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白を染めるブラッディ・ルビー(14)

「最終目的のお手伝いはきちんとしますよ。ですから……少しばかり、俺にあなたの力を貸してください」


 手元の赤い煌めきを慰めるように、そんな事を嘯きながら……グローブを外して、彼女(ブラッディ・ルビー)を取り込み始めるグリード。きっと、彼女も彼の望みを聞き届けるつもりなのだろう。宿()()をさして傷つけることもなく、その身を鋭利な1振りの刃に変じ、まるで神殺しの炎(レーヴァテイン)と見まごう灼熱を放っていた。


「無論、あなたに恨みはありません。しかし、この子(クリムゾン)のためにも()()を横取りされる訳にもいかないのです。誠に申し訳ありませんが……この場で、ご退場(機能停止)をお願いしたい所存です」


 恭しく、刺のある慇懃な口調。神の使いにさえも、どこまでも不遜な態度を崩さないまま、彼女の首元へ斬りかかるグリード。その不意打ち(理不尽)に、いよいよ怒り始めるイノセントだったが……白竜の牙や爪さえも易々と躱しながら、漆黒の大泥棒は正確無比な真紅の斬撃を重ねていった。


「さて、もう少し……と言ったところでしょうか。サナ、彼女の核石へのアプローチ(掘削)は俺の方でしますから、()()()()()()はお願いしますよ」

「あら、そう言う事ですの? 目立ちたがりの大泥棒が花持たせだなんて、随分と粋ですこと」

「おや。俺は脇役の方が性に合っているつもりですよ? 少なくとも……舞台俳優には全くもって、向いていませんしね」


 肩を竦めて軽口を叩きながらも、実際のところは役割分担でもしない限り、彼女(イノセント)を鎮めるのが難しいだけに過ぎない。いつかに対峙した混沌の黒竜(ジャバヴォック)とは違い、目の前の白竜は1人で()()()()()()ほどの小物ではないだろう。

 圧倒的な防御力に、驚異的な再生能力。更に悪い事に、本気を出し始めた彼女は咆哮から真っ青な炎を放ち始めた。そのあまりの熱量に……彼女の放射(スーパーノヴァ)が近い事を悟る、4人。


「そろそろ、幕引きと言ったところでしょうか。申し訳ありませんが、ヒトハとソーニャも援護をお願いしますよ!」

「言われなくても、分かっていますわ。ソーニャもよろしくて?」

「もちろん。私達で彼女の攻撃は逸らして差し上げますから、減らず口よりも手を動かしなさいな!」

「……相変わらず、鬼嫁っぷりは健在ですねぇ……。そんなんだから、兄さんのため息が減らないのではないですか……」

「まぁ! あなたにだけは言われたくありませんわ!」


 互いにモーリスのため息の原因になっている事を棚に上げながら、険悪な雰囲気を醸し出しつつ。()()ともなれば話は別だ。めいめいの役割をきっちりと演じ、攻撃を重ねれば。ようやく彼女の首元に燦然と輝く、白亜の核石が姿を見せる。その急所に……狙いを定めたサナの一手が光を放つと同時に、縦横無尽に走り出す閃光の鎖。もう1撃、更にもう1手。執拗なまでの拘束の楔が、彼女の体を雁字搦めにする頃には……僅かに唸り声を上げる事を許されるだけのか弱い竜神が、疲れ切った様子で蹲っていた。

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