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パパラチア・ワンダーロード(19)

(おやおや、本当に……この街の人達は揃いも揃って、()()()なのですね。……泥棒がどんな存在か、理解しているんですかねぇ……)


 黄金色の満月の下。お茶会へは完全に()()()()()()にも関わらず……予告通りに美術館に現れた怪盗の姿に、あからさまに場違いな歓声が上がり始める。そのどこか空虚とさえも思える、勘違いの熱狂相手に、舞台俳優よろしく愛想を振りまいてみるグリード。普段であれば、観衆へのサービスはあまりしないのだが……無愛想にしたばかりに、ちょっと失敗した(婦人方を敵に回した)事を思い出し、()()()()()の心象は良くしておこうと思い直す。そうして、少しばかり無理をしながら最前列のお嬢様達に流し目をくれてやれば。彼の思わせぶりな演技に、途端に温度を上げる熱視線。辺りを包む耳障りな黄色い声がますます気に入らないが、今宵ばかりは仕方がない。


「……クククク。こんな風に舞台挨拶をできるなんて、思いもしませんでしたが……寒空の下、皆様にお会いできて光栄ですよ。あぁ、ご心配なく。この街の美術品(オールドコーネの評判)を損ねるような真似をするつもりはございませんから……ソワレのカーテンコールは無しに願います」


 一方的にそんな事を言い捨てながら、殊更太い美術館入り口の柱を伝って大好きな舞台の天辺(屋根の上)に駆け上がると……そのまま闇夜の向こうに掻き消える。漆黒の風景を味方に付けて難なく内部に侵入した後は、思い出(ファーストコンタクト)の場所を目指す。今夜もきっと……()()のために、美術品達はあの場所に引き揚げられている事だろう。


***

「フフフ……予告通りの時間にやってくるのは、怪盗紳士の嗜みというものなのですね。さてさて……私の用意したお茶(不思議な世界)の味はお気に召しましたか?」

「いいえ? 生憎と、俺はコーヒー派なもので。初めから……お茶のお誘いを受ける(登場人物になる)つもりはありません」


 煌々と明かりが灯されたバックヤード。そんな()()()()()()()()()()で、対峙する2人のカケラ達。最初に気づければよかったのだが、どうやら互いに特殊な核石の持ち主だったらしい。改めて面と向かえば、目の前の柔和な物腰のはずだった美術館長の瞳はあからさまに初対面の時とは異なる、鮮やかな深いスミレ色をしていのにも、すぐに気づく。


「……サファイアにも色変わりをするものがあると、聞いていましたが。なるほど? あなたの瞳も夜は紫色になるのですね」

「えぇ、その通りですよ。この世には色変わりする、とても不思議なサファイアがありまして。私はそのサファイアを核にして、生き存えてきました。それにしても……流石、ホワイトムッシュの飼い猫(チェシャ)は格が違いますね。我々では到底及ばない、鮮やかな色変わりに……その口元の微笑みも、非常に不愉快だ」

「左様で? それはそれは、よろしゅうございました。ですが……希少な不思議なサファイア(ワンダー・サファイア)の持ち主のワンダー・ロード様が、どうしてこのような実験に手を染めているのです? ……模造宝石はどこまでも、偽物でしかありませんが」

「そうでしょうか? 現に、私が作り出した“ワンダー・パパラチア”はきちんとあの子に馴染みましたよ? とは言え、あのお粗末な出来ですからね。あなたが見切り品だとお考えになるのも、無理はないという事でしょう」

「別に、俺は彼女の事をそんな風に思ってはいません。そもそも、そんな偽物で作り出された方の身にもなってみてください。……それ、間違いなく詐欺の類ですよ」


 逃げ足だけは超一流。その情けない評判は……彼女が中途半端な核石のせいで、本来ならカケラ達が持ち得るであろう異常なまでの身体能力を十二分に引き継げなかった事を意味していた。挙句、一方的に見切り品などと言われれば。“シャープでスマート”を装っている神経が、ますますトゲを帯びる。今夜はヴォーパルの剣を気取るだけでいるつもりだったが……どうやら、本格的に怪物退治をする事になりそうだ。

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