】


 あくまでヴィクトワールに断られたのは「作戦への参加」であって、「作戦の見学」ではない。それに、しっかりと「お仕置きセット」を着込んでいるイノセントにこのままお留守番を強要しても、大人しく言う事を聞かないだろう。だからこそ、ジェームズも長い夜になりそうだと腹を括っていたのだ。The ball is in my court……イノセントの目付け役の()()が回ってくる事も想定して。あまりに予想通り過ぎる状況に、看板犬の口からは嘆息ばかりが漏れ出ていく。


「……見学だけか? それじゃぁ、つまらないぞ……」

【ケンガクだけでも、アリガタいとオモってくれないと、ジェームズ、コマる。イマのイノセントがエラべるのは、おルスバンかケンガクかのどっちか。……しっかりいうコトをキかないと、ラウールもここにオいてくれなくなるぞ。ヴランヴェルトの()()()()でゴロゴロしているホウがいいのか?】

「確かに、それは……もっと、つまらない……かも……」


 悔しそうにしょぼくれながらも、竜神様もヴランヴェルト城での()()()()の境遇には戻りたくないらしい。

 そもそも、彼女が強引にアンティークショップに身を寄せているのは、きっかけのサーカスを始めとして、こちら側の生活が刺激的だったからだ。ラウールの店にいればお出かけもできるし、旅行にも連れて行ってもらえる。その上、甘いおやつもそれなりに貰えるともなれば。ちょっぴり貧乏でも、こちらで()()()()()に混ざっている方が、イノセントも好都合(幸せ)だったのだ。


「申し訳ございません、ジェームズ様……」

【いや、いい。……ラウールからも、あるテイドはおネガいされている。サナのアシはヒっパらないようにキをつけるから、ヤツらの()()()()()にセンネンしてほしい】


 ジェームズも例の銀行強盗がお仕置き対象ではなく、救助対象であると理解している。だからこそ、サナに全てを任せた方がいいだろうという判断になったのだろうし、ヴィクトワールも救護班の手配を決断したのだろう。


「面白くなってきたね、サム。……どうだろう、僕達もちょっと見学に混ざってみようか?」

「えっ? 僕はちっとも面白くないよ、ヴァン兄」

「もう……サムは本当に臆病なんだから。ふふ。折角だし、サムもちょっと、変身してみる?」

「それ、ヴァン兄が楽しみたいだけじゃないか……」

「そうかな〜?」


 ほら、さっきのハール君にも相棒がいるみたいじゃないか……と、一方のヴァンが悪ふざけの相乗りを申し出るのだから、世話が焼けるとジェームズとサムは思うものの。ヴァンもいた方が何かと心強いかもしれないと、ジェームズは素早く計算してはやれやれと首を振る。相当難易度の苦行(子守)を前に、健気な看板犬(ジェームズ)飼い主(ラウール)が恋しくて仕方がない。

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