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デア ファーター1/生い立ち

der Vater


父親

「ふうむ……」

フーは、ロッテの顔をまじまじと覗き込んだ。


「思っていたよりも早かったな」

「原因は、そうだな……」

「たとえば、極度の興奮状態にあったとか」

フーは淡々とそう言うと、アレンに一瞥をくれた。


極度の興奮状態。

それを引き起こした原因にはめちゃくちゃ心当たりがあったが、アレンはとりあえず何食わぬ顔をしてソファに座っていた。


「あの、フー先生……」

おずおずとロッテが話しかけた。


「フーでいいよ」

ウサギは笑って手を振った。


「わたし、今一体どうなっているんでしょうか?」

「きみは今、とても不安定な状態にある」


「不安定な状態って……どういうことなんですか?」

「わたしは一体……」


ロッテは不安な顔をして、フーに答えを求めている。

もちろん、オオカミになったことそのものを受け入れているわけではないようだった。


「私はまどろっこしい言い方は嫌いでね」

ふっと息を吐いて、フーは話し始める。


「ロッテ、きみはただの人間じゃない」

「きみの中には、オオカミが棲んでいる」


フーは真面目な顔で言ったが、アレンはきっと信じなかっただろう。

ロッテが目の前で変貌するのを、目の当たりにしなければ。


「もっと詳しく話すと、こういうことだ」

そう前置きしてフーが話し出したことは、まるでおとぎ話のように荒唐無稽な物語だった。


*****


それは、もうかなり昔のこと。

人間が獣にその地位を奪われた直後から、その研究は始まったという。


自分たちに取って代わった獣を憎んだ一部の人間たち、知恵のある人間たちはあることを考え付いた。

もし、獣の能力を持った人間がいたとしたら?

その新しい者たちは、再び人間の世を取り戻すのに大いに役立ってくれるのではないか。

まったく馬鹿げた話に違いなかったが、研究を始めた者たちは本気でそう願っていた。


そうしてその研究は、後の世まで細々と続くことになる。

獣と人間の融合。

成功すれば神にすら並ぶようなその行為に、研究者たちは夢中になった。


時を重ねるうちに、当初の目的はだんだんと薄れていく。

獣は今や世界の絶対的な支配者となり、もはや人間の出る幕は失われてしまったのだから。

そうであっても、研究は続けられた。


彼らはただ、純粋に目標を達成したがっていた。

獣の力を宿した人間は、本当に生まれるのか。


「研究は、あるとき突然成功した」

「長い年月、研究者たちが求めてきた存在」

「人の姿を持ち、獣を内に宿した者」

「それがきみだよ」


ロッテは、ただ黙ってフーの話を聞いていた。

今彼女の中でどのような考えが渦巻いているのか、アレンにはとても計り知れなかった。

しかし当事者であるロッテは、ようやく謎が解けたというようなすっきりとした顔をしていた。


「つまり……わたしが不安定な状態にあるというのは、オオカミの遺伝子の影響が強くなっているということでしょうか?」

「そういうことだね」

「きみは頭がいい」


「とはいえ、あまりショックを受けたようには見えないが?」

それは、アレンも同じ気持ちだった。

フーは、不思議そうにロッテに聞いている。


「いえ、あの」

「もちろん、驚いてはいるんです」

ロッテは、胸の辺りで両手を振った。


「でも……今まで自分が経験してきたことを考えると」

「自分が作られた存在だって分かっても、何だかそんなものかなって気がして」

オオカミの顔で、ロッテは困ったように笑う。


「保健所には、両親の顔も知らない子たちがたくさんいましたから」

「きみは、思っていた以上にしっかりとした芯を持っているね」


フーは、何かの意思を固めたようだった。

一息置いて、再びロッテにしっかりと向き合う。


「ロッテ」

「ここからの話は、きみにもっと衝撃をもたらすことになると思う」

「すべてを知りたいと思うかい?」


「……はい」

ほんの一瞬の間を置いて、ロッテははっきりとそう答えた。


「以前公園で会ったとき、私はハンスのことを口にしたね」

「ええ」

「だから、わたしはあなたに頼ろうと思ったんです」

「そうか……」

フーは青い目を細めた。


「ハンスと私は、その研究に携わっていた」

「え!?」

「ハンスが? フー先生も?」


聞き返したロッテに、折れ耳のウサギは静かに頷く。

次に顔を上げた彼女は、ロッテを見据えて言った。

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