3.
早速私は友達を作りに行く事にしました。まあ、家からは出ないのですが。何故かというと、公爵家の令嬢である私は1人で外出する事を許されておらず、大人が横にいたら同年代の子は気後れしてしまうかもしれないと思ったので。
家の中で友達を作る。前世ではできなかったでしょう。ですが、公爵家の令嬢というお金持ちになった今の私は違います。家の中に家族以外の人が沢山いて、何人かは私と歳も近いのです。これは友達が作れそうな予感!
取り敢えず家の中を歩いて回る事にしました。
廊下を歩いていると前方に侍女が2人いるのが見えました。近づいて行くと1人は侍女長で、もう1人は私の部屋をいつも掃除してくれている侍女のリアでした。
「2人で何をしているのですか?」
私は2人に話しかけてみました。すると、2人は驚いたように体を動かし、こちらを見てきました。
「お嬢様!あ、あのですね。私が、お嬢様のお部屋の掃除をしていた時にですね…その、お嬢様が大切にしていた、鏡を、えっと、……………」
リアが話してくれたのですが、声が小さくなっていった為よく聞き取れません。私が聞き辛そうにしていた事に気付いた様で、侍女長が代わりに説明してくれました。
「私からお伝えします。彼女がお嬢様のお部屋を掃除していた際に、お嬢様が大切にしていた鏡を割ってしまったのです。」
私が大切にしていた鏡と言えば、おそらくお父様に貰った卓上の鏡の事でしょう。確かに、あの鏡はお洒落で結構お気に入りでした。
「そうですか…」
「しかし、これは彼女ではなく、ちゃんと指導をしていなかった私の責任です。私はどんな罰でも受けます。ですので、どうか彼女を許してやっては頂けないでしょうか。」
「侍女長!何を仰っているのですか!貴女の責任ではありません!私がもっと周りに注意していればこんな事にはならなかったはずです!全ての責任は私にあります!」
「いいえ。私の責任です。」
「ですから、私が!」
なぜか、私の前で2人の庇い合いが始まりました。
え、私そんなに怒ってませんよ?罰とか与えるつもりもないのですが……取り敢えず止めましょう。
「別に構いませんよ。形あるものはいつか壊れると言いますし、鏡であればまた買えば良いのですから。」
私がそう言うと2人の庇い合いは直ぐに止まりました。でも、その驚いた顔は何ですか?
「ほ、本当によろしいのですか?」
「はい。侍女長にもリアにも特に罰を与えたりはしません。鏡はお父様に新しいものを買って貰いますから。」
その後、侍女長とリアはもう一度謝ってから仕事に戻っていきました。
何故あんなに驚いていたのでしょうか?疑問に思った私は少し考えて、そして、直ぐにその原因に思い至りました。
そういえば、私はとても我が儘な悪役令嬢でした…
私の記憶を思い起こしてみると、確かに以前の私であれば、私の物を壊した人はおそらくクビにしていたでしょう。そう考えてみれば、あの驚いた表情も納得がいきます。
なるほど、そういう事でしたか。だからみんなの私への態度が少々、いやかなり怖がっているかの様だったのですね。そんな私が何も文句を言わず許したら驚くのも当たり前です。原因が分かって良かった……
って、これでは友達を作る以前の問題です!先にみんなの私への態度を変えてもらわないといけません。でも、原因が分かっているのなら対処は簡単!我が儘娘から良い子になれば良いのです!
そうと決まれば善は急げ。良い子を目指して行動開始です!