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死神の飼い猫ぷらす  作者: 稲狭などか
8/14

猫と狼が遊ぶ場所 1

猫と狼!

1


「正明ってさ、女の子だよね。顔が」


 加々美がふと夕飯を食べながらそう呟いた。今日は珍しくテーブルについてメイド達が作った料理を食べていた正明と加々美だが、それを聴いて正明の隣にいる真紀も首をかしげた。

 正明と真紀は双子で鏡写しの様だが、性別が違う。

 男なのに正明が妹の真紀と同じ顔なのだ。


「何を今更、僕の顔は14歳時の顔だよ。本当ならカッコいい大の男なんだからね?」

「一目見て女の子の股に来訪した事がありそうな顔ってね」

「食後の狼狩りにでも行こうかな? 膜じゃなくて頭をぶち抜いてやるよ、スケベ狼」

「発言は女の子っぽくないね! そのショットガンしまって! 何処で買って来たの、カッコいいな! あー! 安全装着外した!」


 騒ぐ加々美にため息をついて正明は銃を空間に放る。すると銃は溶けるように消えて行った。


「可愛い格好をしよう。正明ならすぐにオタクが一目見ただけでビッチ認定する程の可愛い女の子になれるよ!」

「・・・・・・ビッチじゃ無いし」


 正明は呆れ顔でそれだけ返すと、真紀と加々美の怪しいアイコンタクトに一抹の不安を覚えていた。


 翌日、その不安は的中した。

 正明は寝坊してベッドから飛び起きて着替えるとそのまま学校へと走っていた。いつも隣で寝ている真紀がいないことから気付くべきだったが、彼は何かヒラヒラしたものが気になって足を止めた。


「なんだ? リボン?」


 手繰り寄せたそれは黒い、髪の毛だった。

 どうやら自分の頭から生えているらしいその長い髪に、正明は魔法で空間に鏡を作ると、絶句した。

 ナチュラルメイクされた顔に、ウェーブがかかったツインテールを蒼いリボンで結っている、それに制服も女子のスカートだ。たぶん衣装変換の術式をいじられたのだろう。なんと言うか、普通に可愛い女の子にされていた。


「うわぁ!? なんだこれ!? 加々美か! くそ、やってくれるよ!」


 正明は仕方なくそのまま学校の門を通り抜けた。



 劣等クラスは騒がしくなった。正明が通り過ぎると男子生徒や教師が振り替える。髪の毛はたぶん魔法で伸ばされたのだ。桂とかではないし、ネコニーハイまで装備だ。なんだ? このあざとさ大爆発の姿は?

 校則はそこまで厳しく無いからこの程度なら何も言われないが、視線が痛いと正明は猫耳のフードを被るが、それが余計に猫っぽくしてしまう。

 

「おい、あんな子いたか?」

「知らねぇよ。しかし、凄く可愛い子だよな? 脚細ぇし、小柄で目元なんてパッチリだから本当に猫みたいだな」


(ちくしょう! 見るな! くそ、授業まで時間が無いし! 休み時間までの辛抱だ!)


 顔を真っ赤にして教室に入るが、顔を隠そうとしていたせいで入り口で正明は盛大にスッ転んだ。

 その姿にクラス全員が驚いた様に正明を凝視した。転んだことで怪我はしていないが、女の子座りで涙目で額を抑える正明は言葉が出なかった。


「・・・・・・え? て、転校生の人かな?」


 クラスの男子がそう言うが、正明は立ち上がるとそいつに顔を近づける。息がかかりそうな程の距離で左目を開いて見せる。


「え、えぇ!? ま、正明!?」

「そうだよ。イタズラでこんな姿にされて、ネコニーハイなんて久しぶりにはいたよ」


 男子生徒は顔を真っ赤に染めると正明と距離をとる。正明はその様子を見てニッと笑う。


「なに? いつも男みたいな名前だから可愛いって感じしないーって言うクセに」


 正明はその後教室に来た教師にも驚かれることになった。


 授業が終わり、正明は教室を出ようとしたときにクラスの女子生徒達に捕まった。


「正明ちゃん! 今日は女の子してるね、いつも女の子だけどズボンなんかよりスカートが似合うよ!」

「んー? 素直に喜べないよ。スカートって寒いよ、僕は苦手かな?」

「可愛い! 猫ちゃんみたいだよ!」

「猫のニーハイはいてるからね。ニーハイは脚が気持ちいいから好き、僕は見た目に恵まれたなー、これはいてもキモいって言われないから」


 しばらく正明は女子達に撫でくり回されたり、お菓子で餌付けされてから教室を出た。猫っぽいのはいいが、正明はどうも撫でられたり首を指でかかれたりするのが弱いのだ。

 気持ちいいから、なされるがままになってしまう。


「このクセ治らないのかな? ただの猫と変わらないよ」


 その時に休み時間終了の鐘がなる。


「ガァッテェム!」


 こんな調子で正明は昼休みを迎えると屋上に逃げて給水タンクに登ると、優等クラスの校舎を眺めると薄手のマフラーを首に巻く。すると、華音の歌がいつもと同じように聴こえて来る。


「ふーん、ふふーん」


 ご機嫌で正明は彼女の声を聴く。女装を解くのは華音が歌い終わってからでも遅くないと思ったのだろう、魔法で水のクッションを作ってそこに身体を預ける。魔力の膜で水を操っているため濡れる事はない。

 華音の歌が終わり、クッションの上で伸びをすると給水タンクから降りると一人の人物と目があった。


「あ」

「ん!?」


 正明は跳び跳ねる程驚くと防御魔法を開いて警戒するが、彼はどうやら劣等クラスの男子生徒らしい。


「あ、えっと・・・・・・伊達正明さんですよね」


 何処と無く緊張している彼に正明は防御魔法を解除して向き直るが、どうも嫌な予感がすると正明は思っていた。


「ずっと前から、貴女が好きでした! 僕の、恋人になって下さい!」


 正明は彼の心の平穏の為にも自分の本当の性別は隠しておこうと心に誓った。男に告白されるのは何度目だろうか?


「気持ちは嬉しいけど、僕・・・・・・女の子が好きなんだ」


 嘘偽りは言っていない。

 その言葉に男子生徒は目を丸くすると、泣きながら屋上を去って行った。スッゴく悪い事をしたような罪悪感に見舞われた。


「この格好は、人を狂わす! 僕は元に戻るぞ!」


 衣装変換を発動するが、正明の姿は変わらない。


「くそ! 僕の魔装がいじられてるのか! あの駄犬! 見つけて酢に沈めてやる!」


 結局、加々美と真紀が見つからないまま1日が過ぎてしまった。その間に結構な男子生徒からアプローチを受けたが、残酷な真実を告げてかわして来た。

 事実、正明は女の子が好きだ。と言っても華音意外の女性には殆ど興味を持たないが、さすがに男に撫でられたりしたいとは思わない。

 宗次郎や八雲は子猫の時に撫でくり回したりするが、連中は仲間だ。


「はぁ、疲れた。なんだよ! この格好なら告白とか! 顔面しか見てないだろ! ちっくしょう!」


 一人で怒って正明は校舎の壁に水で球体を作って投げつけている。まるで子猫がかんしゃくをおこしているようだ。たまに自分のこんな子供っぽい所に呆れるが、これが彼なりの気持ちの整理なのだ。


「顔なのかなぁ。僕が言っても説得力無いけど・・・・・・やっぱり恋ってお話して、友達になって、少しずつお互いを知ってからとか」


 そう言う正明は華音の顔を思い出して一人なのに真っ赤になって中庭のベンチに体育座りしていると、遠くから視線を感じた正明は一気に鋭い目付きになる。

 悟らせないように転移魔法を使って視線を送る奴の前に現れると馬乗りになるようにぶつかって魔方陣を顔面に押し付ける。


「ぐふっ、見事。離してよー! 悪かったよー!」


 それは全ての元凶である天道加々美だった。


「お前ー! 戻せ! 僕の変装解け!」

「可愛いからイヤー」

「ガブッ!」

「うぎゃあああ! 頭を噛むなー! いだだだ!」


 正明は加々美に振りほどかれてしまうが、すぐにリカバリーして構えを取る。


「そんなに怒らなくてもいいじゃん! 可愛くしてあげたのに!」

「今日だけで人間は顔って考えにとりつかれそうだよ!」

「華音ちゃんは顔で好きになったの?」

「彼女の顔面がゾンビになっても好きでいるに決まってる! 僕を舐めるな!」


 正明はフーッ! と怒る猫のように顔に怒りを表してる。


「ごめんよ、怒らないで? 少しからかっただけなの。私は正明が可愛いから意地悪したくなっただけなの」


 加々美は怒る正明の喉を指で優しく撫でると、彼は怒っていたのに表情がまどろんでしまう。


「うぅ? んーんん・・・・・・僕は怒っているんだぞ?」

「よーしよーし、いい子いい子。ナデナデ」

「んー、むにゃあ・・・・・・卑怯だぁー、力が抜けー」

「ほいっ」

「ん?」


 正明の腰には謎のベルトが巻かれていた。制服に見事にマッチングした色合いに、少しの派手さがアクセントの一品だがこれも魔具だろう。

 何が起きるのかは謎だが。


「じゃーにー! 猫たん!」


 そう叫ぶと加々美はものすごい速度で消えてしまった。彼女は素早い上に姿を文字通り消せるのだ。


「殺してやるぅ! あの狼!」


 その時、正明は背後から近づいてくる何者かに気付くと済ました顔で振り替える。

 紅いネクタイ。優等生が歩いてきていた。

 劣等クラスにいると言うことはパシリにしている生徒に用事があるだろう。正明は優等クラスの連中に目を付けられないようにオーダーを傘にしている。由希子と友人である正明に下手な事をする奴はそうはいない。

 が、その男は真っ直ぐ正明へとよってきた。


「お前、劣等クラスだな?」

「え? そ、そうですけど?」


 見本のような優等生だ。傲慢で上から目線、正明は仕方ないと悟っているが許されるならボコボコにしてやりたくなる。


「ふぅん、可愛いな。優等クラスにいないタイプだ」


 正明の顔を突然撫でた男は舐め回す様に彼を見る。

 正直吐きそうだ。


「やめて下さい。もう、僕は行きます」

「待て! 俺の女にしてやる。どうだ? 優等クラスにも入れてやれる、人生は安泰だ」

「必要無いです。僕は顔で人を値踏みする人を愛したりしません」

「生意気だな。まずは、力関係を示さないとな」


 結界が張られて正明は閉じ込められた。これは、嫌な予感が的中した。

 屑が! と心で吐き捨て、正明は優等生をにらむ。


「俺の女になるんだからな。分別はあるべきだ、これは教育だ」

「所詮は、女に手をあげる程度の男・・・・・・やむを得ない。僕は、手加減しないぞ。機嫌だって悪いんだ!」


 正明は腰にホルスターを召喚しようとするが。

 代わりに巻き付けられたベルトが光を放った。


「ん?」


 だが、何も起きない。代わりに優等生が氷の鞭を召喚して正明の頬を掠めさせる。

 斬られた頬から血が流れる。

 この男は、屑だ。引導を渡してやりたいが、今の正明は下手すれば魔法無しでも女の子に負ける位弱い。


「全く、最高だ」


 正明はため息と一緒に優等生を睨みながら呟いた。

顔は大切。

でも、顔がいい奴は大体男女関係がだらしない上にひねくれて、ある意味DT拗らせ諸君よりも理想が高い。

何が言いたい?

力を持つと、人間は大体屑になるってこと

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